〜 美女でも野獣 〜
〜 FF7 〜
<21>
第二部
 バレット
 

 

 

 

「……ねぇ、バレット。セフィロスも、弱さをもった普通の人よ」

「ア、アンタ、何言って……」

 耳を疑うようなセリフに二の句が継げなくなる。

「戦闘能力は高いけど、無差別に人を手に掛けるような人間じゃなかった。ただ今は絶望と憎しみが強すぎて、熱に浮かされたように突き動かされているんだよ」

「絶望と……憎しみ……」

「うん、セフィロスだって、生まれたときは赤ちゃんだったんだよ。生まれたときから親がいなくて…… 英雄と呼ばれるようになってからも、寂しい思いは沢山したんじゃないかな」

 エアリス独特の口調で、ゆるやかにそう言われた。

 最初は彼女が何を言っているのか、理解できなかった。

 俺たちは今まさに、その『神羅の英雄』に殺されそうになっているのだから。

「エアリス……アンタ……」

「大丈夫! マリンちゃんは大丈夫だよ。まだ、時間、あるよ。クラウドもヴィンセントも命がけで闘ってる。私たちはできることをしよう」

 彼女はそういうとタッと駆けだした。俺も慌てて後を追う。

 

『セフィロスだって、生まれたときは赤ちゃんだった……』

 か。

 あの男をそんなふうに考えたことなど一度も無かった。

 神羅が世界に誇るトップソルジャーで、反神羅勢力にとっては最大最凶の敵……

 『銀髪鬼』と呼ぶ輩も多かった。

 

「行き止まりだ……!」

「どういうこと!? ここが祭壇のある場所じゃないの?」

 ずっと前を行くシドとティファの声が聞こえた。

 物思いから抜け出し、エアリスと一緒に走る。

「おいおい、落ち着けよ、と。ほら辺りをよく見ろ」

「暗いわね……」

 ティファがつぶやく。

「ここは最深部だからな。とはいってもそれほど深いわけでもないんだぞ、と」

「最深部か。確かに地下一階にくらべりゃ、だいぶ狭まってやがる」

 シドはそういうと、手探りで辺りの燭台に火をつけた。

「……ただの壁かと思ったわ。ここ扉になってる!」

 ティファの背後に、うっそりとした石の扉が浮かび上がった。

「いかにもって雰囲気ね……」

 装飾過多な石壁が、ぼんやりと蝋燭の炎に浮かび上がる。

 よく見れば、どの文様も、波のようなうねりを持って、先の扉を指し示していた。

 

 

 

 

 

 

「ここで間違いないぞ、と」

 赤毛のタークス野郎はそう言うと、困惑したような表情になった。

「おい、速く開けろよ、タークス!」

 思わず急かすが、ヤツはわずかに逡巡した後、低くつぶやいた。

「……地図は預かったが、俺もここは初めてだぞ、と。神殿の最深部に置かれて、これだけ厳重に封印されている祭壇……何かあるとは思わないか?」

 石造りの扉には、一文字にかんぬきが施されているが、特にカギのようなものは見当たらなかった。単に横に渡されたそれを、持ち上げてどかせば扉は開くらしい。

 

「封印された祭壇ねェ……守り役のモンスターくらいは出そうだぜ?」

 シドが茶化すようにつぶやいた。

 タークスも頷く。もっともな意見だ。最深部にありながら、閂ひとつしか掛けていないあたり、強力なモンスターくらい配備されていそうだ。

 

「おい、レノ。その地図には何も書かれていないのかよ」

 訊ねてみるが、ヤツは力なく頭を振った。

「何言ってんのよ、だらしない! さっさと開けて黒マテリアを取り出すわよ! バレット、そっち持って!」

「お、おう!」

 ティファに怒鳴られて、慌ててもう一方側に手を掛ける。

「チッ…ったくホントにルードのヤツの趣味は…。ほら、どけよ、ティファ。こいつは『一応』野郎の役目だぞ、と」

 ため息混じりにそういうと、レノはティファと替わった。

「いくぞ、と」

「よしッ」

 タイミングを合わせて閂を持ち上げる。

 

 するとどうだ。後は扉の方が、ゆっくりと開き始めた。