〜 もう二度と恋なんてしない 〜
〜 FF7 〜
<16>
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

「いや、スゲーわ。俺たち出番無しだな」

「そりゃ、てめぇだろ、バレット。同じ銃使いのクセしやがって、すぐに弾切れたぁ情けねェ」

「仕方ねぇだろ。こいつはマシンガンなんだからよ」

「……おまえたち、しゃべってばかりでは食事にはありつけないぞ。火をおこすのを手伝うか、食材を取りに行って来てくれ」

 ヴィンセントに叱られて、ほうほうの態でしょぼくれた林と川のほうへ走って行くシドとバレット。なんだか今回の彼らの役回りは道化のようだ。

 ……いや、道化といえば、まさしく俺のことか……

 

「それにしても、ヴィンセントの銃ってホントにすごいね。後ろ向かないで撃って、背後のモンスター倒しちゃうとか……ねぇ、ティファ?」

「うん……なんか、見直しちゃった。あ、ゴメンね? そういう意味じゃなくて。ほら、男の人なのに、色白だし、お世辞にも筋肉質ってカンジじゃなかったから」

「あ? ホレた?もしかして、ホレちゃった、ティファ?」

「やめてよ、ユフィ! そんなんじゃなくて……私は、ただヴィンセントにお礼が言いたかったの。危ない場所でかばってもらって、おまけに傷の手当てまで……」

「そぉゆうのがきっかけになるんだよ〜」

「アハハハ、でも、ティファはクラウドのことが気になるんでしょ? 幼なじみだものね」

「エアリス! もう、ふたりとも、いいかげんにしなさいよ! ヴィンセントに呆れられちゃうでしょ!」

 女性陣は、なぜかヴィンセントを中心に取り巻き、今日の晩飯の支度だ。

 ヴィンセント本人は、ほとんど会話に加わっていなかったが、女性たちが話しかけるときちんと応対はしていた。

 ……ユフィと俺の口げんかを止めたときから感じていたが、ヴィンセントは非常にフェミニストらしい。女性に対して至極紳士的であり、かつ彼女らの存在を大切にしている。

 『男子たるものかくあるべき』という、上流階級で教育をうけた貴族的な雰囲気があるのだ。

 

 

 

 

 

 

「……ティファ。傷の具合はどうだ? 痛みはないか?」

 サバイバルナイフで、手早く魚をさばきつつ、彼女のほうを見もせずにヴィンセントがささやきかけた。

 別に、彼女の耳元で話しかけているわけではないのだが、彼の物言いは本当に密やかで、『ささやきかけた』という程度の声音なのだ。

「ええ。もう全然大丈夫。手当までしてくれて、ありがとうね、ヴィンセント」

「……たいしたことはしていない。それよりも、しびれた感覚などはないな? ズーの毒は末梢神経を犯し、時を経過して心の臓に至る。甘く見てはいけない」

「うん…… 指はちゃんと動くし、しびれもないわ。ヴィンセントに言われた薬草を使ってちゃんと洗い流したから」

 俺にはくどくどと説教をかますティファも、ヴィンセントには素直だ。もっとも彼の行動にはまるで無駄がなく、こうした問いかけも至極もっともだから苦情の言いようもない。

「ねぇ……あの…… 嫌な話だったら、ゴメンね」

「…………」

 そう話しかけたティファに、ヴィンセントは無言のまま先を促した。

「ヴィンセントって、神羅と関係のある人なの……? 宝条のことも知っていたし、銃の扱いだって玄人……ううん、そんなレベルじゃないし」

「……君のいうとおりだ。もともと私は神羅の軍人で、タークスという組織に属していた」

「そ、そうなんだ……」  

「軽蔑するかね? 君たちはアバランチ……テロリスト集団だそうだな。神羅に背反する者らがその名を名乗ると聞くが」

 抑揚のない声でヴィンセントが言った。火を起こすための薪を抱えたまま、そっと俺は木の陰に身を隠した。

 マナー違反だとは思うが、少しでもヴィンセントに関わる事柄は知りたかったからだ。

「うん……でも、私たちのしたことも……結局神羅と変わらなかった。無関係の人たちを巻き添えにして……死なせてしまった」

「……だから、元タークスのあなたを軽蔑する資格なんて、私にはない。それにアバランチの皆が皆、正しいわけではないように、神羅の人たちの全員が間違っているとも思わない」

「そうか……」

「……それにヴィンセントは、私の知っている神羅の関係者とは違う。そんな気がするの」

「……君はいくつだ、ティファ・ロックハート?」

 男が女性の年を聞くのはタブー……と、巷では言われるが、ヴィンセントが訊ねると、まったくそんな気がしない。ある意味、得なキャラクターだとも思う。

「え? ええと、21才。クラウドと同い年なの」

「ああ、幼なじみと言っていたな」

 ヴィンセントの深い血の色の瞳が、やさしく細められる。

「……君もクラウド・ストライフも年若い。若いからこそ見えるものもあれば、気づかぬ事もある。……どうか、心のままに。おのれの信ずるところを疑わぬよう……」

「ヴィンセント……?」

 ティファはまだ訊ねたいことがあったようだが、シドとバレットが連れ立って戻ってきたのだ。

 彼らの手にした戦利品を調理するのは、ヴィンセントの役目らしかった。