〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<45>
 
 ヤズー
 

 

 

 

 

 

 

 ここからの話は、一番客観的な立場に居る俺が綴ろうと思う。

 セフィロスはいわば当事者そのものであるし、兄さんに置いては囚われの身のヴィンセントを思い、精神の均衡を保つことさえ、難儀であったろうから。

 

 支配人さんの地図を、頭にたたき込んだ後、セフィロスの指示で、俺たちは行動を開始した。

 まず、突入は泥だらけ三人組だ。

 理由は年長だから。

 カダージュがふくれていたけど、彼には脱出の際、重要な役割を果たしてもらうらしい。活路を切り開き、車を回すこと。

 セフィロスはそんな言い方をしたけど、やはり屋敷内に侵入するのは相当の危険が伴うからだと思う。ネロもそうだけど、オメガの媒体になったヴァイスが居る。

 本格的なバトルになったら、セフィロス自身だとて、今回ばかりは絶対の自信を持って臨むのは難しい。なんせ、敵の手中にはヴィンセントがいるのだから。

 

 セフィロス……本当に強情で可愛げのない人だ。

 本当はヴィンセントのことが心配で仕方がないくせに、いつも以上にマイペースを揺るがさない。

 髪についた泥を鬱陶しげに払ってみせたり、兄さんをからかったりして軽口を飛ばしている。

 だが、油断しているようにみえないのは、やはり歴戦の剣士であるからだろうか。

 

「行くぞ、ぬかるなよ!」

「アイアイサー。カダ、あと頼むな」

「はやくヴィンセントのところへ行かなくちゃ!」

「任せて。……でも、みんな気をつけてね」

 おのおの言葉を交わし、俺たちは屋敷へ向かった。

 そう……重苦しい表門ではなく、拉致された彼が連れ込まれたという、蔦の絡まった裏門へ……

 

 

 

 

 

 

 支配人さんの地図は、驚くほどに正確であった。

 裏門から続く渡り廊下に、彼の記した監禁部屋……そして、そこから延びる広い廊下の突き当たりがメインルームだろう。

 広い屋敷だから他にもたくさん部屋はあろうが、彼がいうには、ほとんどの部屋には人が居らず、二階のネロの部屋の周囲にはDGの手下どもの待機室がいくつか……一階には食堂と、メインPCルーム……そして、自分の監禁されていた部屋があるという。

 

(……おそらくメインPCルームだな)

 セフィロスが低くつぶやいた。

(どうして? 支配人さんの監禁部屋を使っているかもよ?)

 兄さんが聞き返す。

(ここまで、DGどもにも遭遇しなかっただろう。……予想したより、屋敷の守りに戦力を割いていない)

(俺たちの洞窟のほうで、がんばっちゃったんじゃない? 兄さん)

(う、うん……確かに話し声とかも聞こえないし)

(だったら、一番都合がいいのはメインルームだろう。ヤツの話ではネロが完全なセキュリティを施していると自慢していたらしいからな)

 『ヤツ』というのは、支配人さんのことだ。

 まったく大した人だと思う。

 虫も殺さぬ顔をしているのに…… こんな修羅場にあって、こちらが欲しい情報をちゃんと聞きとどめているような人なのだから。

 

 俺たちはメインルームにつながる廊下の角のところで立ち止まった。

 兄さんが胸を押さえて呼吸を整えている。

 俺もつられるように、ゆっくりと息を吐き出した。

 セフィロスが俺たちを見て、軽く顎をしゃくってみせた。それにふたりで頷き返す。

 

 兄さんが、背中のホルダーから大剣を手にした。

 俺もベルベッドナイトメアの銃創を確認する。

 

 走り出したセフィロスの後に続き、兄さん、そして俺の順に、メインルームに飛び込むのだ。

 

 ……ヴィンセント、どうか無事でいて……!

 

 兄さんのために……

 そして、セフィロスのためにも……!!

 

 もちろん、俺だって、何を置いてもあなたを救いたいと……そう思っているのだから!