End of Summer
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<12>
Interval 〜04〜
18禁注意
 クラウド・ストライフ
 

 

 

  

 

 

 

 そう、この身体はセフィロスなんだ。

 ヴィンセントよりも背が高くて、俺なんかよりウエイトもある。手も脚もすらりと長く、しなやかに無駄なく筋肉のついた男らしく美しい姿態。

 ……そしてエロエロの身体。

 

 下半身のズキズキはハンパじゃない。セフィの身体はなんてコーフンしやすいんだろう。もちろん、俺だって、人のこと言えるほど我慢強いわけじゃないが、セフィのズキズキは尋常じゃない!……と思える。

 

 ヴィンセントの肉の薄い、細い四肢……

 十分に気を使って使いすぎるということはないだろう。

「ヴィンセント、怖がらないで。俺……だからね? セフィじゃないから」

「……あ」

 強すぎない力で、ギュッと抱きしめ、汗の浮いた額に、紅い頬に口づけを繰り返す。ヴィンセントは、直接的な行為よりも、こうして抱きしめたり、キスを繰り返してやるほうが嬉しそうに見える。

「ん……クラ……ウド?」

「そう……目、つぶってな?」

 やさしくやさしく耳元でささやいた。

 言われるままに、双眸を綴じ合わせるヴィンセント。

 ……ああ、可愛い、もう大好き!

 俺よりずっと年長……と本人はいうが、こういった感覚はいかにも少女めいていて、そのギャップがひどく可愛らしく感じるのだ。

 もっともヴィンセントの整った外見や、清楚で上品な在りようが多分に影響しているのだと思うが。

 

 

 

 

「……力、抜いてね、ヴィンセント」

 細い腕が首まわりにしがみつく。セフィロスの広い背だと、縋るような形になってしまうが、彼は一生懸命に腕を回した。

 濡らした指先で最奥を探り、痛みを少しでも無くしてやれるように慣らす。もともと受け入れるための器官でないところを使うのだ。どうしても生理的な恐怖があるのだろう。

 頑なに瞑った双眸の、まぶたがビクビクと震えるのを見ると、可哀想になってしまう。

 俺自身、そちら側の経験がないわけではないから、行為に対するヴィンセントの生理的な恐怖は十分理解できる。

 気持ちの問題ではなく、身体が怖がるのだ。

 

「……あ……あッ……」

 吐息まじりの声が漏れる。指先に力がこもり、肩に食い込んできた。だが綺麗に爪を摘んであるヴィンセントの指が、セフィロスの肌を傷つけることはない。

「ん……ッ あ……あ……ッ」

 ゆっくり……怯えさせないように指を動かす。

 つらそうではないが、到底心地よさそうには見えない。

 ……ガキの頃、俺はけっこう怒鳴ったり叫んだり、ビービー泣いたりしたものだが、ヴィンセントは苦痛も快楽もひたすら『忍耐』なのだ。

 

「……力……抜いてて……」

 もう俺自身にもほとんど余裕はなかったが、静かな声で薄い耳朶にささやきかける。骨の浮き出た両の脚を押し広げ、身体を重ねた。

 ぐっ……と、動きを阻まれる。ひどい圧迫感がある、狭い内側。

 黒髪に指を絡ませ、そっと梳きながら狭い部分に分け入ると、途端に細い姿態が強ばってゆく。緊張するとよけいにつらいと、頭ではわかっているのだろう。だがこればかりは理屈ではない。

「……あッ……痛ッ……!!」

「お願い、怖がんないで……俺だから……! 力抜いて……ヴィンセント」

 ほとんど縋るようにそう願った。

「……あッ……あ……」

 途切れ途切れの喘ぎ声。

 ヴィンセントの指が背を滑る。求めるように縋り付いてくる細い指が愛おしい。

 

 オレンジ色のダウンライトの中、作りつけの全身鏡に、俺たちの姿が映っている。

 しなやかな筋肉が美しい曲線を描く、セフィロスの完成された姿態……それに骨ばった蒼白い腕がからみついている。折れそうなほどに、曲げられた華奢な脚……そして白いシーツに広がる、闇色の髪……

 こんなときであるにも関わらず、俺はふたりの姿にしばし見惚れていた。

 セフィロスの氷のような蒼い瞳……銀の髪、ヴィンセントの深紅の双眸……闇色の髪……なんて蠱惑的な美しさなのだろう。

 

 このとき……不思議と嫉妬は感じなかった。

 あくまでも外見的な話とわきまえていたこともあるが、そんなことよりも、この圧倒的な神秘に、つまらない妬みを抱く気になれなかったのかもしれない。

 

「ん……ッ あ……」

 苦しげに身じろぎするヴィンセント。

 繋がった部分から、目の眩むような甘い疼きが生まれる。ついつい、食いしばった歯の間から呻きが漏れた。

「……ッ……んあッ……く……ッ」

 俺は世にも珍しい、セフィロスの喘ぎ声を聞いてしまった。

 

「ヴィンセント……好き…… ちゃんと、つかまってて……ね」

 肩に回された手に、やさしく掌を重ね、そっと……宥めるように言い聞かせた。すでにまともに思考できなくなっているのだろう。ヴィンセントは惚けたように緩慢に頷いた。

 今はもう、ほとんど触れているだけにしか感じられなかった細い腕……その指に微かに力が込められた。

 

 DGの事件から一ヶ月と少し……いや、ヴィンセントが姿を消した期間を考えれば二ヶ月ほど、彼には触れることができなかった。

 たったそれだけの間と言われてしまうかもしれない。だが、俺にとってはまさしく地獄のような日々であり、久々に肌を重ねた今、それを取り戻すかのように夢中になってしまう自分が居た。

 セフィロスの身体で、ヴィンセントに触れるのは本意ではないのに。彼にとっても、言葉にし難い違和感はあるだろう。

 

 ……やっぱし、俺、ホントに『我慢のきかないクソガキ』なのかもしれないなァ…… 

 

 しょっちゅう、セフィロスに言われる言葉を思い出す。

  

 ……それから後のことはほとんど記憶になかった。

 ……最後の最後、意識のはっきりしている間だけは、とにかくヴィンセントに負担をかけないように、それだけを脳裏に刻み込んでいた。

 つらそうに寄せられた眉。せわしない吐息……そして上り詰め、頽れる……ふたりで感じる筆舌に尽くしがたい陶酔……

 

 蒼白い額に口づけると、うっすらと目を開け、ほんの少しだけ微笑んでくれた気がした……

 そのままヴィンセントは、一言も口を聞かずに、双眸を綴じ合わせた。