Radiant Garden
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<7>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「そいつは仕方ねェこったろ」

 はぁと大きくため息を吐き、オレはそう応えた。

「ヤズーがもともとそういう資質が高いのも、末のガキが外に出たがるのも、どうしようもないことだ」

「セフィロス……」

「これから先、あいつらが一緒に居たいなら、イロケムシが乗り越えなきゃならないことだ。未知の世界に飛び出そうとするガキに、足枷をつけようとするなら、いつかは切り捨てられるだけだ」

 ビクンとヴィンセントが身を震わせた。

「言っただろう。カダージュはもっとも潜在能力の高いガキだ。これから、何度でも、『やりたいこと』を見つけ出し、挑んで行くんだろう。そのたびに、危険だから、心配だからと、真綿で包むように保護されたら、いいかげんウザッたくもなる」

 オレだったら、まずそう思う。

 おそらくオレよりも年若いチビガキにしてみれば、より強くそう感じるだろう。

 

 言いたい放題にいってのけてから、大きく息を吐き出しヴィンセントに目線を戻した。カタカタという茶器の音が耳障りでもあったからだ。

 だが、それはヤツの指先がひどく震えていて、片付けもままならないほど、身体を硬直させていたからだった。

 

 

 

 

 

 

「おい……どうした、ヴィンセント?」

 さすがにそう声を掛ける。

「き、き、君も……か?」

 掠れた言葉は、ただでさえ小さな声で、ひどく聞き取りにくかった。

「あ? 何を言ってる」

「き、き、君も……そうなのか?」

「だから、何がだ?」

「し、心配されたり……危険を回避するように促されるのは……ひどく鬱陶しいと……」

 ぼそぼそとつぶやく。よほど注意深く聞かねば、何を言っているのかさえ、わからないような声音だ。

「そ、その……私は鬱陶しいのだろうか…… 君の心配をするのは、め、迷惑……なのだろうか…… だったら、わ、私は……私は……」

 ゲッと声が出そうになった。

 どうして、こいつはこうもマイナス方向へ引っ張って行くのだ? 今はカダージュとイロケムシの話をしているのであって、ヴィンセントのことは一言も口にしていないのに!

 

「お、おい、おまえ……泣くな。どうして、物事をそう悪い方へ考えるんだ」

「だ、だが……君の負担になっているなどとは……少しも考えていなくて。私は君がどこかへ行ってしまうのは……それだけは……もう、もう嫌なのだ……! せっかく一緒に居られると思ったのに……ずっと君と……い、いっしょに……」

「わかってる、わかってる! オレはどこにも行かん。ただ、出かけることくらい、フツーにあるだろ? それでも必ずここに帰ってくる。おまえとは前に約束したからな。それを違えたりはしない」

 オレは慌ててヴィンセントをなだめにかかった。こいつを泣かせると、本当に後が面倒になる。恋人のクラウドの心配だけしてりゃいいものを。

 なぜかヴィンセントは、このオレとずっと一緒に居たいと言う。離ればなれになることをひどく怖れるのだ。

「……こんなことで男が泣くな。ったく、おまえは本当に……」

 細い肩を抱いて前髪に口づける。何度か繰り返すと、ようやくえずきが治まってきた。

 ……おまえは本当にオレの何なんだ?

 こんなに手のかかる……だが、放っておけないヤツは他にいないのだ……

 

 ヴィンセントに聞こえないよう溜め息を吐き、それでもやはり未知なる世界への好奇心の疼きは止むことはなさそうであった。