〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 ヤズー
 

 

 

 

 

『そうです。しかし、今の神羅の存在は弱者に必要なのですよ! ……いや、すみません、こんな話をしていても仕方がありませんよね』

 激高した己を宥めるためか、電話の向こうの彼は、一言ずつかみしめるようにつぶやいた。

『さっきも言ったとおり、解毒薬はルーファウス神羅社長がお持ちです』

「ああ、そう! だったらいいよ、俺、取りに行く」

『待ってください、クラウドさん。爆発した薬品は試薬なんです。だから解毒剤も未完成で……それに特殊な鉱石を使っているのでほとんど分量がないんです』

「は? だからなに? 貴重品だから、ヴィンセントには譲れないとでも!? ルーファウスがそう言ったの!?」

『…………』

 重苦しい沈黙と、電話の向こう側の物音。

「アンタさ、どういうつもりなんだよ。WROを立ち上げてからも、ヴィンセントはずいぶんアンタに協力してたよね? フツーの神経のヤツなら、解毒剤持って駆けつけるんじゃない?」

『私は今すぐにでもそうしたいですよ!』

 言われっぱなしの状況で、リーブ局長は大声で反論した。

 ……そうだ。

 この人はとてもヴィンセントを大切に思っていたはずだ。俺は酔っていたときの姿しかみていなかったが、だからこそ嘘がないと感じるのだ。

 だからはかばかしくない彼の態度が解せない。兄さんが言うように、いかに貴重な薬品であろうと、すぐにでも握りしめて駆けつけてきそうなのに。

「ねぇ、兄さん。怒らずに聞いて」

 と俺は小声でささやいた。電話の相手は苦しげな無言を通していたから。

「ヤ、ヤズー?」

「ちょっと落ち着いて訳を聞いてごらんよ。何か理由があるんじゃないかな」

「で、でも……」

「あの人、悪い人じゃないと思うんだよ。なんかどうしようもない理由があるんじゃないの?」

「…………」

 そんなやり取りをしていると、リーブさんの方が言葉を続けた。

『……クラウドさん、本当にすみません。まさかこんなことになるとは。もちろん治療薬が私の手元にあるのなら、今すぐにでも持って行きます。ですが、さきほども言ったようにまだ未完成であり、かつ権利は神羅カンパニーが有しています』

「でも……ッ!」

『……そのまま少し待ってもらえますか』

「……え、な、なに?」

『となりに居られるのですぐに代わります』

 リーブ局長はひどく申し訳なさそうにそう言った。

 

 

 

 

 

 

『……ごきげんよう、元ソルジャー・クラウド』

 受話器からの声は、意外でもあり、またやはりと思わせる人物でもあった。

「……ルーファウス?」

『そのとおりだ。……先だっては私の従兄弟の件で世話を掛けたな』

 例の赤ちゃん事件のことである。神羅カンパニーが、徐々に企業としての力を取り戻しつつある今日、その利権を巡ってのお家騒動みたいなものだった。

 幸い、あの子は無事に保護され、現在はルーファウス社長が養育しているはずだ。……もちろん、彼本人が育てているわけでは無かろうが。

「あー、そうだよねー、まったく! こんだけ迷惑掛けてくれてんだから、こっちの非常時にも協力して欲しいんだけど? っつーか、そもそもこの薬ってアンタとWROの共同開発なんでしょ。だったら責任も一緒だよね」

『もちろん、よくわかっている。おまえの身内に迷惑を掛けたことはあやまろう。すまなかった』

 妙にあっさりとルーファウス社長が謝罪した。

「な、なんだよ、わかってんだったら……」

『ソルジャー・クラウド。迷惑ついでにどうしても頼みたいことがある。聞いてはもらえないだろうか』

「……自称・元ソルジャーだろ」

『訂正しよう。……おまえにしか協力を仰げない。頼む』

「悪いけど、アンタらの企業利益のためになんざ、俺は……」

『違う。そうではない』

 ルーファウス社長は即座に否定した。いつの間にか、カダとロッズが部屋に戻っていて、彼らも神妙な面持ちで兄さんと社長とのやり取りを聞いていた。

『そうではない。神羅のためにということではない』

「…………」

『神羅とは関わりがないのだ……とはいわないが、ミッドガル周辺の人々を救うためと考えてもらえればそれでいい。彼らの生活の不安を取り除き、安寧な暮らしを取り戻してやりたいのだ』

「へぇっ? なにそれ。アンタ、いつからボランティアに目覚めたんだよ。なんか変な宗教とかにハマッてんじゃねーの?」

 どうも兄さんはルーファウス神羅のことが嫌いな様だ。

 セフィロスを追っていたときにも邪魔されたらしいし、軍人時代にも何かあったのかもしれない。もっともセフィロスやジェネシス、そして最愛のヴィンセントの人生をねじまげたのが、『神羅カンパニー』という組織なのだと考えれば、その総帥に対してよい感情を抱けないのは当然のことだ。

 到底話など聞くつもりが無いという態度の兄さん。

 だが、ルーファウス神羅は、次の一言で兄さんの顔色を変えさせた。