〜 もう二度と恋なんてしない 〜
〜 FF7 〜
<3>
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 翌日……今にも泣き出しそうな曇り空の元、俺たちは神羅屋敷に来ていた。

 エントランスには、ホコリが積もり、何かの拍子に割れたのか、ガラスの破片も散らばっている。

 それでも、薄汚く見えないのは、屋敷自体が華美ではなく重厚な作りであり、インテリアもそれに似つかわしいものが設置されているからだろう。

 

 モンスターの巣窟になっていたのは俺たちの想像どおりで、例の宝条研究者の言っていたメモとやらを見つけ出すのすら時間がかかった。

「おう、クラウド。まずは地下の研究室とやらからだろ」

「モンスターを駆除しないと、先に進めそうにないな」

 バレットとシドが、ずんずんと進んでゆく。

 俺としては二度とあの研究室に足を踏み入れたくなどなかった。だが、そうも言っていられない。

 ふたりの言うとおり、宝条の謎かけメモよりも、まずはセフィロスの手がかりからだ。

 

 あのとき彼はおかしくなる寸前まで、この地下室に籠もっていた。馬鹿丁寧に居場所を書き残しているとは思えないが、なんらかの足跡を見出すことはできるかもしれない。

「ねぇ、何も全員でぞろぞろ地下に行く必要はないんじゃない? 暗号読解組と別れたほうが手際がいいわよ」

 ティファが言った。

「シドたちは先に研究室へ行って。私たちも暗号を解いたら探索を手伝うから」

「ああ、そのほうが手っ取り早いな。そんじゃ……あ〜、ユフィ、ナナキ、手伝ってくれよ。モンスターもいるから注意して行くぜ」

「待ってくれ。俺も……」

「だから、クラウドたちは早く謎解き済ませて、さっさと応援に来てって。そんでいいでしょ。じゃあね〜」

 さっさとユフィらが地下に降りていってしまう。

 彼女は、俺の事情を知らないと思うのだが、結果的にフォローしてもらう形になった。

「ほら、クラウド。さっさとしよう」

 ティファに腕を引っ張られ、俺はため息を押し殺しつつ、彼女の後に従った。

 

 

 

        

 

 

『1.酸素が1番多いハコのふた

 2.空のない黒と白のウラ

 3.2階のイスのそばのユカのきしみ・・・

  そこから左5歩、上9歩、左2歩、上6歩』

 

「ええと……右36→左10→右59→右97だな。金庫の番号、これで間違いないか?」

「最後の空白が意地悪いわよね。いかにもあの宝条って感じ」

 ティファが腕組しながらそう言った。

 俺の脳裏にも、やせこけた陰気な研究者の姿が蘇る。

「まぁ、とにかく開けてみようぜ。あ〜、俺はこういう細かい作業はダメだ。クラウド、頼むぜ」

 金庫の前に陣取っていたバレットが巨体を、横に退ける。

 俺も得意ではないのだが、ティファが書きだしたメモを眺めつつ、ゆっくりと数字を合わせていった。

 まもなく、ピンと音がして無事解錠できたことを知る。

「……開けるぞ。ふたりとも戦闘体勢を崩すなよ」

 俺は後ろを振り返った。

 これを仕掛けたのは、あの宝条だ。

 色の悪い唇に、皮肉な笑みを浮かべ、『おまえたちの旅の助けになるだろう』と言っていた。

 ヤツの言葉をそのまま信用するほど、俺は性格の良い人間ではないのだ。

 

 ギィと鈍い音がして、銀色のカギが転がり落ちてきた。

 俺がそれを拾い上げた瞬間、ぶわりと風を起こし、風船のように膨らんだ物体が狭い金庫から飛び出した。

 

 巨大モンスター!

 

 ……案の定だ。

 さすが宝条といおうか、なんというべきか。

 陰気なじいさんは、今頃、どこぞでほくそ笑んで居るのだろうか。

 

 よくもまぁ、あの狭い金庫に詰め込めたと言うほか無い、巨大なモンスターが俺たちの行く手を阻んだ。

 横飛びに衝撃を回避した俺をかばうように、ティファとバレットが前に立つ。

 俺も即座に体勢を立て直し、彼らに並んだ。

 

「ファイア系は避けたほうがいいわね。屋敷に燃え移ったら、私たちもただじゃすまないわ」

 妙に冷静にティファが言った。だが言葉通りだ。

 屋内での戦闘は気を遣う。なんとか屋敷の外に引っ張り出したいところだが、このモンスターの巨躯相手では戦闘場所をこちらの都合で定めることはできそうになかった。