〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<17>
 
 レノ
 

 

 

「おい、クラウド。明後日はもうパレードだぞ、と。今日から社長と打ち合わせが始まんだろ」

 オレは未だヴィンセントさんの膝元で、ぐだぐだと甘えていたクラウドに声を掛けた。

「チッ、めんどくせーな」

「アホか、馬車乗って手ェ振ってりゃいいだけだろうが。側についている連中のほうが大変なんだぞ、と」

 夜更かしの子供のような不機嫌さに、オレもついつい口調がきつくなる。

「わかってるよ、せいぜいルーファウスぶりっこで手ェ振ってやるさ」

「言っておくがな。パレードの最中、DGどもは、おまえをルーファウス社長だと認識するんだからな。もちろん、そうでなくては困るんだけどよ」

「だからなんだよ。なんかあったら、とりあえず隣の皇太子を守れってこと? そりゃできるかぎりそうするけどね」

「いや、オレが忠告しているのは、おまえ自身のことだぞ、と」

 的外れな返事をしたクラウドに、肝に刻み込ませるように言ってやった。

「なんだよ」

「もちろん、局長や皇太子殿のこともある。だが、不安材料はそれだけじゃないだろ」

「だからなんだってんだよ」

「よく考えてみろよ、と。皇太子とWROと神羅……連中が一番恨みを持っているは誰に対してだ?」

「そりゃあ、おまえら神羅だろ。ホント、最低だよね、やりかたが」

 ケッとオレに当てつけんばかりに宣うクラウド。

「そうかい。まぁ、DGどもにとっちゃぁそうだよなぁ、クラウド」

「当然だろ。わざわざ考えるまでもないさ」

「つまり、パレードの標的で一番狙われやすいのは、ルーファウス社長だぞ、と」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 ようやく理解したらしく、クラウドは黙り込んだ。

「それは……」

 ヴィンセントさんが心配そうにクラウドの手を取る。

「だ、大丈夫だよ、ヴィンセント。俺、強いもん。アンタのためだし……」

 その手をクラウドが握り返した。

「そうそう、大丈夫大丈夫」

 のんきに応じたオレを、ルーファウス社長に扮したクラウドが、ギロリとにらみつけた。

「……おい、一応、レノ。護衛とかちゃんと着くんだろうな? その……パレードだけじゃなくて、なんだっけ? オペラとか、そういう時にも……?」

「まぁな。だが、防ぎきれるか否かは神のみぞ知るだぞ、と」

「おい、ちょっ……無責任なこと言わないでよ!」

 気色ばむクラウドを無視して、言葉を続けてやった。

「その上、おまえには皇太子殿を守ってもらうわけだからな。……それだけ難しいミッションなんだぞ、と」

 オレの言葉に、セフィロスは退屈そうにあくびをしているだけだが、ヴィンセントさんがひどく不安げな面持ちをした。あまり脅かすのはよくない。

「……護衛って誰が着くの? ちゃんと使えるヤツ?」

「だからまだ打ち合わせ中だぞ、と」

「早く決めなよ、もう明後日じゃん!」

「もちろん、そのつもりだぞ、と。だが、なかなかおまえの家の連中の協力が得られそうもなくてな」

 そういったときに、まるで図ったように、三兄弟が帰ってきた。

 けたたましいノックの後、カダージュのチビを筆頭に、ぞろぞろと入ってくる。

「たっだいま〜! ヴィンセント、お部屋にいなかったからみんなで探しちゃったよぉ」

「あ、兄さんもセフィロスもここに居たんだ」

「そうねぇ、赤毛くんもねェ」

 皆が揃うと心強く感じるのか、ヴィンセントさんが嬉しそうに微笑んだ。

「ねぇねぇ、ヴィンセント! 僕、お菓子、いっぱい買ってきたよ! コスタ・デル・ソルじゃ見たこともないようなチョコとかあったの!」

「こっちじゃ、あんまり露天商とかはなかったよなぁ、カダ」

「だって都会だもん、ロッズ」

「あ、兄さん。ちょっとどいて。ね、ヴィンセント、これどう? 貴方に似合うと思うんだよね。ほらァ、コスタ・デル・ソルって夜いきなり冷え込むじゃない? 帰ってからも、すぐに使えると思うよ。いい色でしょ?」

 次から次へと店開きする連中を横目に、オレはちょっぴりクラウドに同情した。

 ヤツがさんざん自己アピールするには理由があるのだ。ヴィンセントさんはどうやら、この家族の中心に居る人らしい。つまり誰からもこの上なく愛されているということである。

 あの無神経きわまりないセフィロスだとて、物言いは悪くとも、ヴィンセントさんの体調を気にしていた。よくよく考えて見れば、これって凄いことなのだ。

「ちょっと!今、俺たち打ち合わせ中! ヴィンセントにベタベタしないでよ!」

 ギッと銀髪どもをにらみつけて、キツイ物言いをするクラウド。その腕をそっと取り、「よしなさい」というように首を振るヴィンセントさん。

「だって、ヴィンセント、具合悪いのに! だいたい連中は気を遣わなさすぎなんだよ!」

 駄々っ子のように喚くクラウドに、ヴィンセントさんはメモを書いた。

『私のことは何の心配もいらない。それよりクラウドのほうこそ、身の回りには十分注意して欲しい。なにもしてやれないのが心苦しいが、ずっと無事を祈っているから』

 その内容を見てクラウドが涙ぐむ。

 あ〜……、この人、いわゆる天然キャラクターなんだ。

 ようやくオレはそいつを理解した。