〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<34>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

「ハイ、気になる女性陣が退席いたしましたので、続きまして、野郎共の部屋割りを行います〜!ま、部屋の数はいっぱいあるんでね。どういう分け方でもいいんだけど、あまりバラバラになるのはよくないから……」

 ラグナの言葉が終わる前に、俺はさっさと立ち上がった。

「すまないが、クラウドが大分疲れている。俺が面倒見るから、先に引き取らせてもらう。それからセフィロス。アンタに道案内をしてもらうと決めたのは俺だ。よって、俺にはアンタの身柄を守る責任がある。同行してもらいたい」

「……え〜、あの、スイマセン、スコールくん〜。七人いるうちの三人を連れてっちゃったら、半分しか残らないよね。部屋割りの意味がないんですけど〜! 俺がわざわざ作ったあみだくじはどうなんの?」

 ラグナが、口を尖らせて、ぶーぶーと異論を唱えるが、そんなことは無視だ。

「パパと一緒の部屋で寝たくないの!?」

 ……だが、このセリフは無視できない。

「おいッ、ラグナ! 貴様が俺の父親だという話は認めていない! 勝手なことを言うな!」

「冷たい息子だな〜! おまえ、ホント、可愛くない!」

「とにかく、そういう事情だ。さ、行くぞ、クラウド! セフィロスもだ」

 セフィロスはやれやれといった動作で、軽く手を広げて見せた。そんな気障なしぐさもよく似合っている。

「……スコール、ラグナさん、いい人だよ? そんなに冷たい言い方しなくても……」

 となりを歩きながらクラウドがいう。

 彼も以前軍に所属していたと聞いたが、それにしては人が好すぎるように見える。

「おまえのいう『いい人』と、俺の父親がどうのというのは、別問題だ。そもそも俺は両親を知らない」

「あ……、ご、ごめん。俺……」

「そう言う意味ではない。俺にとってはどうでもいいことだ。さ、ここだ。一番広い部屋を選んだから、手をぶつける心配も少ないだろう」

「うん…… その、ごめんね」

「別に親の顔をしらないからといって、おのれを不幸だとは思っていない」

 困惑したままのクラウドにそう告げた。彼も、幼い頃に父親を亡くし、その後、母親も失っている。

 だが、両親の顔どころか、『どこのだれかも知らない』俺に気を遣っているのだろう。

 人によっては、そういった素性を悲しんだり、不幸を感じる者もいるのだろうが、その点については俺は鈍感なのかも知れない。

「俺は俺自身だ。何も変わらない。人はその者の行いによって評価される。それゆえ、親が何者であろうと関係ない」

「……おまえは強いな、スコール・レオンハート」

 クラウドのものではない静かな声が、横から割り込んできて、俺は驚いてセフィロスを見た。

 ガウンを纏い、ベッドに座りこんだ彼は、平静を装ってはいたが、クラウドと同じくらい疲労しているように見て取れた。

 

 

 

 

 

 

「……セフィロス……」

「どうした? 言葉通りだ。おまえは強いのだと……そう認める」

 フッと苦しげな笑みを浮かべ、彼は繰り返した。

「……そんなふうに言われると、居心地が悪い。正直……アンタとは剣を交えても、現段階では、勝てる自信がない」

「腕っ節の話ではないな。……二十年も、生きていないくせに……そんな言葉を導き出せるとは……」

 そこまで彼に言われて、ハッと思い出す。

 セフィロスが人体実験で生まれ出でた生命体であるということ。父の名も知らず、母の顔さえ見たことがないのだと聞かされたのは、つい先だってのことではないか。

「……す、すまん。また無神経なことを口にしてしまった。あくまでも、俺はそう考えているというだけの話だ。正直、親のことなど、あまり考えたことがなくてな。そんな繊細な神経を持ち合わせていないんだ」

「なぜ、謝る? ……おまえは面白いな」

 ふぅと長い息を吐き出すと、セフィロスは力なく微笑んだ。

 先ほどのような苦笑ではなく、臈長けたふうの邪気のない笑みであった。それは出逢ってから、一度も見たことのない、笑い方であったのだ。

 クラウドもそう感じたのだろう。俺たちのやりとりに口を挟めない様子で、ただベッドに腰を下ろしたまま、セフィロスを見つめていた。

 

「セフィロス、アンタも疲れている。今朝はあんなことがあったし、昨夜は俺がしつこく付きまとってしまった。こんな展開になるのなら、自重すべきだった」

「……また、謝罪か。よけいなことだ。カオスの手勢であった私を、おまえが疑わしく思うのも当然のことだ」

「違う。今となっては……だが。何とかアンタの記憶を呼び戻したかった。そうすれば、クラウドとも和解できるだろうし、アンタもクラウドも傷つかないで済むと……」

「……おやさしいことだ」

 セフィロスの物言いがふたたび毒を含んだ。

「やさしいんじゃない。俺がそうしたかっただけだ。クラウドのことは当然だが……俺はアンタのことも憎めない。カオスの戦士だと言われても、剣を向けたくはない」

「…………」

「もうすでにそんな気持ちは失せてしまっているがな。仮にコスモスに命令されても、アンタを相手にする気はないと、そう言おうと思っている」

「スコール……」

 驚いた声は、セフィロス本人ではなく、クラウドのものであった。

「……クラウドだけでなく、私も驚いたな。記憶とやらをもっているこの子はともかく、赤の他人のコスモスの戦士が、主のいうことを聞けぬというのか」

「アンタだって同じだろう、セフィロス。カオスの戦士であるのに、こうして俺たちの側に居てくれる」

「……たまたま成り行き上そうなっただけで、私を味方だと思うな。カオスの戦士は、クセ者揃いでな。一部の真面目な連中を抜かせば、だれもカオスに忠誠心など持ってはいない」

「ならば、俺も素行不良の戦士でけっこう。おのれの気持ちに従うだけだ」

「……好きにするがいい」

 むきになって言い返した俺に、セフィロスは独り言のようにぼそりとつぶいた。

 気怠げに髪を掻き上げ、夜着のガウンの乱れさえ直さず、ごろりと寝台に身を伏した。