〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<5>
 
 セフィロス
 

 

 



  

「ったく、アホヴィンセントが。手間掛けてくれる」

 などと文句を言いつつ、ハンドルを切る。ノースエリアまで車を飛ばせば十分足らずだ。だが、この時刻は多少道が混む。

 やはりコスタ・デル・ソルの経済的の中心地は、四つのエリアの中でもノースエリアになるのだ。

 ウチのあるイーストエリアは、湾岸沿いの別荘地で、シーズン中はにぎわうが、普段は静かすぎるほど静かな田舎町だ。商店街や大型店舗などもあるにはあるが、どこもかしこもローカルで、よく言えばまぁ、穏やかな住みやすい場所と言えるのだろう。

 そして半砂漠地域のサウスエリア。ここは一番面積は広いが、人口はそれに反して少なめだ。やや内陸に入っているので、観光地化もしておらず、土着の人間達が工場などを起こして頑張っている。島国ゆえの恩恵とも言えようが、それでも十分生活するに足りうる収入を得ることができるのだろう。

 ウエストエリアは、高原山岳地域だ。このあたりは気候が他の地域と異なり、寒暖の差のある温暖湿潤気候になる。オレはほとんど足を運んだことがないゆえくわしくはないが、WROとやらの支部がここの市街地にあるのだとクラウドが言っていた。

 

 ……よし、この道を右だ。

 オレは大通りから、脇道に逸れた。

 ノースエリアの怖いところは、経済の中心地にも関わらず、区画整備が未然であるということだ。ヴィンセントのような素人が、気付かない間に、ダウンタウンなんぞに迷い込んでしまう。それゆえ、小さないざこざや、時には紙面をにぎわせるような暴力事件、麻薬がらみの殺傷沙汰なども起こりやすい。

 

 オレは目的地よりやや手前で車を止めた。

 警察がやってくる心配はなかろうが、万一ということもある。害虫駆除にきただけなのだ。いちいち、事情徴収などに付き合う気持ちはまるきりなかった。

 奥のごちゃごちゃとした細道に車を入れては、とんずらするときに厄介だ。

 ここからなら、2、3分で指定の場所へ着けるだろう。

 ヴィンセントはタークスに居たほどの男なのだ。ド素人相手に心配しているわけではなかったが……それでもオレは、早足で目的地へ向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

「き、君たち。悪いことは言わないから…… 早く私を解放して帰宅したまえ。今ならまだ間に合う!」

「さっきから何ソワソワしてんの、おにーさん。迎え待ってんじゃないのぉ?」

「おウチの人から約束のお金もらったら退散しますから〜」

「俺ら、平和主義者だからね、ホント」

「い、いいから聞きてくれ。も、もし本当にセフィ……電話の人がやってきたら、君ら全員ただではすまない…… 金なぞより、身体の方が大事だろう?大けがをすることになったらどうするのだ?」

「ちょっとちょっとォ、アンタね、何言ってんの? 俺ら何人いると思ってんの? 見張りくんも入れたら二十人近く居るんですよ? アンタ」

「一応、コレ、約束どおり、おにーさんに指一本触れていないわけですからねー。殴られるいわれなんてありませんよ、コレ」

「ギャッハッハッ!」

「キッヒッヒッ!」

「おいぃぃぃ! まだ来ねーのか? もうちょっ……退屈なんですけどぉ! 手出ししたくなるんですけどぉ!」

「お兄さん美人だしィ〜〜〜」

「君たち!話を聞きたまえ! これからここに来る人は……その……尋常な強さではないんだ。もう……常人の域を超えている屈強な人で……君らが束になってもかなうはずがない。ふ、普段はとてもやさしい人なのだが……本気で怒らせてしまったら…… 頼むから……!」

 ……やれやれ……アホか、ヴィンセント。

 あんなドブネズミども相手にそんなクソつまらん説得が通じるか。見たところ人相は極悪だが、十代のガキどもが中心だ。今時のクソガキなんざ、大人の言うことなど屁くらいにしか思わん。

「お兄さ〜ん、必死なお顔もお綺麗でしゅね〜」

「なんかねー。年齢不詳ってカンジだよね? っつーか、めっずらしい目の色〜。どこの血が混じってんだろ?」

「アンタ、ノースエリアの玄人さん……ってことはないよね。こんな間抜けたことになってんだから。ちぇ〜、アンタが店に居たら絶対買いに行くのに〜」

「ギャーッハッハッ!」

「んだよ、おめー、そっちのほうかよ〜」

「こんだけ綺麗なら男でもいいじゃん」

「まーな、そりゃそーだな」

「あーあー、つまんね。こんなことなら、やることやってからおデンワしてもよかったかもねー」

「二十人居るんだぜ〜。こんな細っこいの死んじまうって」

「ヒャッハッハッ〜! 萌え〜ッ!!」

「き、き、き、君たち! まだ年若いのだろう!? 徒党を組んでこんなことを……! その年から犯罪に手を染めてどうするのだ!? 大けがでもして……二度と動けぬ身体になったら…… いや、万一命を落とすことになったら、どう……」

 もう聞いておれん。

 オレはヴィンセントの名演説を無視し、ツカツカと歩み寄ると、ヴィンセントと連中の間に、素手のこぶしをたたき込んだ。

  

 グワッシャアァァァァン!!!

 

 コンクリートの壁が砕け、ガラガラと地面に崩れ落ちた。

 拳が石を砕き、破片が散ったのだ。

 粉塵にツラをしかめるが、ヴィンセントと目が合った時点でうっすらと笑ってやった。

「ひっ……セ、セ、セ、セ、セ……」

 アホか。

 おまえがビビるな。

「よぉ、待たせたな、ヴィンセント。それから、てめェらもな」

 ドブネズミどもは一様に息を飲んで動かない。

 だいたいこういうクズどもは徒党を組まねば何もできない輩なのだ。本当に相手が強いとわかっても、先陣切って掛かってくる勇気のある人間は、こんな風に群れたりはしないのだ。