In the middle of summer
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<7>
 
 ヤズー
 

 

 

 

 

 

 

 

皆の食事を終え、家事が一段落する。

 俺は、疲労の見える『セフィロス』……もといヴィンセントを、無理やり自室に追いやり、一眠りするよう、し向けてやった。

 

「じゃ、おやすみ、ヴィンセント」

「だ、だが……買い物にも行かなければ」

 両手を胸のあたりに当てて、困惑する彼に、まかせておけと請け負う俺。

「大丈夫だよ。さっき、メモ書いてもらったし。他にもよさそうなものあったら買ってくるから」

「あ、ああ、でも荷物が多いだろう? 野菜や果物や……とてもヤズーひとりでは……」

「ああ、平気平気。俺けっこう力持ちだし。それに『ヴィンセント』と一緒に行って来るから」

 俺はにっこりと笑ってそう言ってやった。

「え……ええッ? ま、まさか、セフィロスと……」

「うん、そのつもり。あの人も中に引きこもってるより、外に出た方が気が晴れると思うよ」

「そ、それはそうかもしれないが……」

「心配要らないよ。外ではしゃべらせないようにするから。ま、荷物持ち兼、散歩に連れてくような感じ」

「そ、そうか……」

「ふふ、大丈夫。カダージュたちにはちゃんと言ってあるから。ヴィンセントは横になってて。無理して倒れたりしたら、それこそ兄さん、責任感じちゃうと思うよ」

「あ、ああ、そうだな……これは……大切なセフィロスの身体なのだし」

「俺が言ってるのは中身の話。ま、いいや。俺たち行って来るから。きちんと休んでいてね」

 俺はそう言い置くと、セフィロスに声をかける。

 実は出かけるなら付き合うと言い出したのは『ヴィンセント』の中の、セフィロスのほうだなのだ。やはり多少なりともストレスはたまっているのだろう。

 

 だらしなく寝転がっている『ヴィンセント』に声をかけ、玄関で靴に履き替えていると、すぐに彼がやって来た。

「おい、おまえ。……ヴィンセントの靴はどれだ? ったく細っこい足だな」

「ふふふ、ええと、ちょっと待ってね。サンダルのほうがいい?」

「ああ、暑苦しくないヤツにしろ」

 セフィロスは不機嫌にそう言った。

「じゃ、はい」

「…………」

 無言のまま、外履きに履き替えると、『ヴィンセント』はズカズカと外に出ていった。俺が後を追う形となる。

 

「いってらっしゃ〜い、ヤズー、ヴィンセン……セフィロス」

 最後の名前だけは、不愉快そうにぼそりとつぶやくカダージュ。相手にしなければいいのに、セフィロスが応戦する。

「おい、役立たずのガキ! ちゃんと家を守ってろよ! そこにはオレの身体があるんだからなッ!」

「ふーんだ! 僕、ヴィンセントのこと、守るんだもん。セフィロスの身体だからじゃないもんッ!」

「なんだとッ? 思念体の分際でオレに口答えをするつもりか!」

「ほらほら、よしなさいよ、セフィロス。子ども相手に怒ってどうするの。じゃ、カダ、ヴィンセントのこと、よろしく頼むぞ」

 俺がそういうと、カダージュは「うん!」と元気よく頷くのであった。

 

 

「……おい、イロケムシ」

 となりを歩く『ヴィンセント』が俺に呼びかけた。

「ちょっ……なにそれ? もしかして俺のこと?」

「他に誰がいる、イロケムシ」

「いやだなぁ……俺って色気あるの?」

「自覚がないのか、バカめが。おまえの弟と比べてみろ、エロエロだ」

 ヴィン……いやセフィロスはフンと鼻を鳴らせてそう言った。

「エロエ……下品だなぁ、『ヴィンセント』の顔で言わないでよ、そういうこと。……カダはね、年齢よりも子どもっぽいんだよ。仕方ないの、あの子は」

「ふん」

「それより、外出して大丈夫?」

 同じ目線にある『ヴィンセント』の顔を見て訊ねる。

 

「何がだ」

「食べ過ぎで気分悪くなったでしょ」

「嫌なことを思いださせるな。まったく軟弱な身体だ。自分の身体なら、あの程度の分量など朝飯前だ」

「……まさしくその朝飯だったわけだけどね」

 俺は、吐息混じりにそう言った。

 

「さてと、そろそろマーケットにつくね。『ヴィンセント』は顔が売れてるからね。今日は気分が悪いって雰囲気で静かにしてて」

「チッ……わかっている」

「じゃ、行こう」

 俺はそう前置きすると、なるべく手早く買い物を済ませていった。やはり家においてきた『セフィロス』の姿のヴィンセントが心配だし、兄さんも仕事で不在だ。

 

 案の定、『ヴィンセント』が店を回ると、彼のファンが話しかけてくる。中には強気な女性もいて、ストレートに好意を示してくるのだ。

 そのたびに、『ヴィンセント』……もとい、セフィロスは、「あー」だの「うー」だの適当にごまかして、俺の方に逃げてくる。

 その様子が、なんだかちょっとばかり可愛らしくて、見ていてとても面白い。

 俺が彼女たちに、「彼はちょっと風邪気味でね、喉をやられてて声が出にくいんだ」と説明してやると、ひどく心配して、おすすめの売薬や、あろうことか風邪によいという果物や栄養食品など、いろいろと持ってきてくれたりする。

 ほうほうのていで、人々の襲撃を免れると、俺たちは予定以上の大荷物を持って帰途についた。