〜 銀 世 界 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 ヤズー
 

 

 

 夜である。

 

「ジェネシスはサンルーム使ってね。この前と同じ場所のがいいでしょ」

「うん、俺はどこでも」

「ええと、支配人さんは、セフィロスの部屋ね」

 と、俺はごく当然のように口にしてしまったのだが……

 両者の反応は、俺の想像とは異なっていた。

「え…… あ、はぁ……お邪魔でなければよいのですが……」

「気ィ回してんじゃねーぞ、イロケムシ。別にどうでもかまわんがな」

 ……だって、付き合ってるんなら、別にいいじゃない。

 他にも部屋がないわけじゃないけど、物置になっているし…… だいたいセフィロスの使っている、ゲストルームは、二部屋分の広さがあるのだ。

 ベッドも、キングサイズどころかクイーンサイズで、あの大きさのセフィロス三人並べてもお釣りが来るくらいなのだ。

「あ、エッチ禁止ね! シーツ洗うの大変だから!」

 余計な発言をする兄さんが、ふたたび後頭部をボコられている。

 ヴィンセントはそんな発言に真っ赤になってしまう。むしろ、当の支配人さんのほうが、笑って流してしまうような感じだ。

「ええと……その……君は個室の方がよいだろうか? もしそうなら、あの部屋は間仕切りができるし……」

「あ、はぁ…… あの私はどうでも。こちらに置いていただけるだけで、助かっているのですから」

 ヴィンセントの申し出に、丁重に支配人さんは答えた。

「ああ、いい、いい。おまえも別にかまわんだろ」

 セフィロスが乱暴に支配人さんに訊ねた。否応ナシだ。

「はい、私は」

「そういうことだ、気を遣うな、ヴィンセント」

 面倒くさそうな素振りに、ヴィンセントもそれ以上の言葉は言えなくなってしまう。

 なんとなく微妙な雰囲気に、陥りそうな所、セフィロスがさっさと支配人さんを促して部屋に引っ込んでしまった。

 ……あくまでも第三者的な立場の俺からの見解だが……

 まず、セフィロス本人が、ヴィンセントと支配人さんを、『同じ場所に置く』という発想自体をしていなかったであろうこと。

 こんな非常時でさえ無ければ、一つ屋根の下に、『ホンモノ』と『ニセモノ』を一緒にすることなど考えもしなかったろう。

 

 勝手な話だろうが、今、一番舌打ちしたい気持ちなのは、セフィロス本人だろう。

 しかし、『ニセモノ』とはいっても、セフィロスの思いが、まるきり支配人さんに無いわけではないと俺は読んでいる。

 ヴィンセントによく似た……というのがきっかけであったとはしても、相性の悪い相手であれば、飽きっぽいセフィロスが継続して付き合うはずはないし、実際、支配人さんは魅力的な人だ。

 長く側に置く間に、徐々に情が移っていったとしても、十分納得がいく。

 だが、やはり本命は、『ホンモノ』のほうであって……

 ま、自業自得といっちゃそのとおりなんだけど、セフィロスも、支配人さんに嫌な思いをさせることはなかろう。

 それくらいの気は回る人だ。

 ……少なくとも恋愛関係においては。

 

 

 

 

 

 

「さ、ヴィンセント。俺たちももう寝よう。こんなところに突っ立っていたら、せっかく暖まったのに、冷えてしまうよ」

「ん……」

「どうしたの? 彼らが気になる?」

 好奇心を押し隠し、俺は気楽な雰囲気で訊ねてみた。

「気に…… ああ、そう……かも。たぶん、気になっているんだと思う」

 ヴィンセントは、何のてらいもなく、あっさりと答えた。まさしく馬鹿正直に。

「やれやれ。あなたは普段表情があまり変わらないから。なにかあるとてきめんにわかるようになっちゃったよ」

「……そう言われると少し恥ずかしい……かな」

「いいんじゃない。俺、そういうヴィンセントのほうが好き」

 こちらも正直にそう答えると、彼はまたもやポッと頬を赤らめた。色が白いから、これまたすぐにわかってしまう。

「ま、現実的に部屋数の問題があるから仕方がないでしょ。他の人と同室にするよりは自然だからね」

「ヴィンセント、ひとりが寂しいんなら、俺が一緒に寝てあげるけど?」

「ヤ、ヤズー…… そんな……子供ではないのだから……」

「はーい、そこまでそこまで。ヴィンセントが独り寝寂しいなら、俺が一緒に寝ます。当然の流れです」

 にょにょと割り込んで顔をつっこむのは兄さんだ。

 後からやってきた彼が、一生懸命お願いしていたようではあったが、すげなく躱されてしまった。

 

 ……こうして、むさ苦しい(?)、男八人の越冬生活が始まったわけではあるが……