〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<14>
 
 ティーダ
 

 

 

「あー、ムリムリ! そこの美青年は、まともに話なんざ聞いちゃくれねーよ、クソガキ!」

「ゲッ、クソオヤジ!」

 上半身裸で、腰布みたいなぼろ切れ一枚を纏った、粗忽で粗野な男……

 認めたくはないが、こいつこそオレのオヤジ……ジェクトなのだ。セフィロスの造形がノーブルなせいか、よけいに粗暴な輩に見える。

「なんでテメーがここにいんだよ! 消えろよ! クソオヤジ!」

「うっせぇな、ギャースカギャースカ! おう、相変わらず泣き虫してんのか?」

「うるせェ! こんな世界でまでアンタと会うとはな! 今、セフィロスと大事な話してんだよ! 邪魔すんな!」

 セフィロスを置き去りに、オレは久々に会うクソオヤジを怒鳴りつけた。

「……ああ、そうか……おまえはこの男の息子か……」

 独り言のようにつぶやくセフィロス。

「誰かに似ていると感じたが…… なるほどな」

「やめてくれよ! どーでもいいんだよ、そんなこと! さっさとあっち行けよオッサン!」

「おうおう、ずいぶんじゃねーか。よぉ、美青年。うちのガキがなんかしたかい?」

 なれなれしくセフィロスにしな垂れかかって軽口を叩くオヤジ……

 あー、クソ、どうしてオレがこんなヤツの血を引いているんだろう。

「……別に……私があやまって連れてきてしまっただけだ」

 オヤジの顔も見ずに答えるセフィロス。

「この子供……誰かに似ているかと思えば…… おまえに似ていたのだな」

「おう! こいつはティーダ。俺様の息子よ!とはいっても、まだまだヒヨッコだがな!」

「よけいなこと言ってんじゃねーよ、クソオヤジ!」

 ヒヨッコよばわりが頭に来て、即座に言い返してやった。

 セフィロスの前で、ガキみたいにキレるのはイヤだったんだけど。

「……おまえと話すことはもうない。さっさと帰れ」

 セフィロスが最後通告のようにつぶやいた。オヤジがしゃしゃり出てきたおかげで、話半ばで。

「いや、だからさ、ちょっと待ってってば!」

「……ジェクト。その子供に帰り道を教えてやれ。私は疲れた」

「ハイハイ、王子様〜。オラ、ガキ。さっさと帰れ。こっちだ!」

「オヤジ! オレ、今大事な話してんだよ! オレの仲間のことで…… あの人に聞いてもらわなくちゃならないことがあるんだ!」

 オレの腕を遠慮無く引っ張り上げるクソオヤジに逆らった。クソ、相変わらずの馬鹿力だ。

 だが、野郎はヘンとばかりに鼻息を吹き出すと、

「オメーのダチだけじゃなく、あのセフィロス坊ちゃんにも理由があんだろ。仕方ねーじゃねーか」

「でも……ッ!」

「男同士なんだからよ。拳で勝負させろよ。オメーんとこのダチにも伝えとけや」

「くそッ!」

 オレはチッとばかりに舌打ちした。

 セフィロスはきびすを返して、さっさと行ってしまったから。クソオヤジとクラウドのことを話しても致し方がない。

 

 

 

 

 

 

「なんだよ、そんなに大事なオトモダチの話なんかよ?」

「うるせーな。ダチは誰でも大事だろ! クラウドはあの人と闘いたくないんだよ! それにはちゃんと理由がある」

 詳細をジェクトにしゃべるつもりはなかったけど、そんなふうに言い放ってやった。

「だが、セフィロス坊ちゃんはそうでもなさそうだぜ。仕方なくね? 片一方がやる気あるんなら」

「だから、その理由を説明してやろうと……」

「赤の他人のオメーに言われて素直に『ハイ、そうですか』と聞けるかよ。バカじゃねーの?」

 相変わらず口の悪いクソオヤジだ。

 だが、こいつの言っていることはある意味正しくて……オレだって敵側の人間に説得されて素直に頷けるタイプではない。

「ほら、わかったら、とっとと帰れ。あの兄ちゃん怒らせると怖ェぞ〜」

 ジェクトは、身振り手振りつきでオレを脅かした。

 ……って、オヤジ、アンタ、セフィロスを怒らせたコトあんのかよ!?いったい何したってんだ!!

「ま、アレだ。俺様もオメーとの決着は忘れてねーぜ」

「…………!!」

「別に殺り合いたいってワケじゃねーだろ。オメーも」

 ガリガリと頭を掻いてオヤジが言う。

「まぁな。でも負かすぜ。……アンタに認めさせてやる……!」

「ケケケ! できるもんならな。……まぁ、そういう決着の付け方もあるってもんだ。おまえのダチに言っておけ」

「…………!」

 オヤジ……

「じゃーな、気ィつけて帰れや。ジェクトさんちのお坊ちゃんよォ」

 そういうと、ヤツは遠慮無くオレをおっぽり出した。

 振り返った瞬間には、もうヤツの姿も、当然セフィロスの姿もなくなっていた。

 

 ……殺り合うだけが決着の付け方ではない……

 スコールやフリオニールは、相手の存在をその手で抹殺して、初めて勝利を勝ち取れる相手なのだろう。

 だが、オレやセシルはそうじゃない。

 別の方法での決着の付け方がある。

 ……では、クラウドは……?

 クラウドとセフィロスの納得いく勝負の着けようとは……?

 

 オレはその場から走り出した。

 混沌の気が満ちた地を蹴り、仲間たちの待っている世界へ向かって。