嗚呼、吾が愛しの君。
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<33>
 セフィロス
 

 

 

  
 

 

 

 

「宝条、ご託はたくさんだ。腐りきった縁……これで、終わりにしてやろう」

 愛用の銃を構えるヴィンセント。

 

 こんな好戦的なコイツの姿は初めて見る。

『ギハハハ! やれるものならやってみるがよい! クズどもめが……ッ! この肉体にはオメガの力が宿っているのを忘れたか……!』

「行くぞ、クソガキッ!」

 話の展開についていけないクラウドを促し、オレたちもヴァイスに立ち向かう。

 ……いや、ヴァイスというより、『オメガを宿した幽体』へ、だ。

 

 ヴィンセントが空を舞い、三連銃を撃ち放つ。

 それはみごとなまでに急所を狙いうちするも、『ヴァイス』の肉体を貫通することはない。

 目に見えないバリアのようなものが、鉛の弾丸をはじき飛ばしてしまうのだ。

「ヤロォォ!」

 バスターソードを振りかぶり、クラウドがクライムハザードを繰り出す。

 だが、『ヴァイス』の纏う殻のほうが、ヤツの渾身の一撃の硬度を上回った。ガギィィンと硬質な音が響き、クラウドの小柄な身体がはじき飛ばされる。

「くぅぅッ! 痛〜ッ!」

「ク、クラウド!」

 慌てて駆け寄ろうとするヴィンセント。

 だが、そんな余裕など与えてもらえるはずもなかった。

 

『ぐぉぉぉ! ハァァ!』

 宝条に操られたヴァイスの巨躯が、重い一撃を放つ。

 ヴィンセントがクラウドを庇い、横っ飛びに吹っ飛ぶ。オレも身をかわし、飛び退いた。だが、驚くべきことに、ヤツの拳は鋼鉄の床をうち破り、地面を隆起させていた。

 ……これで素手のパワーなのである。

 

「クソ……ッ 馬鹿力め!」

 オレは舌打ちした。素手の相手に間合いを詰めるのは得策ではない。しかもオレの剣はかなりの長刀だ。ヴィンセントの武器も飛び道具。

 

『ギヒャヒャヒャッ! どうした、セフィロス? 神羅最強のソルジャーじゃなかったのかね? この父をがっかりさせないでくれ』

「黙れ、化け物! 気色の悪いクソジジイめ!」

 間髪入れず、長刀を撫で返す。だが、ヤツは恐るべき敏捷さでオレの剣先を避けた。

「チッ……!」

『ヒッヒッヒッ! どうした、口だけか? ヴィンセント・ヴァレンタイン!』

「クッ……!」

「怯むな、ヴィンセントッ!」

 

 ガゥンガゥンガゥン!

 

 オレたちは三人で連携し、間断を空けず攻撃を繰り出した。

 だが、オメガを宿した肉体は、そのままでは鋼の剣も受け付けないし、鉛の銃弾をも弾き飛ばすのであった。

 

『ギヒヒヒ! クズどもがッ! 今度はこちらから行くぞ!!ウガァァァ!!』

 疾風を伴う拳が空を裂く。

 

「うあぁぁッ!」

 クラウドが真横に跳ね、刃物のような一撃を避けた。

『イヒヒ! ネズミが!』

「くっそ〜ッ!」

『死ねェェェ!』

 咆吼すると、怒濤のごとき連撃が始まった。

 

 ドゴッ! バキッ! ガッ……ガガガガァァァン!

 

 拳の繰り出す攻撃が、地割れを伴い、オレたちから足場を奪ってゆく。もちろん、オレもヴィンセントも、そしてクラウドでさえも、訓練を受けた戦士だ。巧みに攻撃をかわし、ヤツの隙を見極めるべく気を研ぎすます。

 だが、一見、おおざっぱなに見える攻撃は、付け入る隙が見いだせない。行動それ自体がというより、ヤツの『意識』がこの空間すべてに張り巡らされているような印象だ。

 

 ガッ……!!

 カッ……!

 

「くぅッ!」

 音速の拳を、クラウドが必死にバスターソードで食い止めた。

 それは火花を放ち、閉ざされた空間を白金に染めた。

「う、うわッ!」

 直撃は免れたものの、衝撃でクラウドがはじき飛ばされた。

 ダンとばかりに壁に打ち付けられ、頽れる。

「ク、クラウドッ!」

「……痛〜ッ」

「放っておけ、ヴィンセント! アホチョコボはその程度じゃ死なん!」

「なッ……し、シツレーなヤツッ!」

 

『なかなかしぶといねェ、諸君。そろそろ目の前から消えてくれんかね』

「てめェが消えやがれ、クソ科学者!」

『おお、セフィロス。せっかく逢えたのになぁ。残念なことよ……もう少し、おまえは利口な男だと思っておったが……』

「……貴様よりは、遙かに頭も顔も身体もいいだろーがよ」

『ケッケッケッ……まぁいい。わしの技術をもってすれば、二人目のお前も三人目のお前も作り出すことができるさ。ああ、わざわざそんなことをしなくとも、この肉体と融合し、オメガの力を備えたわしにとっては、おまえなんぞ何の必要もないわ!』

「口を慎め、宝条ッ!」

 激するヴィンセント。宝条の口からオレへの言葉が投げつけられるたびに、憎悪に満ちた眼差しでヤツをにらむ。

 ……よせ、ヴィンセント。おまえにそういうツラは似合わない。

 いつもの……朧気に微笑んでいるような、意志の感じられない顔が気に入っているんだ。ああ、おろおろと困惑した面持ちも捨てがたいがな。

 

『では……さらばだ……ヴィンセント・ヴァレンタイン……セフィロス……それから、ナンバー……ヒヒヒ、最後まで思い出せなんだ』

 ニタリと引きつるように、口角を持ち上げると『ヴァイス』……宝条はすぅっと片手を持ち上げた。

 オレたちのほうにヒタリと焦点を合わせ、口の中でおかしな呪文をつぶやいた。

 

「…………ッ!」

「あ〜、痛って〜ッ! なんつー力だよ!」

「おい、ふたりとも……」

「セフィ?」

「セフィロス……ッ?」

 

「伏せろーッッ!」

 オレは喉が裂けるような声をあげ、渾身の力で跳躍した。