〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<16>
 
 レノ
 

 

 

「赤毛。クラウドは?」

 セフィロスが言った。

「ああ、今、髪にストパかけられてるよ。あいつのチョコボ毛はなかなかしぶといようだぞ、と」

「フン、ルーファウスに変身か? あのガキの地が出ると、案外あっさりバレそうだがな」

 人ごとのようにセフィロスが笑った。

「クラウドだって、元神羅の兵士だぞ、と。社長の話を聞いて事の重大さはわかってんだろ」

「だといいがなァ」

「……それよりさァ、アンタ、ツォンさんのこと刺激しないでくれよな」

 無駄だと思ったが、一応そう言ってみた。案の定セフィロスは、ひどく楽しげな笑みを浮かべると、

「何の話だ」

 と返してきた。

 相変わらず人の悪い男だ。ヴィンセントさんがオレたちのやり取りを不安そうに聞いているし、あまり下手な言い方はできない。

「わかってんだろ。あんまし社長をいじめないでくれ。確かにワガママ息子だが、アレでもずいぶん成長したんだぞ、と」

「ああ、まぁ、そのようだな。別に興味はないが」

「アンタにはなくても、社長はずっとアンタのことを考えてたよ。例の実験のことも、あれはプレジデント神羅がしたことで、ルーファウス坊ちゃんは全然知らなかっ……」

「嫌な事を思い出させるな、不快だ」

 オレの言葉を遮り、セフィロスは吐き捨てるようにそう言った。

「悪い。あー、だからさ、まぁ、仲良くしてくれとはいわねーけど、ホラ、多少は気ィ使ってやってくれよ。社長業も結構大変だしな」

「知ったことか。言っておくが、今回の一件は、できるだけ早くコイツの薬を入手するためだ。別にてめェらと馴れ合いたかったわけじゃない」

 セフィロスは無愛想に、ヴィンセントさんに向かってあごをしゃくって見せた。ヴィンセントさんが、つらそうな面持ちでこちらを見る。

 声が出るなら、きっとセフィロスの物言いを止めてくれていたことだろう。それができないのが申し訳ないのか、オレに向かって済まさそうな視線をよこした。

 この人こそ、一番、文句を言っていい立場なのに……

「そいつはわかっているぞ、と。本当にすまねェと思ってるよ。でも、研究所のほうも急がせているし、可能な限り早く調達するつもりだ」

「当然だな。ヴィンセントが元に戻らないとメシに不自由する。どうも、ミッドガルで出されるものは味気なくていかん」

「へいへい。せいぜい厨房に言っておくぞ、と。しっかし、ヴィンセントさんってホント意外性のある人なんスねェ。ツォンさんに、神技のガンマンだって聞いたんスけど……なんか、なかなかイメージが追いつかないッス」

 そういうと彼は真っ白な頬を、ポッと上気させた。

 そして、ふたたび、部屋のドアが開かれたのはちょうどその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ、社長ッ! なんスか、いきなり」

「……おい、レノ。貴様はクビだ。ヴィンセント殿を赤面させるとは何事か! この不埒者が!」

「ええッ!? い、いや、そんな、オレはただフツーに話をしていただけで……」

「彼には、クラウドという、未来有る賢くてすばらしい青年がついているのだ。無遠慮な態度は許されん」

「え……いや……それって……」

 いや……なんか変だぞ、と。

「アホか、すぐに気付け、赤毛。……ほぅ、なかなか上手くバケたな。なるほど、外見だけだと、おまえらふたりはずいぶんと似通っているんだな」

 セフィロスは最初から気づいていたらしく、ルーファウス社長に変身したクラウドをじろじろと眺め見た。

「んだよ、クラウド! アホな真似するなよ、と!」

 恥ずかしさで苛立ち紛れにそう言ったのだが、ヴィンセントさんがひどく可笑しそうに笑っていたので、それはそれでよかったと思った。

 この人は、ミッドガルについてから、一度も楽しげな笑顔を見せてはくれなかったので。

「ふぅん、レノを一瞬でもダマせるんなら、皇太子とかはチョロイのかもね。……あー、あ髪ぺっちゃんこ」

 クラウドは不満そうに、バックになでつけた前髪を引っ張って見せた。仕草は幼いが、いつもの跳ねっかえったチョコボの尾っぽじゃないと、こいつもけっこう大人っぽく見える。

「えへへへ、ヴィンセントど〜お? おかしくない? 俺、パーマはヤダッて言ったんだけど、無理矢理さぁ〜」

 椅子に座ったヴィンセントさんの足下に膝をついて、甘えるように身を乗り出す。

 ヴィンセントさんは身動きとりにくそうにしていたが、苦笑混じりにメモを書いた。

『前の髪型も好ましいが、今の姿も大人っぽくて良いと思う』

「え〜、ホント、俺、大人っぽい〜。てへへへ」

「あのな、クソガキ。別にヴィンセントは、おまえ自身を誉めているんじゃないんだからな。多少変化を加えた今の格好がものめずらしく見えるだけだろ」

 ツケツケとセフィロスが横合いから口を挟んだ。

「うっさい、セフィ! ねぇねぇ、ヴィンセント、ちょっと惚れ直した〜?」

 甘えた面差しは、修習生のころとあまり変わったとは言えない。クラウドは童顔だったが、今もそのままのようだった。

 クラウドはヴィンセントさんとの関係を全く隠すことなく……いや、それどころか、堂々とオレたちに吹聴して回るくらいの勢いなのだが、ヴィンセントさんは、あまり快くは思っていない様子だった。

 控えめなこの人から見ると、クラウドのような行動は、さぞかしはしたなく慎みの欠けた行動に感じられるのだろう。

 おまけにクラウドには申し訳ないが、今こうしてふたりと並べてみても、恋人同士というより、母親と甘ったれた子供という雰囲気である。

 長身とノーブルな容姿のせいだろうか。ヴィンセントさんには、まだ、セフィロスとのほうが釣り合いがとれる気がする。

 まぁ、まったくオレ的にはノーマルカップルのほうを推したいわけなのだが。