嗚呼、吾が愛しの君。
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<15>
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 

 

 ザザザッ!

 

 人影が動く。

 いちいち相手をするのもわずらわしいが、降りかかってくる火の粉は払わねばならん。 

「ファァ!」

「イヤァ!」

 妖しげな雄叫びを上げ、背後から斬りかかってきた二人組を斬り倒す。

 ヤツらは声すら上げずに、ドサドサと重なって倒れた。

 

 ……クソ、鬱陶しい。

 とにかく時間がない。雑魚を相手にしている場合ではないのだ。

 だが、DGソルジャーどもは、それこそ神羅ビルに巣くっているといったふうに、ウゾウゾと湧き出すのであった。

 

 気味が悪いというか不快なのは、連中とはまともに会話が成り立たないことだ。力づくで吐かせようとしても、その前に自決しやがるし、そもそも味方同士でさえ言葉を交わしている様子はない。

 時たま、「北フロア43階」だの「エレベータールーム、南方より東へ」だの、いわゆる情報交換のような会話が為されるだけだ。

 おそらくツヴィエート以外の連中は、ほとんど人間的な部分を失っているのだろう。まるでロボットも同然だ。

 

「ウァァァーッ!」

「キィェェェ!」

「ちっ……!」

 思考している間にも、間髪入れず斬りかかってきやがる。本物の軍人ならば、対峙すれば相手の力量も読めるというものだ。だが連中は愚直にもただひたすらに向かってくるだけであった。

 その姿は、いっそ憐れみを覚えるほど滑稽に見えた。

 

 神羅ビルに侵入してから、一体何人のDGを倒しただろうか。もう数など覚えていない。 ただ、俺が進入する前に、ヴィンセントがこの場所へ来ているのは間違いがなかった。そこかしこで倒れているDGども中に、射殺された死体がかなりあった。どれもこれも、急所を一発。

 DGどもも、特殊訓練を受けた、ソルジャー以上のソルジャーであったはずだ。それを一撃の元に倒す神業……ヤズーの野郎もなかなかやるが、ヴィンセントとは場数が違いすぎる。それに中央塔を任せたのだから、まだこちらへはやってきていないだろう。

 ……そう考えれば、ヴィンセント以外の人物は考えられなかった。

 

「人は見かけによらないとは……よくもまぁ言ったもんだな」

 ゆるやかなシルクの黒髪、物の言えない紅い瞳の人形……そんなナリを思い出すと、つい、そんな言葉が口をついた。

 

 

 

 

 十数名を斬ったフロアを飛び出し、非常階段を下りる。地上階はまったくエレベーターが作動していないのだ。

 ……地下研究室……そしてディープグラウンドまでは大分ある。いや……その先にさえまだ行くべき道があるのかもしれない。

 

『R3 地下資料エリア……到達……排除、願います』

 

 間髪入れず、背後からバタバタと人の集まる気配がする。

 ちっ……!いったいどこから連絡を入れてやがる。まともにライトひとつついていない廃屋で、わざわざご丁寧に館内放送が流れるのだ。

 もちろん、その絡繰りを暴いている時間などなかった。とにかく先へ……先へ進まねばならない。

 

「ウオォォアァァ!」

「キィェェェェ!」

「くそッ! 鬱陶しいッ!」

 ザン、ザンッ!

 袈裟懸けに斬り倒し、先に進む。

 だが、先ほどの情報伝達のせいだろう。オレの行く先々に待ち伏せたように、DG連中が湧き出すのであった。

 オレはヴィンセントのように、やさしい男ではない。向かってくるヤツは、どれほどくだらない者どもでも、慈悲を持って見逃すなどという面倒なことはできない。

 行く手を阻む者は、死あるのみだ。

 

 

『エマージェンシー 地下研究エリア……ヴィンセント・ヴァレンタイン、発見……確保、願います』

 

 …………ッ!!

 ヴィンセント……ッ!

 

 いや、驚くようなことではない。

 先ほども言ったように、ヴィンセントがオレより先にビルに侵入していたのはわかりきったことだったし、目的地はひとつしかないのだから。

 

「くそ……ッ、貴様ら、退けッ!」

 一喝してやるも、退く気配はない。

「バカ者どもめが……!」

「ウァァァーッ!」

「キィェェェ!」

 

 ザンッ!……ザンッ!

 行き過ぎたうしろに、重なるまだ暖かい骸……

 

 先へ……とにかく先へ……!!

 ヴィンセント……! 早まるな……!

 

 ほとんど祈りにも似たような気持ちを抱きつつ、オレは走った。

 ……そして、わずかながらも息を弾ませ、ヤツの身を案じるおのれの愚考に失笑するのであった……