ハローベイビー
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家&おまけの『うらしま』〜
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 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

  

 

 日曜日の夕方だ。

 仕事があった日でもないが、なんとなくうつらうつらと眠たくなってきた。知らぬ間に船を漕いでいたらしい。

 真昼の空の下では、到底居眠りなどできる日差しではないが、ここは市場の日陰にあるベンチだし、時間も時間なので、人混みも少ない。

 まだヴィンセントが戻ってこないところを見ると、居眠りとはいってもほんの十分程度だと思う。

「ふぁ〜あ、やれやれ……」

 うーんと伸びをして、目を覚まし、のんびりと頬杖をつく。

 たまにはこんなのんきな休日もよいものだ。

 

 ……と思った矢先のこと。

 バタバタと派手な足音が周囲を走り抜けていった。砂ほこりが舞うのが煩わしい。

「チッ……ったくなんだよ、こんな場所で全力疾走すんなっつーの」

 ブツブツと文句を言っていると、真っ黒な服を着た、『迷惑な砂ぼこり野郎』が、俺の目の前でピタリと足を止めた。真っ黒な服……というか、このクソ暑い場所で黒づくめのスーツなのだ。

「……?」

「ク、クラウド! クラウドだよな! 助かった!」

 そいつはハァハァと息せき切ってそう叫んだ。

「……レ、レノ?」

「ちょっ……俺、マジ急いでんだよ。悪い、頼まれてくれ!」

「なんだよ……アンタ、だしぬけに。だいたいこんなとこで何してんの?」

 のどかな午後の青物市場。どこか田舎臭い老若男女の中で、ブラックスーツに赤毛の男は目立ちに目立っている。

「クラウド、悪ィッ! これ、頼む!」

 なにやら抱えていた布の包みをぐいと押しつけてきた。

「うわッ!ちょっ……な、なんだよ、コレ!」

「いいからッ! 頼むから、しばらく預かってくれ!」

「ハァァ? お、おい……!」

 俺があわてて問い返そうとしたときには、すでにヤツは痩躯をバネのように操って、人混みの中に姿を消していた。

「おいおい! ったくなんだっつーんだよ! 俺はもう神羅の社員じゃないんだからな! アブネーもん預けんなっつーのッ!」

 久方ぶりに逢ったと思えば、相変わらず落ち着きのない赤毛ヤローだ。一時は敵対し、追いつ追われつしていたが、今はまぁ……和解している、ことになるのだろうか。

 やつらが今、メテオ事件で親を失った子供のための施設を作ったり、WROにも資金援助しているとなれば、一応敵対関係は解消されたと考えるべきだろう。

「ったく……もう面倒事に巻き込んでくれるなよな……ただでさえ……いろいろと……」

 ブツブツと文句をいいつつ、預けられた包みを開いてみる。『包み』とはいってもけっこうの大きさだし、重量もある。

 

 ……俺は中身を確認した瞬間、サーッと血の気が引いていくのを感じ、軽い眩暈を覚えたのであった。

「……おい、これ……ちょっ……もうホント……どういう……」

「クラウド、待たせてすまなかった。買い物は済んだから……」

 計ったように、ヴィンセントが手荷物を下げて戻ってきた。

 俺の姿を見留めると同時に、切れ長の双眸が丸く見開かれた。こんな時なのに、ルビーのような瞳が、夕陽に透けて本当に綺麗だなと感じる。

 

「……その子は……おまえの?」

 なんと言えばいいのかわからなかったんだろう。

 ほとんど惚けたような面持ちで、ヴィンセントはぼそりとつぶやいたのであった。

 ……レノから押しつけられたソレ……

 

 チョコボの産毛のような金の髪にブルーアイズ。

 桜色の肌……

 俺の懐におさまり、スースーと微かな寝息を立てているのは、まぎれもない人間の子ども……珠のように愛らしい赤ちゃんであった……