End of Summer
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
Interval 〜04〜
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

 ……『セフィロス』は怒っているのだろうか?何か気に障ることを口にしてしまったのか?

 彼の外泊の理由を尋ねたのが差し出がましかったのか……? 

 そうではなくて……そんなつもりではなく……ただ、私は……

 

「おまえは強欲だ」

 彼はさらに強い言葉で私を断じた。

「綺麗な顔をして……欲張りなヤツだな」

「セ、セフィロス……何を言って……」

「クラウドにあれほどまでに愛されているくせに、他の者の心も欲しいか?」

「……え……?」

 『セフィロス』のあまりに意外な言葉に、私はただひたすら目を見張ることしかできなかった。

「……それともクラウドでは満足していないと……?」

「君は……な、なにを言いたいのだ……? ただ……私は……」

「『私は』?……なんだ? ヴィンセント」

 じりじりと顔を寄せる『セフィロス』。もちろん今はクラウドの姿で。

 

「わ、私は……そんなつもりじゃなくて……ただ……」

「おまえの言葉はいつも要領を得ない。曖昧な物言いに想像の余地を残され、周囲の者は勝手に期待する。自分を想ってくれているのではないかと儚い夢想を抱いてな」

「違う……! 私は……そんなつもりは……!」

「クラウドもそうだったのではないか? あいつがおまえを想っているのは本当のことだろう。ではおまえは? おまえは本当にあの子を好いているのか? あの子がおまえを愛するように、好いていると言えるのか?」

「……わ、私は……私は……」

「あの子がおまえを欲しがるように、『クラウド』を欲しているのか?」

 夜半を過ぎた月明かり……白いと言うよりも蒼い光の中、『クラウド』のさらに深い蒼色の双眸が私を見つめる。天空の星々をかき集め、それを地上に散らしたような黄金の髪……少女のような淡い色味の肌……そしてつややかな口唇。

 

 

 

 

「……わ、私は……私は……クラウドのことを大切に思っている……!」

 なんとか必死に、それだけはハッキリと口に出来た。

 情けなくも、極度の緊張で、ゼッゼッと吐息が荒くなってしまう。

「……大切に……ね。おまえはその言葉をオレにも使うな? ヤズーやガキどものことも『大切』という」

「そ、それは……だ、だが……クラウドは……クラウドは……!」

 まるで責められるように言葉を引き出され、またもや涙腺が緩んでくる。なぜにセフィロスは、こんなひどい詰問をするのだろう。わざわざ真夜中に、庭まで出てきて、私を拘束してまで嬲るのだろう?

 

 私は最後の矜持を守るべく、ともすれば引きつりそうになる呼吸を整え、『セフィロス』に言い返した。

「クラウドは、私を生かしてくれた……! もう、二度と自ら求めないと決めていた死人のような私に、新しい人生をくれたんだ……! だから……だから……ッ」

「…………」

「だから……ッ! クラウドは……クラウドは……わ、私にとって光そのもので……彼の側に居させてもらえれば……もう一度……生きることができると……ッ!」

 なんとかそこまで言うと、バタバタバタ!と大粒の涙が膝を濡らした。

「それが……おまえがあの子の側にいる理由か」

 静かな声音で『セフィロス』がささやいた。

 私はただ頷いた。声を出したら、すぐさま嗚咽に変わりそうであったから。

「それが恋情か否かなど……どうやら今のおまえには関係ないらしいな」

「え……?」

 ポソリとつぶやいた彼の言葉は、低くて小さすぎて、私にはすべて聞き取ることはできなかった。

 

「……悪かったな」

 わずかな間隙の後、微かにため息をつくと、『セフィロス』は低くささやいた。私の身動きを封じていた両腕を解き、片手をそっと頬に宛ててくれた。

 

「……あ?」

 唇に、触れるだけのやさしい口づけ。

「フ……おまえがあまり必死なんでな、少しからかっただけだ……ククク」

「……『セフィロス』……?」

 惚けたように彼の名を呼んだ私を振り返り、『セフィロス』はクラウドの姿で笑いかけてくれた。月明かりに霞んでしまうような朧気な笑みであった。

 

「……おまえももう部屋に戻って休め。ただでさえ軟弱者なんだからな」

 少しだけ意地悪くそう言うと、あっさりときびすを返し、もう一度名を呼んでみても、私を振り返ってはくれなかった……