〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<36>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

「おい、ティーダ、起きろッ! ジタン、寝ぼけているな!」

 セフィロスが廊下を見張っている間に、すばやく俺はふたりを起こしにかかった。

 この部屋にティーダとジタンということは、続きの間には、セシルとラグナだ。

 セシルの力は借りたいところだが、ラグナまで一緒に起きだしてしまうと、鬱陶しいことになりそうなので止めておく。

「う〜」

「むぅ〜」

 寝汚く唸る二人だ。その無様なありようを見て、まさか俺もセフィロス相手に、このような失態をみせてしまったのではないかと不安に陥る。

「う〜……なんだよ…… スコール……ッスか?」

 ティーダが、ごしごしと目を擦った。

「ったく何ッスか? ……まだ、五時前!? カンベンしろよ〜」

 そういって、ふたたび転がろうとするのを、腕づくで阻止した。廊下のセフィロスは待っていてくれるだろうか。

 あの人のことだ。俺たちを放置して、さっさとひとり危地に乗り込んでしまうかもしれない。

「寝ぼけるな、ティーダ、ジタン! ……敵襲だ」

 俺は押し殺した声で、そう告げた。

 さすがに若くとも剣士と自覚のあるふたりだ。その言葉で、非常事態であると認識してくれた。

「マジすか!?」

「クソ、まったく今日はなんて日だよ! ……ああ、もう明け方、次の日か……」

「この辺はカオスの領域にはなりきっていないと思っていたのだがな。おそらくイミテーションが紛れ込んだのだとは思うが…… それより頼みがある」

 俺はやや早口に、言葉を続けた。

「セフィロスと俺が、追跡している間、クラウドを頼む。あいつは手を怪我しただろう。そのせいか、熱っぽいんだ。今はよく眠っているから……」

「了解っす! じゃ、オレ、クラウドについてるから、ジタンはラグナさん起こしておいてな」

「おう! でも、スコール、セフィロスさん、大丈夫なのか? 強いかって言われりゃ、あの人なんざ最強の部類だろうけど、カオス側から見りゃ裏切り者だからな」

 ジタンが俺の心配していたことをそのまま言葉にする。

「……わかってる。セフィロスのことは、俺が責任をもって守る」

「ヒュー! 騎士道精神満載ですな、スコール!」

 茶化したふうに、ティーダに言われ、カッと頬に血が上るが、決して彼はおちゃらけて言ったわけではなさそうだった。

 ふたりはすぐに着替えを終え、ティーダは俺たちの部屋へ移動した。

 

 

 

 

 

 

 ……案の定、セフィロスがいない。

「おいッ! セフィロスさん、いねーじゃねーか! どうすんだよ、スコール!」

「……クソッ! すぐ後を追う。ラグナはどうでもいいが、女性たちのことは頼むぞ!」

「オッケー! 任せろ!」

 力強く返事をするジタンに、一抹の不安を感じつつも、俺は窓から飛び出した。

「セシルたちに声を掛けたら、すぐに加勢に行くからな!」

 ジタンの声が追いかけてくる。

 昼間の草原で遭遇したわけではない。明け方とはいえ、まだ薄暗い。この闇とやや広い家屋……敵の数がわからないのだ。

 連中が窓を割ったのは、もしかしたら陽動かもしれない。

 

「セフィロス!」

 裏庭に出ると、セフィロスがひとりで、数体のイミテーションを相手にしていた。

「セフィロス、大丈夫かッ!」

 ザンッ!と、彼の背後を狙っていた道化の姿を模したイミテーションを切り裂く。

「……わざわざ来たのか。クラウドに着いていろと言ったろう」

「クラウドのことは、ティーダとジタンに頼んだ! まもなく応援も駆けつけてくれる!」

「よけいなことを……」

 吐息も乱さずに舞うセフィロスが、ため息と共に吐き出した。

「この程度の敵……私ひとりで十分だ」

「わかっている。アンタは強いからな。だが、アシストさせてくれ」

 セフィロスが素直にイエスというキャラクターでないことは、すでにわかっている。俺は勝手に彼の戦闘に飛び込んだ。

「……好きにしろ。だが、足を引っ張るな」

 煩わしげにつぶやくセフィロスだ。

 そういえば、彼が戦闘のときに、アシストを引き連れている姿は見たことがない。

 敵として現れたときもひとりだったし、俺たちと行動を共にしても、やはり他人の手を借りることはなかった。

 ……きっと、彼にとって、俺はアシスト第一号なのだろう。

 そう考えると、なんだか少し、嬉しい気がした。