〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<35>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

「……スコール、何ムキになってるの?」

 クラウドに言われて、彼にまでそう感じ取られていたと知り、額に手を当てた。

「今日は失言ばかりだ。……セフィロスを怒らせてしまったのだろうか?」

 そう訊ねた俺に、クラウドは少しだけ沈黙の間をとると、

「ううん」

 と、首を振った。

「セフィ、もう寝てる。それに、多分だけど…… スコールのこと気に入ったんだと思う」

「まさか。そんなことがあろうはずはない」

 即座に否定した俺に、クラウドが淡い笑みを投げかけてきた。

「本当だってば。……言ったでしょ、セフィロスに記憶はないけど、今の俺は彼と一緒に暮らしてるんだよ? セフィはめったに正直な思いを顔に出したりはしないけど、慣れてくるとわかるようになる」

「…………」

「そんな顔しないでよ、スコール。あ、もしかして、スコールもセフィのこと、好き?」

 俺より年長者のくせに、実にあっけらかんと訊ねてくるものだ。

 クラウドは、俺の顔を覗くようにして、小首をかしげてきた。到底ハタチ過ぎの男性のしぐさとは思えない。

 風呂上がりのパジャマ姿のせいか、よけいにそう感じるのだ。

「……昨夜、一晩、いろいろ聞かせてもらったからな。赤の他人だとは思っていない」

「もう、回りくどい言い方! スコールも好きなんでしょ? セフィは神秘的で強くて……カッコイイもんね。昔の俺が好きになったくらいの人なんだから」

「そういった意味合いではない。だが、確かに彼の戦闘能力はすさまじい。同じ元軍人として尊敬できる」

 我ながら四角張った返答に、クラウドが不満そうに眉をひそめた。

 彼の体調に慮って、そうそうに寝室に引き上げさせたというのに、こちらの心遣いはわかっていないようだ。

「セフィ、綺麗でしょ? 俺も昔、初めて出逢ったときに、写真で見たよりずっと綺麗な人だって感じたもん」

「写真?」

「うん、子供の頃、セフィロスが出てる新聞や雑誌集めていたから」

 少し照れくさそうに、クラウドがつぶやいた。

「……そうだな。確かに、めったに見ない美貌だとは思う。だが、彼は男子だ。女性ほど容姿でどうこうというものではなかろう」

「もう、スコール、カタブツ! 八年後のレオンには、ちゃっかり恋人いるくせに!」

 そういうと、クラウドは続けざまに、くしゃん!と大きなくしゃみをした。

 セフィロスを起こしてしまわないかと、あわてて口に両手を宛てた彼を、そのままベッドに放り込んだ。

「無駄話していないで、もう寝ろ。手の包帯は大丈夫だな?」

「……さっき、スコールが代えてくれたんじゃん。まだ眠くない。十時前だよ?」

「今日は朝からいろいろなことがあった。長すぎる一日だった。……自覚はなくとも、おまえは大分参っているはずだ」

「確かに疲れたカンジはするけど、でも……」

「いいから、横になれ。眠りにつくのに時間がかかっても、肉体が休まる」

 俺がそういうと、クラウドは不精不精、ベッドに潜り込んだ。

 広い部屋には、川の字型にベッドが配されている。窓際のセフィロス、真ん中にクラウド。そして廊下近くが俺だ。

 足下にはテーブルとソファが置いてあり、そこには先ほど振る舞った茶器が残っている。

 それらをキッチンに片付け、寝室に戻ると、そこにはすでに規則的な寝息を立てていくクラウドがいた。

 窓側のセフィロスの表情は見えないが、やはり彼も疲れていたのだろう。起きてくる気配はない。

 俺は注意深く戸締まりを確認すると、ようやく寝床に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 寝付きの悪い俺が、ようやく眠りについたのは日付の変わるころだったと思う。

 耳の奧のほうで、カシンと何か砕ける音を聞いた。……いや、正確には『聞いた気がする』だ。

 ふたりに比べて眠りに落ちたのが大分後だったせいか、『その音を聞き止めた時』には、まだ夢見心地であった。

「……ル……」

 誰かの呼び声がする。

 誰だ、これは……聞いたことのない……

 続けて、ゆさゆさと身体を揺すられた。ようやく俺が覚醒したのは、情けないことにこの時点であった。

「……む……? なに……ごとだ」

「目覚めたか、スコール・レオンハート。渡り廊下の向こう側の棟……窓が割られていた。侵入者がいる」

 そういったセフィロスは、すでに着替えを終え、剣を手にしていた。

 ハッとクラウドを振り返ると、彼はチョコボの雛のように、髪をちょこんと尖らせたまま、未だ枕に抱きついていた。

「その子を起こす必要はない。敵が少数なら私ひとりで十分だ。おまえを起こしたのは借りがあるからな……」

「借り? 何の話だ? あ、い、いや、今はそれどころじゃないな」

 手早く着替えた俺は、すぐにガンブレードの銃弾を確認した。

「私が行く。おまえはここに残れ」

「バカを言うな! 俺にはアンタを敵から守る使命がある」

「いい加減にしろ。おまえを起こしたのはその子のためでもある。……クラウドと決着をつけるのはこの私だ。他の連中に横取りされてたまるか」

「まだそんなことを……アンタにもうその気がないのは、俺だってわかっている!」

 口論のようになる俺たちふたりを尻目に、クラウドは相変わらず健やかな寝息を立てていたのだが……

 

 ひとりで行くと言って聞かないセフィロスと、ぜったいに同行するという俺。

 どちらも一歩も譲らず、仕方なく妥協案に落ち着いた。

 

 俺たちの部屋の斜め前。似たような間取りの広めの部屋がある。そこには、男連中が寝ているはずだ。

 さすがに女性らの寝室に、許可無く入り込むわけにはいかないゆえ、彼らにクラウドを託せばよいと考えた。