〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<14>
 
 レノ
 

 

……翌朝。

 昨夜と同じテーブルで、心づくしの朝食をとってもらった後、いよいよ作戦開始だ。

 皇太子殿は明日、明後日にも、ミッドガルへ来訪される。お世話するのは、もちろん、神羅直営のホテルでその点については安心だ。

 この場所……本社へのご案内も予定には入っているが、形式的に中を見せるだけで、彼らの居住区間に足を踏み入れることはない。

 その点においても、クラウドとルーファウス社長のとりかえばやが見破られる可能性は少ないだろう。

 

「あーあ、もうすっごい窮屈なんだけど! だいたいさぁ、この服って超ダサイよね? 今時着ますか? こんなスーツ」

「あ〜、クラウド! 動くんじゃないぞ、と」

「そうよ、動かないでちょうだい! ねぇ、この髪って地毛なの? レノ先輩! これ、ムースやミストじゃ無理ですよォ!」

 オレとイリーナはクラウドのヘアスタイルで、さきほどからさんざん苦労させられていた。

 ちなみに、銀髪三兄弟は、朝っぱらから偵察だと行って出かけていった。オレはずいぶんと勤勉な連中だぞ、と、驚いたのだが、クラウドがいうには、どうせショップめぐりしてるに決まっているとのことだ。

 カダージュやロッズはめずらしい食べ物が大好きだし、ヤズーはおしゃれさんなんだと。

 オレは一瞬たりとも、あのロン毛オカマに感心したおのれを後悔した。

 

「あー、悪いけどね。この髪型は俺のトレードマークだから。可愛いってヴィンセントも気に入ってんの。そう簡単にルーファウスヘアにはなんないと思うよ」

 ぶすりとふて腐れて文句を垂れるクラウド。

 側でハラハラと見守っているのはヴィンセントさんだ。彼の部屋は別にあるのだから、無理に一緒に居る必要はないのだが、ひとりぼっちで残していくのはよくないのではないかと感じたのだ。

 ……勝手にオレがだ。

 ちなみに、例のちびっこい黒猫も一緒だ。その子は今、ヴィンセントさんの膝の上で丸くなっている。

 そういや、セフィロスのアホたれは何してやがるんだか。朝食をダラダラと食べた後、勝手に出て行ってしまった。団体行動の銀髪三兄弟とは別にだ。

「もう、痛いってば! 無理やり撫でつけないでよ! 禿げたらどうしてくれんの!?」

「ヴィンセントさん〜、もう、ちょっ……なんとか言ってやってくださいよ〜、騒々しいワガママチョコボ野郎に…… っと、スンマセン、声でないんですよね」

 途中で自分の不躾な発言に気づいて、慌てて撤回した。

 だが、ヴィンセントさんは、そんなオレの気遣いを返って申し訳ないと思ったのか、ゆっくりと首を横に振った。

 そして小さく笑ってくれた。

 本当に不思議な人だ。口がきけるのなら、いろいろと話してみたいことがあるのに。

 

 

 

 

 

 

「レノ先輩〜、とりあえず、こんな感じで」

 うんざりとした口調でイリーナが言った。ほとんど投げ出すように。

「おいおい、カチューシャはまずいぞ、と!」

「わかってますよ。今、ワォーターグリース塗ったんで、ちょっと押さえてるだけです」

 椅子の上には、ルーファウス社長と同じ作りの、真っ白いスーツを身につけ、頭にはピンクのカチューシャをしたクラウドが、むっつりと黙り込んでいた。

 その姿はさすがにおかしくて、滑稽……などと言っては、さすがにクラウドに申し訳ないから口にはできないが……

 ヴィンセントさんも、そう感じたのだろうか。オレと目が合うと、彼はたまらないというように、小さく吹き出した。

「ああッ! ヴィンセントに笑われたッ!」

 クラウドの大声で、ヴィンセントさんが、きょとんとした面持ちで慌てて彼を見た。

「おい、アンタ!イリーナ! 早くコレとってよ! ヴィンセントに笑われちゃったじゃんッ!」

「ダメよ、今、クセがつくように押さえてるんだから!」

「ヤダッたら! ヴィンセントに嫌われたら、どうしてくれんの!? アンタ、なんか責任とってくれんの!?」

「もう、さっきから、ヴィンセント、ヴィンセントってうるさいわねぇ! 一応、女としては、目の前でそうやって年上男にばっか気を使われるの、すっごい不愉快なんだけど!!」

 イリーナの言いぐさに、ヴィンセントさんが、慌てて腰を浮かし掛けた。

 膝の子猫が不平そうに「みゅん!」と鳴く。

「あ、あのッ、別にアンタにむかついてるワケじゃないから!」

 イリーナがヴィンセントさんの顔も見ずにそういう。

「そ、それより……その……あのときは助けてくれてありがとう」

 彼女の物言いに、ヴィンセントさんは申し訳なさそうに頭を振って微笑み返した。

 そうなのだ、セフィロスのリユニオン事件があったとき、ツォンさんとイリーナはあの銀髪連中にさらわれたのだ。

 イリーナもツォンさんも、銀髪三兄弟によい感情を持ってはいない。逆にヴィンセントさんに対しては感謝しているはずだ。

 イリーナはずっと言いたくても言えなかったお礼を口にできて、ほっとしたように見えた。気は強いが根はやさしい普通の娘っ子なのである。

「あのムカツク銀髪どもに恨みはあるけど、今は仕事優先よ。……アタシはタークスなんだから!」

「そうだぞ、と。それでイリーナ、こいつの髪……」

「あ、そ、そうでしたね。ちょっと外してみようかしら」

 イリーナがクラウドのカチューシャを、おそるおそる取り上げる。

 すると……

 ……残念ながら、チョコボヘアは、当初の勢いとまではいかないが、ひょこりと尾っぽを持ち上げたのだった。

「もう、なんなの、アンタの髪ッ!」

「無理だっつーの! 俺の髪、すっごいくせっ毛なんだよ。整髪料でどうにかなるもんじゃないからッ」

「……レノ先輩、これもうどうしようもないっスよ。……ちょっと時間かかるけど、アタシ、ストパの準備してきます。ほら、クラウド立って! 美容室に行くわよ! いろいろ道具がいるんだから!」

「ええッ! ストパッ!? ヤダッ! ヤダよ、俺!」

「ワガママ言わないで! 後で落とせばいいでしょ。ほらッ!」

「おい、ちょっ……! ヴィンセント〜ッ!」

「うるさいッ! さっさと歩きなさい!」

 そういいながら、イリーナは、クラウドの耳をひっつまむと、そのままズルズルと引きずっていった……