〜 銀 世 界 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<24>
  
 セフィロス
 

 

 

 

 次に目を覚ましたのは、ひどく暖かい場所だった。

 ……というか、熱い。

「ぶはっ! ゲホッ!」

「ああ、暴れちゃダメだよ。足の傷に響くだろ」

「……なんだ……ここ…… 風呂……」

 いつの間に辿り着いたというのだろう。とぎれとぎれの意識の中で、何度も記憶を辿ってみる。

「覚えがないのか? ああ、服を脱がせるときも朦朧としていたからね。……もう、安心だ。とにかく早く身体を温めようと思ってね。足の怪我よりもそっちを優先したんだ」

「…………」

「暖まったなら言ってくれ。あまり熱くなりすぎるとねんざが痛み出すから」

 そう言われるがままに、オレは左足を眺めた。

 あ〜あ……本当に腫れていやがる。そりゃそうだ。あれだけ痛かったのだから。

 今も、ずくずくと疼いてはいるが、我慢できないほどではなかった。

「……手間ァかけたな……」

 ようやくそれだけの言葉が出た。熱のせいでダルさが抜けない。

「いいや、気にしないでくれ。それよりも、女神と支配人の彼がひどく心配してしまってね。チョコボっ子も責任を感じているようだし、早く良くなればいいな」

「…………」

「……大丈夫か、セフィロス? 苦しくないかい?」

 足の怪我のせいで、オレはジェネシスに寄りかかるような姿勢で湯船に浸かっていた。

 この風呂はオレの部屋についているバスではなく、家で一番大きなものだ。さすがにオレとジェネシスが一緒に入るとなると、このサイズじゃなければ無理がある。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス……?」

「……心地いい。足は痛ェけどな」

「そうか。熱をもつといけないからな。……あと少ししたら上がろう」

「ん……」

「なんだか、久しぶりだな、こういうのは」

 しゃべり続けるジェネシスを無視して、双眸を閉じた。ただ単にこのまどろみが心地よかったからだ。

「……昔はよくおまえを背負ったけど…… 何だか懐かしい。ふふ、雪山でも言ったっけ」

「…………」

「おまえは強いからなァ。戦闘ではほとんど手を貸せるような場面はなかった」

「…………」

「でも、おまえって、日常生活ではけっこうヌケてるんだよな。飲み過ぎて眠り込むとか、寒い日なのに、平気でノースリーブ着て風邪ひくとか……」

「…………」

「なんだかね、そんなときに面倒を見るのがけっこう楽しかったんだよ。仕方ないなって言いながら、背負ったり、上着を着せたり…… まるで弟が出来たみたいで」

「……じゃねェ……」

「え……?」

 オレのつぶやきをしっかり聞きつけて、ジェネシスは問い返してきた。

「弟……とか言ってんじゃねェ…… オレ様は……自分の面倒くらい……」

「ああ、はいはい。そうだねェ。俺が勝手にしたことだよ。でも、嬉しかったんだから、そう思っていてもいいじゃないか」

 オレの髪になにかが触れる。たぶん、ジェネシスの指先だろう。見たワケじゃないが、風呂場にはコイツしかいないわけだから。

「髪も軽く洗ったんだよ。注意したんだけど、耳に水が入っていないか心配になって」

「…………」

「セフィロス、ここで眠り込んじゃダメだよ。ベッドの上で……な?」

「……テメェが言うと、キモイんだよ……」

 目を瞑ったまま、そう答えた。いや、本当に眠りに落ちそうになっていた。

 昨日一日分の疲労と、さきほどまでの寒さ…… そして、今の心地よさと発熱のせいだ……

 

 ジェネシスが扉の向こうに声を掛ける。たぶん、イロケムシあたりがローブ片手にスタンバッているんだろう。ご苦労なこった……

 もう、足の痛みは大分マシになっている。体温の上昇でズクズクするだけだ。

 あと少し……もうしばらくしたら、起きて風呂場を出よう。

 スポーツドリンクでも飲んで、今夜一晩眠れば、すぐに回復するだろう。熱はあくまでも怪我のせいであって、風邪を引き込んだわけではないのだから……