Fairy tales
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<7>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

「ブヘーックシ!」

 大きなくしゃみを一発。

 なんだか妙に身体が痛む。

 ……なんでだよ? だって俺、あの後ヴィンセントの部屋に……

 あ、鍵が掛かってて入れなかったんだっけ…… そう、その後、自分の部屋に戻って、ベッドに潜り込んで……雑誌見ながら、いつの間にか寝ちゃったはずなんだけど……

 妙にゴツゴツした冷たい感触を、背中に感じる。

 

 そして身体を揺すられる感覚……

 今日は日曜日だっつーの。寝かせておいてよ、普段勤勉に働いてんだからさァ〜

 あ?もしかして、ヴィンセント? なぁんだ、そんならそうって言ってよ〜。

 遠慮しないでベッドの中にどーぞ!!

 ……そういや、朝エッチってしたことなかったよねー。てへへへ。

 

「×××? ×××!」

「ん……、何言ってんの、ヴィンセント。早く入りなよ〜」

「……×××? ×××!」

「ヴィンセントってばぁ〜」

 俺の身体を揺する細い腕を掴み閉め、ぐいとばかりに引き寄せた。

 ……と同時に、高い悲鳴が俺の意識を覚醒させた。

 というか、おそらく俺たちの。

 

 目の前の顔はなんだか見覚えのある顔……

 女の子だから、それほど懇意にしている人ではないはずだ。

 だって俺にはヴィンセントがいるから。ベタベタ女性と付き合っているのを見て誤解されたらたまんないもん。

 でも、すごく可愛い子だ。美少女っつーか。

 ちょっと……いや、かなり俺に似ている。ああ、そういや俺の女装はコルネオもだませたんだっけ。

 彼女はブロンドの髪を、カールさせて長く伸ばしていて……瞳の色も深い蒼。化粧っ気なんか全然ないのに、バチバチの長い睫毛をしていた。

 あー、やっぱし、俺ってば女の子に生まれたとしてもラブリ〜だったんだなァ。

 

 

 

 

 

 

「……オイ、正気に戻れ、クソガキ。この非常時にいつまでも呆けているな、鬱陶しい」

 冷ややか……どころか、ツンドラのようなセフィロスの声で、俺はようやく身を起こした。

 ……ってゆうか、ここ寒ッ!

 なんで、こんなに寒いんだよ!コスタ・デル・ソルは南の島だったはずなのに……そりゃ、いくら日中と寒暖の差があるとはいえ……

「クラウド、よかった気がついたか? 頭を打ったのではないかとひどく心配した」

「放っておけヴィンセント。ぶつけようがつぶされようが、そいつの頭はそれ以上悪くはならん」

 聞き慣れたセフィロスの罵詈雑言に怒鳴り返す余裕もなく、俺はまさしく呆けて口を開けたまま、周囲を見回した。

「……どこ、ここ?」

「ク、クラウド……気を確かにな……」

「いや、気を確かにっつーか…… コスタ・デル・ソルじゃないよね?」

「あ、ああ……」

 彼のせいでもないのに、申し訳なさそうにヴィンセントが頷いた。

 目線を戻すと、目の前のさっきの金髪の美少女。彼女は夢の中の住人ではないらしい。ちゃんと足がついているからユーレイとかでもない。

 

「……アンタ、だれ?」

 恐る恐ると、ツラだけは俺で性別は女の、目の前の人物に問いかけた。

 彼女はちょっと困ったように小首をかしげ、

「×××××……」

 と答えてくれた。

 そう『シンデレラ』と……

「あ、俺、クラウドね」

 そういうと、彼女は『知っている』と言って笑った。その様子からして、おそらく一番最後に目覚めたであろう俺の悪口を、セフィやヤズーあたりから聞かされていたのだろう。

 いかにも彼女の微笑は『苦笑』であった。

 

 ……あり?

 ところで、『シンデレラ』って……なんかどっかで聞いた名前?

 

「あのさ、ヴィンセント。『シンデレラ』ってなんか知ってるような気がするんだけど。どこで聞いたんだっけ?」

 おずおずと聡明で教養ある俺の恋人に訊ねてみると、ヴィンセントが答える前に、セフィロスとヤズーが、ひどく深いため息を吐いた。

「なんだっつーんだよ、失礼……」

「兄さん、兄さん、これだよ、これッ!」

 カダージュがズンと突きつけてきた一冊の大型本。

 見れば昨日購入したというシリーズの童話ではないか。

 

「…………」

「ね? わかった?」

「……ああ、話はあんましよく覚えてないけど」

 この上なく脱力しながら、俺は答えた。

「……『シンデレラ』? あのさ、この場所って、童話の中の世界……なの?」

 彼女は俺に似た可愛らしい美貌に笑みを浮かべたまま、小首をかしげてたたずんでいた。