〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<3>
 
 ヤズー
 

 

 

 

 それから数日。

 ヴィンセントの旅行疲れの心配も無くなった頃…… 次の事件が起きた。

 まったく我々の生活に、『平凡な日常』は似つかわしくないとでもいうのか、次から次へと面倒ごとが発生する。

 それはたったひとつの小箱から始まり、最終的には新聞記事の事件と関わってゆくこととなったのだ。

 

「たっだいま〜! あーあ、疲れた」

 夕方。

 兄さんが仕事を終え、家に戻ってきた。

「ヤズー、兄さん、帰ってきた!」

「お帰り、兄さん! ねぇねぇ、おみやげは?」

 たった一日離れていたのに、カダージュたちは兄さんのところへすっ飛んでいく。俺が言うのも可笑しいけれど、本当の兄弟みたいだ。

「ただいま!ヴィンセント、ヤズー!」

「お帰り、クラウド。お疲れ様……」

「兄さん、お腹空いたでしょう? さきにお風呂入っておいで」

「うん。あ、そうだ。その前にバイクから荷物出しておこう。大事なモンだって言ってたし」

 そういうと兄さんはすぐにバイクにとって返した。

 いつもの配達の仕事とは少し異なる今回の仕事。WROとやらの依頼で危険物の運送をするというのだ。

 コスタ・デル・ソルの西部にはWROの支部がある。そこからリーブ総指揮の駐在するミッドガル本部への配達をよく頼まれている。割のいいオイシイ仕事なのだそうだ。

 ちなみにWROとは、世界再生機構の略称で、一連の事件で荒廃した世界を地道に再建していこうという組織らしい。

 リーブとやらは、いつぞやクラブでヴィンセントの膝頭にかじりつき寝こけていた男だ。そんなヤツが総指揮とは……と思ったのだが、ヴィンセントの話では有能な人物という。

 もっとも、他人への評価があまり彼の言は、いまいちそのまま信用することができないのだけれど。

 セフィロスの話だと、もともと彼は神羅の幹部社員であったらしい。その彼が神羅によって壊滅状態に陥ったこの世界を再建しようと尽力しているのは、端から見ている思念体の俺などにはいささか滑稽に見えるのだった。

 

 

 

 

 

 

「……ミッドガルへ……?」

 ヴィンセントが小さな声で聞き返した。

「うん、そう。仕方ないよ。ウエストエリアにあるWROの支部は実験機関だからね。完成したブツはミッドガルの本部に届けることになってるみたい」

 兄さんがどうでもよさそうに答えた。その間にもおかわり!と皿を突き出す。

「あーあ、払いがいいとはいえ、面倒くさい!」

「そうか……いつ、発つのだ?」

 ヴィンセントが低く訊ねた。セフィロスが何かに感づいたように、ちらりとヴィンセントを見た。

「明日にはもう行くつもりなのか、クラウド?」

「あー、さっさと終えちゃいたいからね〜。荷物も預かってきてるしさ。たぶん朝から…… っと、ダメ!ダメだよ、ヴィンセント!!」

 ハッとしたように慌ててかぶりを振る兄さん。

「ク、クラウド……?」

「一緒に連れてけとか言わないでよね。ミッドガルはまだ治安が良くないし、アンタに万一のことがあったら、後悔するだけじゃすまないから!」

「そ、そんな大げさな……」

「大げさでもなんでも絶対にダメだよ、連れてけない。俺だって荷物届けたらすぐにUターンして帰るつもり!」

 それ以上話は聞かないというように、兄さんにしては先回りをして、きっぱりと言い切った。

 ヴィンセントは釈然としない様子ではあったが、わざわざ食事の席で、それ以上クラウド兄さんに食い下がろうとはしなかった。

 

 ……よかった。

 俺はホッと吐息した。

 兄さんがキツイくらいに断ってくれて。そうでなければ、俺が彼の考えを止めることになっていただろうから。

 

「ねぇ、ところでさァ、今日、そのWROの支部とやらから預かってきたものって何なの? 大事な品だって言ってたじゃない?」

 気分を変えるつもりで、俺はそんなことを質問してみた。もちろん、単純な興味もあったのだ。

「えー、ブツの内容なんてくわしく聞かないよ。聞きたくもないし。でも、あそこ研究所なんだから、きっとなんかの薬じゃない? 爆発物とか、そーゆーものなら、事前に言われるから」

「そ、そう……爆発物って……物騒だね」

「ああ、もちろん、WROが使うんだから破壊工作ってわけじゃないでしょ。土地の開拓で、邪魔な岩盤吹っ飛ばしたりとか、アイシクルエリアでは雪山で人工雪崩起こすのに使ったって言ってたよ」

「ああ、まぁ、そうだろうけど……」

 性格的なものなのだろうけど、常に『最悪の事態』を想定して行動してきた俺は、すぐによくないことを考えてしまう。

 万一、その爆発物が我が家で爆発したら……とか。

 だが、今回の荷物は何かの薬物だというのだ。何に使う物なのかは知らないが、爆発物でなければ気が楽だ。

「大丈夫だよ、ヤズー、今回は爆弾じゃないんだって」

 傍らのカダにまで安心するように言われ、俺はおのれの苦労性を笑った。

「そうだな。じゃあ、明日は気をつけて行ってきてね、兄さん」

「ん。日帰りは無理かも知れないけど、なるべく早く戻るよ」

 兄さんはそんなふうに締めくくった。

 

 そして異変は真夜中に起こったのだった。