〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<4>
 
 セフィロス
 

 

 



  

『へっへっへっ、どうもどうも、この人のおうちの人〜?』

『き、君、やめたまえ!』

『アンタは黙ってなって。このままどっかに連れて行かれちゃってもいいのかな〜?』

『あー、電話の人ォ?聞こえてるぅ?』

 オレとイロケムシは目線を合わせた。

 電話の相手がどういうヤツラなのか想像がついたからだ。

 ときたま、くそつまらないローカル紙の一面を飾るような……そんなくだらん暴力沙汰を起こす、ドブネズミども。

 コスタ・デル・ソルは避暑地であると同時に、港町でもあるのだ。

 今日、ヤツが行くと言っていたらしいノースエリアはまさしくその港町であり、たぶんに漏れずそこには、怪しげな品を取引するブラックマーケットや、薄汚れた麻薬常習者がいるのだ。船乗り崩れの荒くれ者が多いのも特徴だ。

 ヴィンセントのバカ野郎め、どうして、ひとりでそんな厄介な場所に……!

 

「聞こえているよ。間違いなく、俺は彼の家族の者だよ。その人に手を出したらただじゃおかない」

 聞いたこともないようなヤズーのキツイ物言い。さもありなんといったところだろう。

『ひゅーひゅ〜、コワイですね〜!』

『コワーイ!』

『俺たちお金が欲しいだけなんですゥ!!』

『でも、このお兄さん、お金持ってないってェ〜。もう、カードも持ってないんだからよォ。今時なに? 石器人かよ〜?』

「黙れ。ヴィンセントを口汚く罵るのは許さない」

 イロケムシの目が据わった。

 きっとヤズーの野郎の声は向こうに聞こえているのだろう。

 時折、ヴィンセントの諫めるようなか細い声と、下卑た男どもの囃子声が聞こえる。まったくモテモテな野郎だ。いったい何人に囲まれているというのか。

『そんでね、お金持ってきてくれるぅ? お兄さんかなぁ、弟さんかなぁ?』

『あ、もちろん、ケーサツとか無駄だから。ここノースエリアの「あそこ」だからね』

『この人に傷つけられたくなかったら早くしたほうがいいよ〜ん』

『ヒッヒッヒッ!』

 ……言いたい放題だな。クズどもが。

 だが、まだクラウドがこの場に居なくて良かった。あいつがいたら大騒ぎになっているところだろう。

 だが、ヴィンセントはもとタークスの凄腕ガンマンなのだ。さすがに今は銃を携帯していないのかもしれないが、体技だってそこそこ仕込まれているだろう。くだらん無法者の5、6人くらい……いや、もっと多かったとしても対処できぬわけではなかろうに。

 まぁ、おやさしいアイツのことだ。

 きっと、民間人相手に、本気で手をあげるわけにはいかないだの何だのという縛りを自らに架しているのかもしれない。

 

 

 

 

「わかったよ。お金ならあるから。場所は「あそこ」だよね」

『へぇ、ものわかりのいい兄さんだね。そんじゃ、待ってるからね』

「はした金で何事もなく済むのならそれでかまわない。だが、ヴィンセントには指一本触れるなよ。その人に何かしたら、貴様ら全員その場所で死ぬことになる」

『こっわ〜い』

『だーかーらー、金さえもらえりゃそれでいいんだよ。早くしやがれ』

『そーだね、早くしてくんないと。真夜中になったら、俺らなんかよりよっぽどヤベー連中がぞろぞろ来るからね、ここ』

「もう一度言う。ヴィンセントには何もするな。そうすればすぐに……」

「おい、電話の向こうのヤツら!」

 オレはイロケムシの脇から顔を出し、大きめの声を上げて呼びかけた。

「ちょっ? セフィロス?」

「フフン! 今からオレ様が届けに行ってくれる。首を洗って待ってろよ!」

 そう怒鳴りつけると、遠くで怯えたような悲鳴が聞こえた。

 これはヴィンセント本人のものだろう。

『はぁぁ? エラそうな兄ちゃんだね。オタクの美青年はこっちの手の内にあるんだからね〜』

「いいからっ! とにかくそこで待っていろ!」

 そういうと、ヤズーはさっさと電話を切ってしまった。

「あ〜ったま来た〜ッ! 不愉快な!」

「めずらしくも本気声出してたな」

「ヤラシイ言い方しないでよ。相手はヴィンセントなんだからね。もう、ホントにあの人は〜! あんなチンピラ連中射殺しちゃえばいいじゃない」

「拳銃持ってないんだろ」

「護身用に持っておけばいいんだよ! あんなクズどもさっさと始末すればいいのに!」

 これがヤズーの価値観である。

 ……オレと同じだ。やはり同類であると感じる。ヴィンセントの脳天気野郎が奇特なのだと言われればそのとおりなのだが。

「じゃ、俺、迎えに行ってくるから! セフィロス、あとよろしくね」

 『あそこ』というのは、ダウンタウンの二丁目……ヘルスキッチンのことだろう。

 あのあたりはとりわけガラの悪い場所だ。素人がひとりでフラフラ行くような場所ではないのに。

 ひとしきり物騒なセリフを吐き出すと、イロケムシはすぐさまチェストから車のキーを取り出した。

「何言ってやがる。オレ様の楽しみを横から奪うな」

「……セフィロス?」

「20分足らずで戻ってきてやる。クラウドへの言い訳でも考えてろ」

「……本当にあなたが行く気?」

「当然だろ。おまえは、戻ってくるガキどもの世話とメシの仕度があるんだろ」

「そ、そりゃそうだけど。……あ〜、じゃあ、よろしくね。あ、やっぱ言っておくけど殺しちゃだめだよ。2/3殺しくらいでよろしくね。警察沙汰になると、兄さんが困るだろうから」

 くどくどしく注意しつつ、奴はオレにキーを渡した。てめーは平気で「射殺すればいい」などと言っていたくせに。

 オレも害虫は駆除するに限ると思うが、こんなくだらんことで田舎警察の手を煩わせるのもバカバカしい。

 

「行ってくる。クラウドのガキには上手く言っておいてくれ」

 そうはそういうと、さっさと車に乗り込んだ。