ニャンニャン。
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
Interval 〜02〜
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

 

 唾液を絡めた指先で、周囲をゆっくり解してゆく。  

 この場所へ連れてきてから、何度この行為をくり返したか覚えていない。だが、彼のその部分は相変わらず狭く、いつまでたっても開かれることに慣れてくれない。結果、苦痛を与え続けてしまうのだ。

 ならば、少しでもそれを軽減してやるのは、俺の役目だ。

                                                

 直接、舌先で刺激し、入り口を広げてやると、くぐもった嗚咽が伏せた口元からこぼれ出た。

 ……自分の下腹が痛くなってくる。さきほどヴィンセントにしてもらったときにはなんとか堪えたが、今はもう限界に来ている。

 本当はもう少し時間をかけてやりたいところだったが、自制が聞きそうになかった。

 

「……そのまま……力抜いてて……」

 ともすれば、ひどくせわしない息をついてしまいそうなおのれを叱咤する。

 一度、達した彼の身体なら、それほどひどい痛みを与えず、繋がることができるだろう。  

 先端を宛い、ゆっくりゆっくりと腰を進めてゆく。

 途中で、何度か身を強ばらせるが、その都度、進入を止めて胸元を撫で、背中に接吻し、怯える体を宥めてやる。

「……痛ッ……」

「力……入れないで……痛いの嫌だろ」

「あ……ああッ……ク、クラウド……ッ」

「ん……ゴメンね、やっぱ、顔見れないと……不安だよね」

 覆い被さった、首筋に、肩口にキスを繰り返し、そっと語りかける。

 

「……んんッ……あッ……ああッ……」

 パタパタパタと、また涙がシーツに落ちた。

 ……俺も受け身の経験はなきにしもあらずだが、あれは子どもの頃だったし、そのときでさえ、ヴィンセントほど泣きはしなかった。

 

 大分前だが、本人に尋ねてみたことがある。

 それほどツライのか……と。

 彼はひどく恥ずかしげに、困惑した様子で、「それだけではない」と答えていた。感じたり、切なくなったり、さまざまな想いがわき起こると、それに感応するように涙がこぼれるのだと。 

 

 俺の動きに合わせて、途切れ途切れの喘ぎが漏れる。

 ヴィンセントは、この体勢が本当に嫌みたいだが、実は、俺などはけっこう好きだったりするのだ。

 後ろから繋がるこの形だと、俺の視点から見たヴィンセントの姿が、例えようもなくエロチックでなまめかしく、征服欲を満たしてくれる。またこのまま抱き起こせば、さらに深く入り込める。後ろ抱きだから両手は自由だし、存分に愛してやることができるのだ。

 

 俺は今すぐにでも達してしまいそうな、彼を抱きしめ、さきほどの考えどおり後ろ抱きのまま、一緒に身を起こした。

「……ぁああッ!」

 ヴィンセントがするどい悲鳴を上げる。

 

 座位の形になり、これまで以上に深く繋がったのだろう。

 その刺激が中に入ったままの俺にも伝わってくる。

 

 ……この格好なら、後ろから顔が見られる。

 手を当てると、薄い胸が、ゼィゼィと荒い呼吸をくり返していた。

 案の定、綺麗な顔には、幾筋も涙の跡が残っている。

「……はッ……はぁッ……はぁッ……ク、クラウド……苦し……」

「ん……すぐイカせてあげる」

 直接的な物言いが嫌なのだろう。すぐにヴィンセントは俯いてしまう。俺は少し強い力で、背後から彼の顎を取り、上向かせた。

「……ダメ、顔、見せて」

「……やっ……ク、クラ……」

 

「みゅん!みゅん!」

 小首を傾げ、俺たちを眺めていた『ヴィン』がぴょんとベッドの上に飛び乗ってきた。ずっと構われずじまいだったから、退屈していたらしい。

「こら、いいトコなのに、邪魔すんな」

「みゅん!みゅん!」

「いいか、おまえ。ヴィンセントは俺のだからな! いくらちっこくて可愛がられてても、ヴィンセントの一番は俺だから!」

「ク、クラウド……」

 荒い吐息の中、俺をたしなめるように呼ぶヴィンセント。

「みゅ〜ん、みゅん、みゅんッ!」

「遊んでるんじゃないんだぞ、チビ!」

 セフィロスを真似たわけじゃなかったが、そんな言い方をしてみせる。だが、『ヴィン』によって、ほんの少し気を削がれたせいで、俺にわずかな余裕ができた。

 もっとも、ずっと中に入れられたままのヴィンセントは、それどころじゃなかったろうが。

 

「……んッ……あッ……クラ……はや……く」

 焦れたようにつぶやく姿が、眩暈がするほど色っぽい。これで無自覚だというのだから、ある意味、タチが悪いとさえいえるだろう。

「だってさ、こいつが……ああ、そうだ」

 俺は自分の思いつきに、ひどく興奮した。今までだったら、考えもつかなかったコト……

 ……このとき、やはり俺は調子に乗っていたのだろう。身体も興奮していたし、いつもよりも激しい絶頂感を味わいたかった。

 

