Radiant Garden
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<3>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「好き勝手なわがまま男だとは知っていたけど、ここまで頓珍漢だとはねェ」

 食後のデザートの用意をしつつ、ズケズケとイロケムシが言う。

「ってゆーかさ、セフィ。空間のよじれって言っても、必ずしもホロウバスティオンに繋がってるのかもわかんないんだよ? たまたま俺のときはそうだったってだけでさ」

 フルーツの後のアップルパイにかじりつきながら、クラウドが眉を寄せた。

「可能性は高いだろう。それにホロウバスティオンでなければないで、新たな世界があるのかもしれん」

「新たな世界っつったって、楽しい場所じゃなかったらどうすんの〜? とても人が生きていられないようなところだったら?」

「常人ならばそうかもしれんが、行くのはこのオレだ。どんなところであろうと問題ない」

「ああ、そう。確かにね、あなたはそこらの野生獣よりも強いよね。でもさ、帰ってくるときはどうするつもり? そう簡単に空間のよじれが発生するかしら?」

 そう言い返したのはヤズーだ。クラウドの言葉を引き取った形でそのまま続ける。

「ホロウバスティオンとやらに無事到着できれば、大きなトラブルにはならないかもしれないけど、それも希望的観測でしょ。何一つわかっていない状況で『ゆがみ』に飛び込もうなんて、本当に無謀!」

「るっせェな! ここで手ェこまねいて眺めてても、その状態は変わらないだろ。実際に体験すれば、幾ばくかの疑問が一挙に解決するかもしれん」

 これは本当にそう考えているのだ。なんせ、こっち側から向こうへ行ったのは、チョコボガキのひとり。

 できる男なら、何かしら調査してくるもんだが、クラウドはそんなことにはまったく頭が回らないようであった。

『ホロウバスティオンは、コスタ・デル・ソルより寒いよ〜』

 とか、

『レオンのゴハン美味しかった!』

『あっちのセフィロスは、人の話聞かないよ』

 などと、クソどうでもいいことばかり報告しやがるのだ。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……セフィロス……」

 おろおろと言葉を挟んで来たのはヴィンセントであった。いよいよラスボスの登場か。見た目はもっとも軟弱なのに、精神攻撃のレベルは高い。

「……なんだ!」

 苛立ちを隠さず、乱暴に返事をした。

「……その……どうして……そんな危険を冒してまで、別世界への興味を抱くのだ……?」

「あぁ?」

「そ、それは……私だって、もう一度、あの世界の子たちに会いたいと思う。レオンや『セフィロス』はどうしているのかと考えない日のほうが少ないくらいだ。だが、ヤズーの言うように、あまりにも不確定要素が多すぎる。万一、戻れなくなるようなことがあったら……」

「オレはちゃんと帰ってくる」

「そ、それは……君の意志は信じているが、突発的な事故や……」

 ぐずぐずと、今にもベソを掻きそうな面持ちでヴィンセントがつぶやく。

 

「あぁっ! ヴィンセント泣かせんな! ただでさえ、セフィは毎日好き勝手やってんだろ。これ以上心配掛けるようなことすんなよ!」

 クラウドのガキがぎゃんぎゃんと吠える。

「これまで何度もしたくもない冒険してきたじゃない。何も無理やり、ホロウバスティオンに行こうとしなくても、勝手にいけちゃう日がくるんじゃないのォ」

 茶器の準備をしながら、どうでもよさそうにイロケムシが言った。

 

 ……ラスボスのヴィンセントは、泣き落としという必殺技の他に、究極奥義『家人召喚』という技があるのだ。

 これは、家の人間誰しもが、ヴィンセントの味方をするというスピリット攻撃…… 敵方に回った者としては鬱陶しいことこの上ない技なのであった。

 

「あぁ、もう、わかったわかった! だからグズグズ泣くのはやめろ!」

 ヴィンセントを叱りつけると、他の連中を見回して言葉を続ける。

「……ったくテメェら、それでも男か!? まだ見ぬ世界があるのなら、何を置いても知りたい、見てみたいとは思わんのか? たとえ危険に遭遇しようと、むしろそれを楽しみ、打ち破って生還するのが真の漢だろう! 軟弱者どもめが!」

「安全ならねェ。お風呂入れないようなところは絶対イヤだし」

 と、イロケムシ。

「だって、帰り方もわからないのに、ホイホイ行くわけにはいかないじゃん。っつーか、セフィだって、空間のよじれのコトわかんないんでしょ? 感じ取れるのって、あっちの『セフィロス』だけなんだから。それじゃあ、今の時点じゃどうしようもないよ」

 チョコボ小僧が、クソ偉そうに宣った。

 ヴィンセントは、上目がちにオレを見て、ハンカチをいじり回している。

 

 そんな中、一番末のガキが、妙に瞳をキラキラさせて、声を上げた。

「僕……行きたいなァ! レオンたちの世界にも全然知らないところにも!」

 オレも含め、皆一斉にカダージュを見る。ヤズーの野郎が慌てているのが気持ちいい。

「僕、行きたい! 面白いことがいっぱいあるかも知れない!」

 そう言ったチビガキは、喜色満面という面持ちであった。