Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<13>
 
 ジェネシス
 

 

「……なんだ、ガキか……驚かすな」

 口汚くセフィロスが吐き出した。

 青年……いや、よく見れば長身のせいでそう感じただけで、綺麗に整った顔立ちは、まだ幼い。ちょうど少年から青年へ過渡期といったところか。

「よせよ、セフィロス。……すまない、君。 たった今、見知らぬ輩に襲われたところでね」

 怖がられる前にフォローを入れたが、彼にはそんな気遣いは無用らしかった。怯える様子もなく、落ち着いている。

「ああ、見ていた。迷ったが……手出しする暇もなかったよ。かえって足手まといになりそうだったから」

 穏やかな声は、思っていたよりやや高めで、やはり少年といったほうが似つかわしいのだと感じさせた。

「フン、ガキのわりには物わかりがいいじゃねーか。ちょうどよかった。いろいろ聞きたいことがある」

「そ、その前に教えてくれ。あなたは『死の大天使』じゃないのか……?」

 急いたように少年が訊ね返した。

 どうも、『ホロウバスティオンのセフィロス』も、知る人ぞ知る、かなりの有名人らしい。

「残念ながら彼は違うよ、美少年。ああ、まずお互い名乗らないかい? 話をしずらくてかなわない」

「あ、ああ、そうだな。すまない、つい慌ててしまって。俺はリクだ、よろしく」

 素直に手を差し出す。なかなかしつけの行き届いた、礼儀正しい少年らしい。

「ジェネシスだ。こちらこそ。……おい、ほら、おまえも!」

「チッ……うっせーな。フン、セフィロスだ」

「セフィロス……『セフィロス』! やはり死の大天使と同じ名だ……!」

 リクが息を詰めた。

 

 

 

 

 

 

「おい、ガキ。こっちにも『セフィロス』がいることはオレも知ってる。だが、そいつとオレ様は別人だ。あんな軟弱野郎と一緒にするな」

 虚を突かれたように、息を飲むが、リクはすぐに気を取り直して聞き返した。

「あなたはあまりにも死の大天使と似すぎている。いったい何者なんだ?」

「んなこたァ、テメーの知ったこっちゃ……」

「あのね、俺たちは少なくとも、この街の敵ではないよ。ここは不思議な場所らしくてね。いろいろな世界と空間が繋がるそうじゃないか。いきなり見知らぬ土地に飛ばされて、困惑していたところなんだ」

 セフィロスを横にのけて、彼との会話を引き取った。

 この子……リクといったか。

 頭の回転の速そうな少年だ。それに『死の大天使』を知っていることから、それなりにこの世界の不思議を解する立場にあるのだろう。

 ならば、なるべく情報を引き出したい。

「あ、ああ……また、亀裂が生じたんだな。城の周辺は以前から、よくあったことなんだが……最近は特にひどい」

 柳眉と言って良いだろう細い眉がゆがめられ、白いおもてに苦渋の色が浮かぶ。

 リクという少年は、『空間のよじれ』についても、知っているらしい。

 

「ねぇ、リクくん。出来ればちょっと落ち着いた場所に行かないかい? 立ち話で話すようなことでもないしね」

「あ、ああ、すまない、ジェネシスさん。異世界から飛ばされてきたんだったな。座って話の出来る場所に行こう。それから、俺のことはリクでいい。年長者に改まって呼ばれるのに慣れていない」

 キリッとした面持ちで、彼はそう言った。

「わかったよ、リク。俺たちのことも呼び捨てにしてくれるかな。いろいろと助けてもらうことなりそうだしね」

 セフィロスがケッと悪態を吐くが、別に文句があるふうでもなかった。それより、俺としては、この子をガキ呼ばわりするのをやめてほしいのだが。

 そんなことを考えていると、リクはさっさときびすを返した。着いてこいというのだろう。

 だが、そのとき、くぐもった声が聞こえた。

 

『むしろ助けて欲しいのは……』

 ささやくような独り言はすべて聞こえたわけではなかったが、この少年もなにやら抱え込んでいることがあるらしかった。