〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<9>
 
 ヤズー
 

 

 

 

 

「……おまえら、話は聞いての通りだ」

 ヴィンセントを抜かした面々の顔を見ながらセフィロスは言った。

「……異存のあるヤツは?」

「無いよ」

「僕もありませーん」

「俺も。ヤズーや……みんなが行くんなら。ヴィンセントのことも心配だし……」

 セフィロスの問いに、俺、カダージュ、ロッズの順に応える。

「チッ……ったくむかつく。怪我をさせた側なんだから、条件着けるどころじゃないと思うんだけどね!」

 兄さんは桃色の頬をぷくっとふくらませて不平を述べた。

「兄さん。もちろん、俺だって同じ言い分だよ」

「そうだろ?だいたいさァ!」

「でもさ、さっきルーファウス社長と話しててわからなかった?あの人自身も、自分の要求がひどく理不尽だと、理解した上で頼んできてるんだよ」

 俺は辛抱強く兄さんを説得した。もちろん、俺だって本心では、なぜ連中に協力しなければならないのだと不満ではある。だが、今はとにかくヴィンセントへの治療が最優先なのだ。

「そ、そりゃそうだけど……でも……」

「ま、いずれにせよ、もう俺たちの存在を隠す必要はなくなったわけだし、ヴィンセントのためにも薬は早く欲しいし、仕方がないんじゃない?」

「……まぁな。俺だってヴィンセントのためなら、なんでもするし……」

「そうだ、クラウド。特におまえにはどうしても来てもらわねばならないと、ルーファウスが言っていた。覚悟を決めておけ」

「だからわかったってば。……勢揃いで行ってやるんだ。せいぜい豪遊させてもらおうぜ」

 兄さんがそういうと、意思確認作業はすべて終了したのであった。

 

 

 

 

 

 

 そして午後三時。

 手荷物などいらないと言われていたが、さすがに手ぶらで行くのは落ち着かない。それに猫のヴィンちゃんも一緒だから、彼女の好きなオモチャや使い慣れた食器などは持って行ってやりたい。

「おい、ヘリが来たようだぞ」

 この人数を収容できる大型のヘリが、上空でモバリンクしている。ヴィンセントには、よくよく兄さんが噛んで含めた様子だったのだが、実際に出発となるとふたたび不安が頭をもたげたらしい。

 今にも泣き出しそうな面持ちで、子猫を抱きしめながら立ち尽くしている。今のヴィンセントはしゃべれないだけではなく、目もよく見えてはいないようなのだ。もちろん、あの劇薬の煙をモロに浴びたせいで。

「ヴィンセント、大丈夫だよ。すぐに戻ってこられるから」

 俺はそっと彼の肩を抱き、やさしく話しかけた。

 彼は俺に気を使うように、頷き返してきた。

「そう。何も不安に思う必要なんてないんだからね」

『おまえたちのことが心配だ』
 
 ヴィンセントは手にしたメモにそう書き付けた。

「なぁに言ってるのさ。セフィロス始め、俺たちの強さはよく知ってるでしょう、ヴィンセント?」

 心配性の彼に、俺は軽口を叩いた。

『私のせいで、このような状況に陥るとは、謝罪の言葉もみつからない』

 繊細な文字が紙片に躍った。
 ……まったく、この人ってば、何を勘違いしているのだろう?

「ちょっとちょっとォ! ヴィンセントのせいなんてはずがないでしょ。それに俺たちの気持ちって? ちょっと面倒くさいけど、俺なんてわりと楽しんでいるよ」

『ヤズーは大人だから…… 私を思いやってくれている』

「そんなことはないよ。本当にそう感じてるんだから」

『セフィロスもその思念体である君たちも、神羅の非道な実験によって、本来有るべき生をねじ曲げられたはずだ。その彼らの要請に応えるなど……』

 長文を書き始めたと思ったら、それ以上はペンが進まなくなってしまったのか、彼はつらそうに頭を振った。

 ヴィンセントがぎゅっと腕に力を込め、懐のヴィンちゃんが不思議そうに飼い主を見上げた。

「にゅん?」

「ああ、ほら、そんな顔しないで。子猫ちゃんが心配するじゃない」

「…………」

「ああ、確かにね。客観的には敵対関係だよね。でもね、不思議とそう気にならないみたい。俺だけじゃなくて、カダたちも」

「…………」

 声のでないヴィンセントにかまわず先を続ける。ちゃんと聞いてくれているのはよくわかっているから。

「たぶん、今が幸せだからじゃない?自分を取り巻く環境が良好だと、周囲を許せるみたいね」

 そう答えた俺を、ヴィンセントは深紅の瞳でじっと見つめた。

『おまえは強いな』

 彼は一言だけ書き付けた。

「そうだね。そこらの連中よりはね。ま、何はともあれ、俺たちのことは心配ご無用だよ。ルーファウス社長も至極丁寧な応対だったしね」

『そうだな。セフィロスに謝罪していた』

「なんか意味深だったけどね〜?」

 含んだ物言いの俺の言葉が解せなかったのだろう。ヴィンセントは曖昧な頷きを返しただけであった。

 

 ヘリが別荘近くの庭に着陸し、迎えのタークスが降りてくる。

 俺を見て、不躾にも「ゲゲッ!」とうめいた赤毛くんに、音が出るようなウィンクをお見舞いしてやった。