〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<33>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

「人の良いヴィンセント・ヴァレンタイン。貴方だとて神羅の人間に、望まぬ実験台にされた方ではありませんか……? 神羅カンパニーへの積年の恨みは、我らと同様だと思いますがね」

 ネロの言葉に、ルーファウスがびくりと背中をふるわせた。

 おそらくルーファウス神羅は、クラウドと同年代だろう。ならば、この私が宝条らの手によって、望まぬ転生を強いられた事実の詳細は知るまい。

「ヴィンセント・ヴァレンタイン…… わ、私は……」

 ルーファウスの青い瞳が私を見た。クラウドによく似た海の色を模した……美しい双眸に、言い得ぬ悲しみと怯えの色が浮かんでいた。

 そう……いくら、神羅カンパニーの総帥だと言われても、彼はまだ二十代の青年なのだ。

 私はルーファウスに向かって、そっと頷きかえした。

『君のことを恨んでなどいない。君は自身を貶める必要はないのだ』

 と、伝えるために。

「やれやれ。相変わらず奇特な御人だ。まぁ、そこが貴方の可愛いところですけどね。……そこの雑魚のことは置いておいて。僕がもっとも必要としているのは、貴方です、ヴィンセント・ヴァレンタイン」

 ネロはさげすむような視線をルーファウスに投げかけると、あらためてこちらに相対した。

 視界はかすむが、私はそれを真っ向から受け止めた。

「……僕と一緒に来てください。ああ、大丈夫。この前のように、いきなりエンシェントマテリアを取りだそうというのではありません」

 ネロは両手を軽く前に差し出すと、押さえるような手振りをして見せた。

「貴方さえ我らの側に居てくれたなら、いくらでもマテリアの成分を分析する時間は得られるのです」

「…………」

「貴方の肉体から取り出すのが不可能なら、そのままの状態で調査すればよいのですよ。……きっと……きっと、何か方法はあるはずです。いえ、見つけ出してみせます。貴方の命と兄さんを救う方法を……必ず!」

 ネロは何かに取り憑かれたように、ひどく熱心にしゃべり続けた。

 冷や汗が背筋を伝わる。声が出ないのがもどかしかったが、今はもし口がきけても、答えを述べることが出来そうにはなかった。

 

 

 

 

 

 

「……ヴィンセント。手荒なことはしたくありません。さぁ、こちらにおいでください」

 綺麗に手入れの行き届いた白い手を、私に向かって差し伸べてくる。もちろん、それを素直に取る気持ちにはなれない。

「どうか怯えないでください。貴方さえおとなしく従ってくだされば、決して傷つけたりはいたしません。……エンシェントマテリアの件も、貴方へのダメージを最小限にするとお約束しましょう」

「…………」

「……逃げようなどとは考えないでください。廊下に居た神羅の者など、だれひとりとして意識などありませんよ。……フン、他愛のない。何の役にも立たない連中ですねェ」

 ネロはさげすむような物言いをすると、まさしく彼らの雇用主であるルーファウスを睨め付けた。

「ヴィンセント。早くなさい。……貴方の大切な人間たちを失いたくないのなら」

「…………ッ!」

 びくんとおのれの背筋が震えるのを感じた。家族のことを引き合いに出されると……もはや条件反射になってしまっている。

 いや……大丈夫だ。

 大丈夫なはずなのだ。クラウドはルーファウス神羅として、ヤズー始め、護衛官に守られているはずだ。カダージュとロッズは二人一緒に行動している。彼らふたりを、同時に相手にできる輩などそうはいないはずだ。ましてやツヴィエートでないDGソルジャーなど、数を頼みに襲われない限り……

 ……セフィロス?

 バカバカしい。彼は絶対に大丈夫だ。出かけに私に言ってくれたではないか。

「おまえを守っているのは誰だと思っている、ヴィンセント?」

 と。

 彼は身を案じられる側の男ではない。常に何者かを守って戦えるだけの、余裕ある戦士なのだ。

 だいたい、いったい誰がセフィロスと対等に渡り合える?

 ツヴィエートは、もはやネロとヴァイスだけ…… 頼みのヴァイスは戦えるような状態でないのは知っているし、他のツヴィエートはもはやこの世にはいない。

 となれば、DGソルジャーらの中で、最強の相手はネロだ。

 そのネロは今、私の目の前に居る。

 だからクラウドたちは安全なはず……