〜 ジェネシス逗留日記 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 ジェネシス
 

 

10:30

 

「ジェネシス、なにか洗い物はないだろうか? あらかたすませたのだが、もしまだあれば……」

 まるで映画のワンシーンのように、籐で編まれたバスケットを抱いて女神が呼びかける。

 ああ、こんな姿はまさしく『女神』といった風情で、神々しすぎて目線を合わせるのがまぶしいくらいだ。

 そんな態度がもろにジェスチャーになって出てしまっていたのか、ソファに転がっているセフィロスが、

「……バカじゃねーのか? 気持ち悪ィんだよ」

 と冷ややかに言ってきた。

「失敬だな、セフィロス。おまえはあの姿を見て何も感じないのか?教会の聖母像と対峙しているような気分だ……」

「アホか、いくら軟弱でもあいつは男だぞ」

「そういう話ではないんだよ。やれやれまったくおまえというヤツは……」

「ジェネシス……?」

 と再び庭先から声を掛けられて、俺は慌てて彼の方へすっ飛んでいった。

「ああ、すまないね、女神。セフィロスがつまらないことをいうから……」

「いや…… あの、遠慮しないでくれたまえ。洗濯など多少量が増えようが大して手間は変わらないのだから」

「ありがとう。でも、今朝方、君の言っていた場所に出したもので全部だから」

「そうか……だが、あの、インナーは? シャツなどはあったと記憶しているが」

「あ、いや……そういったものは……その……」

 ああ、俺としたことが!この馬鹿ジェネシス!こんなところで照れてしまうなんて……

 おまえはスマートさが売りの元ソルジャークラス1stだろう? セフィロスの苦手な対外交渉なども引き受けてきたやり手だったはずではないか。

 だが、女神に使用済み下着を洗濯してもらうなんて……考えただけで平静ではいられそうもない。

 まったくおまえはいくつだ、ジェネシス! 夏休みの中学生か!?

 

「あー、ホレ、察してやれ、ヴィンセント。密かに処理するしかない状況だったんだろーよ」

「おい、セフィロス!」

「あ、あの、そんなことは、気にしなくていいと思うが……あの……す、すまなかった不躾なことを訊ねて」

 そういうと、ヴィンセントはパッと身を翻して行ってしまった。干し物の続きをするつもりなのだろう。

 

 

11:00

 

「セフィロス……おまえね……」

「フハハハハ! 逃げられてやんの。馬鹿じゃねーの、中坊か、テメーは!」

 一緒に神羅に居た頃よりは、多少大人になったと思ったのに……表向きは冷静沈着でクールぶっているが、中身はたいして変わっちゃいないらしい。

 ワガママ意地悪で、いたずら好きの神羅の英雄だ。

「……やれやれ、まったく……相変わらずだね。ところでおまえは何かすることはないのか?まさか一日中寝転がっているだけとか……?」

 俺の呆れた物言いが不快だったのか、セフィロスは心外そうに言い返してきた。

「……あ? オレ様は頼まれてこの家に居てやってんだぞ? それでも気が向きゃ買い物だのなんだのに同行してやってんだ」

 むしろ偉そうに言ってのけるのにさらに呆れたわけだが……

 

 

11:20

 

 ふたりして会話しているところに、女神が戻ってきた。

 手伝いをしていたロッズとカダージュは、それが済むとそのまま出かけてしまったらしい。

「……私はこれから買い物に行ってくるので、ヤズーのことをよろしく頼む。ええと、君たち昼食は何がいい?」

 とヴィンセントが訊ねてきた。

 そんな……女神は朝っぱらから働き通しではないか。

「買い物だったら、俺が行ってくるよ、女神。君は朝から動きっぱなしだ」

「え……あ……いや、普段とそう変わりないと思うのだが……」

 まるで叱られてしまったように口ごもる。

 そうじゃなくて……そうではなくて、俺は少しでも君の負担を減らしてやりたんだ。そのためにここに居座っているのだから。

「女神、欲しいものを簡単にメモしてくれないか。俺とセフィロスで行ってくるから」

「え……いや、そんな迷惑は……」

 女神はオドオドと俺を見つめ、セフィロスの表情を伺う。

「何を言っているのだが。全く迷惑なんかじゃないよ。そのためにこちらにお邪魔しているんだからね。なぁ、セフィロス」

「オレは関係ないだろ」

「彼も喜んで同行してくれるそうだ。俺はイーストエリアにはまだ疎くてね」

「おい、コノヤロー!」

「で、でも……あの……」

 いつまでも困惑顔の女神をせき立ててメモを奪い、セフィロスを引きずって外出したのだった。