〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<33>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

「ハイ、これより部屋割りを決めま〜す! えー、いつ敵がこの場所を嗅ぎ付けるとも限らない、このような非常時に際しまして、皆の安全を図るため、脱出経路等も確認してから寝るように!」

 最年長ということなのだろうか。

 なんやかやとリーダー格に祭り上げられたラグナである。父親だと名乗られたことは不快であったが、彼には人の緊張を和らげるムードがあり、ここ数日、イミテーション相手に戦い続けてきた我らには、よい人選だったのかもしれない。

 俺はともかく、クラウドやティーダたちは、すぐにラグナに馴染んだ。

 

 結局、この日はほとんど進むことが出来ずに、少し離れた場所で一夜を明かすことになった。

 セフィロスの教えてくれた、カオスの者らの集いの場所までは、まだずいぶんと距離がある。徘徊しているイミテーションも放置できず、そいつらを倒しながら目的地へ進むとなると、容易なことではないのだ。

 招かざる闖入者があったことから、この日は出立の時刻が遅れた。

 夜はカオスの力が強くなる。このあたりは、まだ中立の領域ではあるが、油断はできないと判断したのだ。

 周囲の見渡せる無人の屋敷を見つけることができたので、今夜はここで身を休めることになった。

 無人の街というのは、未だに慣れないが、この世界で文句を言っても始まらない。

 

「……疲れた」

 テンションの上がっているラグナとは対照的に、ぐったりとした様子のクラウドだ。

 ラグナとはすぐに打ち解けた彼であったが、もともとストレスに弱いタイプなのである。セフィロスのことや、今朝現れたティファとの一悶着で、かなり疲労したのだろう。おまけに、記憶の問題がある。

 同じ世界から召喚されたクラウド、ティファ、そしてセフィロス。

 それにも関わらず、三人の記憶に齟齬が生まれているというのは、俺たちがずっと目を背けていた、抜本的な問題を皆の前に突きつけたのであった。

 

『そもそも、この戦いとは一体何のか』

 

「クラウド……クラウド?」

「ん……? なに、スコール」

 クラウドが力なく呼びかけに応えた。

「大丈夫か? そういえば、食欲がないようだったが……」

「うん……平気」

 ソファのとなりに座った身体が、こちらに傾いでくる。クラウドよりも、俺の方が体重があるからだ。

 肩が触れると、その部分がほんのりと暖かかった。

 

 

 

 

 

 

「え〜、ティファちゃんとライトくんは、女の子ふたりなので、同室ね! はい、決まりー!」

 ラグナが大声を上げる。

「でも、女子ふたりって危なくないッスか? この屋敷広いし、なんだったら、オレも一緒に……」

「そのほうが、よけいに危ないんだよ!」

 不埒な発言をするティーダを、後ろから叩くジタンだ。このふたりは、見ていて飽きない。なかなか良いコンビである。

 クラウドも、そう感じたのであろう。

 小さく、フッと笑った。

「ティーダくん〜、騎士道精神は見上げたものだが、万一のときには、このワタクシ、ラグナが、女性陣のお部屋をお守りしますので心配はいりません〜!」

 冗談なのか本気なのか、ラグナが胸を張って言ってのける。

「フン、くだらん。では我らは先に休ませてもらう。行こう、ティファ」

 にこりともせずにさっさと立ち上がるのは……ライトニングという女性だ。彼女はほとんど無駄口をきかない。

 挨拶程度の会話を交わしたとき、軍人だと言っていた。

 さもあろうと頷き返したところに、ラグナが、『俺も元軍人〜』と乱入してきて、めずらしい彼女の驚き顔を見ることになった。

 

「クラウド……元気ないけど、大丈夫? 夕食、口に合わなかった?」

 立ち去る前に、クラウドの様子を伺うティファだ。

 こうしたしぐさを見るだけでも、彼女がクラウドに対して、ただの幼なじみ以上の感情を抱いているとわかってしまう。

「ううん、おいしかったよ。そっか……今日はティファも夕食手伝ってくれたんだね」

「もちろんだよ。……私……ごめんね、何の事情もしらないで。手、まだ痛い?」

 セフィロスに向けて放った正拳を、クラウドがあやまって受け止めたのだ。細身の彼女ではあるが、格闘技の専門家でもある。その拳は相当重かったのであろう。

 骨に異常はなかったが、筋を痛めたらしく、冷湿布に包帯をしている。

「謝るなよ、ティファ。ちゃんと手当もしてるし、平気だってば」

「うん…… でも……私のせいで……」

「もういいから。ほら、ライトニングが待ってる。早く行けよ」

 クラウドのぞんざいな物言いをたしなめようと思ったが、それも憚られるほど疲労して見えたのだ。

「……じゃ、おやすみなさい、クラウド。あ、あの、スコール」

 立ち去り際に声を掛けられて、目線を上げる。

「……クラウドのこと、お願い」

 と、言われ、すぐに頷き返した。

「当然だ。彼は仲間だ」

 俺はまっとうな返事をしたつもりだったが、ティファは少し困惑したように笑った。

 あらためて『おやすみなさい』というと、今度こそライトニングの後を追って、居間を出て行った。