 座位の体勢だと、深く繋がることはできても、動きにくいのが難点だ。ヴィンセントは自分から進んで動けるキャラクターではない。

 でも、これなら……  

 

 俺はサイトボードに置きっぱなしのグラスを片手で引き寄せた。

 湯上がりにヴィンセントが用意しておいてくれた、『いちごミルク』だ。

 

「みゅん!みゅん!みゅんッ!」

 たちまち反応する『ヴィン』。俺も好きだが、彼女の大好物でもある。

「……? ク、クラウド……なに……」

「じっとしてて、ヴィンセント……」

 不安げに身じろぎするヴィンセントを、片手で押さえ、もう一方の手を、口広のグラスにつっこむ。溶け残った氷とミルクが混じり合ったピンク色の液体に、押しつけるように手の平を浸した。

 しずくをこぼさないよう、そっと手を引き上げる。

 

「みゃんッ、みゃんッ、みゃん!」

 『ヴィン』が遠慮なく身体を重ねたままの俺たちに近づいてきた。吃驚して困惑するヴィンセント。

「ク、クラウド……?」

「ごめんね、ちょっと冷たいかも」

 耳元でそう謝ってから、濡らした片手で、吐き出す寸前の彼自身を押し包んだ。

 

「……あぁッ! ……やッ……なに……を……ク、クラ……」

「おいで、『ヴィン』」

 俺は彼女を呼んだ。びくっと背を震わせるヴィンセント。

「クラウド……ッ! や……ッ! よせ……ッ!」

「みゃう、みゃう!」

 無邪気な彼女は、なんのためらいもなく側に近寄ってくる。大好きないちごミルクの香りを追うように、ひくひくと小さな鼻をうごめかせながら。

  

「……もうちょっと、ガマンしてね。彼女にミルク、舐めさせてあげて」

 そういうと、少しかわいそうとは思ったが、固くそそり立ったソレの、根の部分を押さえてつけてしまう。

 苦しげに眉を寄せるヴィンセント。それでも、必死に『ヴィン』を追い払おうと片手を伸ばすのだ。

 

「……やめッ……『ヴィン』! ……頼むから……むこうへ」

「邪魔しないであげて、ヴィンセント」

 空いた方の手で、彼の両手をまとめて、後ろ手に押さえ付ける。密着した身体の間に挟んでしまうと、ヴィンセントは完全に身動き取れなくなってしまった。

 まったく状況のわかっていない彼女は、ヴィンセントが阻止しなくなったことをいいことに、ぴょんぴょんと、足の上を飛び越え、いちごミルクでびしょぬれのソコへやってきた。

「……ッ」

 息を詰めるヴィンセント。

 

 紅い可愛らしい舌が覗く。

「みゃん!」

 と一鳴きすると、『ヴィン』は、ザラついた猫の舌で、ペロリとそこを舐めた。

「……いッ……あ…ッ………あああッ!」

「……っと」

 大きく仰け反り、声を上げた彼の口を、俺は左手で塞いだ。

 それこそ居間にまで聞こえてしまいそうな悲鳴だ。恥じらい深く、大人しいヴィンセントの口から、こんな声を聞くのは初めてだったと思う。

 

 だが、『ヴィン』にとっては、どうでもいいことなのだろう。大声に少しばかり驚いたような様子を見せはしたが、変わらずに側に寄ってきて、同じ部分を舐め続けた。

 ペチャペチャと濡れた音が聞こえる。

 

「あッ……あッ……あッ……も、もう……や、やめ……」

 言葉にならない訴えが、ひどく蠱惑的に耳に入ってくる。

 刺激を与えられるたびに、彼の細い腰が浮き上がっては沈み、沈んではまた飛び跳ねる。

 腹の上で踊るヴィンセントに、内にもぐったままの俺自身はいやというほど擦りつけられ、彼より先に限界を迎えてしまいそうであった。

「……ん……スゴ……イみたい。ちょっと、こっちが苦しいよ……ヴィンセント」

 耳元でそうささやいても、それどころじゃないのだろう。

「んッ……んんッ……んぐッ!」

 口を塞がれたヴィンセントのくぐもった悲鳴。激しく首を振り限界を訴える。

 

「もぅ……ダメ? ……ヴィンセント」

 細い項が、ガクンガクンと前に揺れる。                                      

「……ん……出しちゃいな……俺も……もう、限界……ッ」

 歯を食いしばりつつ、そう答えた。

「だ……めだ……ヴィ……ヴィンに……」

「……ちょっと驚かせちゃうかもね」

「ク、クラウド……やめ……て……く……れ」 

 彼の口を塞いでいた左手が、こぼれ落ちてくる汗と涙と涎でびしょびしょになっている。

 

 両腕を拘束され、俺の指と猫の舌で昇りつめるヴィンセント……

 このあまりにも倒錯的な構図に、俺は今までにない興奮を感じていた。

 

 ヴィンセントが達するとほぼ同時に、俺にも限界が訪れた。 

 カッと目の前が白くなるような、浮遊感……久々の濃厚な交わりは、目のくらむような快感を伴い……幕を閉じた。