〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<23>
 
 ルーファウス・神羅
 

 

 

 

 

「……ツォンは遅いな」

 私は手元の置き時計を眺め、低くつぶやいた。

 いや……長針はそれほど動いていないのだから、やや神経質になっているのかもしれない。

 ヴィンセント・ヴァレンタインは眠ってしまった子猫を隣室のバスケットに戻すと、すぐにこちらの部屋に戻ってきた。多分、ずっと側についている私に気を遣っているのだろう。

「君は気遣いが過ぎる。……迷惑を掛けているのは当方なのだから、楽にしてくれたまえ」

 そんな言葉が自然に口をついた。

 ……思い返してみれば、これまでこんなふうに、他者をねぎらったり気遣ったしたことなどなかった。私も多少なりとも大人になったということか。

 神経質すぎるかも知れないが、このフロアの窓はすべて閉め切ってある。高層階への外部からの直接的な侵入は考えがたいが、爆発物や毒薬などを放り込まれないとも限らない。

 ……もっとも、その『爆発物』やら『毒薬』やらで、目の前の人物を傷つけた私がいうのもおかしな感じだが。

 ツォンもレノも居ないから、リアルタイムの情報が聞けない。さきほどまでは別室で逐一報告を耳にしていたのだ。もちろん、ヴィンセント・ヴァレンタインにも、その内容を見せた。

 

 有り体に言って、現段階において、状況はかなり良い形で移行していると考えてよいだろう。

 

 リバーサイドの戦闘で一部負傷者が出たが、命に別状はなかったし、セフィロスに至っては、廃屋街で数十名のDGソルジャーを始末したらしい。

 ジェネシスとともに、神羅の双璧と言われていた頃の実力はまったく衰えていないようだ。

 神羅カンパニー総帥の子供として、私は物心つく頃には何度か危険な目には遭っていた。

 だが、ソルジャークラス1stの彼らが付いてくれていたおかげで、大事に至ることはなかったのだ。

 今考えれば、幼い私がセフィロスにあこがれたのも、極当然のことで……その圧倒的な強さと自由奔放な価値観は今まで触れたことのない存在であった。

 プレジデント神羅の時代……つまり私の父親が総帥を務めていた時期は、神羅カンパニーの最盛期と呼ばれている。こんな状況になった今現在でさえもそんな物言いをする輩は居るのだ。

 すでに老境にさしかかっていたプレジデントに頭を垂れつつ、私の周囲には蜜に群がるように、権力の亡者どもが近寄ってきた。それはそうだろう。巨大なカンパニーを次代に引き継ぐのは、この私しかいないのだから。

 男も女も……私に声を掛けられれば犬のように尾を振り、媚びを売る連中ばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 その中にあって、セフィロスだけは、私を『つまらないモノ』としか見ていなかった。命がけで守護してくれたのも、ただ単に『仕事だから』。

 彼への憧憬を意識してから、私からの好意は十分すぎるほどに示したと思う。

 だが、彼はお愛想笑い一つ、返してはくれなかった。たぶん、ジェネシスやアンジールら、クラス1stの者たちも、私のことは面倒くさい子供だと感じていたと思う。

 だが、彼らはその気持ちを表さずにいられる程度は、『大人』だった。

 ソルジャークラス1stという階級は、軍事部門の中ではそれなりに高い地位になる。だが、神羅カンパニー全体で考えれば、いわゆる最上層部というわけではない。

 私は好きではなかったが、ハイデッカーやスカーレット、宝条ら、それぞれの部門の総括者が経営陣になる。

 それにもかかわらず、セフィロスは人事の統括ラザードにも、軍事部門の総括ハイデッカーにも、まるきり敬意は示していなかった。

 唯一、セフィロスが他者と区別して見ていたのは、同じクラス1stのジェネシスとアンジールくらいだったのだろうと思う。彼らとは本音で怒鳴り合ったりしていた。

 そう、私は、セフィロスが『本気で対応する彼ら』のことが、うらやましくてならなかった。ツォンに頼んで拳銃の扱い方や剣の使い方を習ったのも、少しでも強くなりたかったからだ。彼らに近づきたかったから…… 

 まったく子供っぽい思考だったと思う。これまで何の訓練も受けてこなかったこの私が、少々手ほどきを受けただけで、セフィロスを感嘆せしめられるほどの実力など着くはずはないのに。

 ……そして、修習生として入社してきた、クラウド・ストライフの登場によって、ずっと抱き続けてきた淡い期待は完全に砕かれたのだ。