Radiant Garden
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 セフィロス
 

 

 

 

「ヤズー、どうしたんだろ。いつもはあんなじゃないのに」

 カダージュがつぶやいた。いかに情操面が幼いとはいっても、さすがに思念体の兄弟であり、また恋人でもあるイロケムシの態度には何らかの引っかかりがあるのだろう。

「僕も、もう部屋帰るね」

 といって、ヤズーの後を追うように、離れに戻っていった。

 

「ったく、カダのことになると、ヤズーはホント、マジになるよね〜」

 鼻白んだように、クラウドがつぶやいた。

 居間の空気は、いささか気まずい風に感じられる。もっともオレにとってはどうということはないが、ヴィンセントがそわそわと落ち着かないのが気にかかる。

 当然、ヤツが心配しているのはヤズーのことだ。

 

 三兄弟の中では、誰よりも飄々としているふうで、もっとも人の機微に長けた男だ。

 DGソルジャーの一件でも、不思議な童話の中の世界ででも、淡々としていて、ごくマイペースで切り抜けてきた。

 だが、末のガキのこととなると、目の色が変わる。

 これまでカダージュは、一番下ということもあり、危険な場面に遭遇することは少なかった。……というか、ヤズーの野郎が、そのように采配してきたのだろう。

 だが、今回ばかりは勝手が異なる。

 なんせ、チビガキのほうから、外の世界に行きたいと言い出しているのだから。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス……」

 不意に声を掛けられて、オレは思考の淵から気をとりなおした。

 ヴィンセントがおどおどとこちらを見ている。

「なんだ、説教なら聞かねーぞ」

「そ、そんな……説教だなんて……そんなつもりはないんだ。ただ、ヤズーのことが……」

「フン、あの男にしてはめずらしくも取り乱していたな。いい気味だ」

 テーブルに着いたままのクラウドが、『性格ワル〜』などと、つぶやいているが、いちいち気になどならない。

 

「セフィロス……その、君はヤズーのことを理解してやっているのか? その……あの人の資質というものを」

「んだ、そりゃ? あいつは一応オレの思念体なんだろ。だったら……」

「そういうことではなくて…… いや、確かに、彼ら三人でいた頃のことは、我々などより、君のほうが理解が深かったろうが……」

 そこまで言って、おもむろにヴィンセントが立ち上がる。

 クラウドの前の皿を片付け、

「そろそろ遅いから……クラウドはお風呂に入ってきなさい。湯が張ってあるから冷めてしまう」

 とおだやかに促した。

 ……なるほど、『おまえは向こうにすっこんでろ』というよりも、こんなふうに言ってやれば、聞きたがりのガキもすんなり席を外すのか。

「うん、んじゃ、お風呂入ってくる! あ、最後のアップルパイ俺のね! 明日の朝食べるから、ヴィンセント、とっておいて!」

「また、焼いてあげるから…… 湯船に入ったら、肩まで浸かってきちんと100数えるのだぞ」

「わかってる、わかってる!」

 クラウドは時計を見上げて、残った紅茶を一気に飲み干すと、タカタカと足早に居間を出て行った。

 

「上手いモンだな」

 ふたりきりになった居間で、そう声を掛けると、ヴィンセントは伏し目がちなまま、

「クラウドは素直な子だから……」

 と独り言のようにつぶやいた。