Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<14>
 
 ジェネシス
 

 

「ねぇ、リク。この街はずいぶんと雰囲気のあるところだね。何となく童話の世界に混じり込んだ気分だ」

 無言のまま、ざくざくと足を進める彼に、後ろから声を掛けた。

「ああ……そうだな。あなた方がどこから来たのかは知らないが」

「俺たちの住んでいる場所はコスタ・デル・ソルというところだ。常夏の島でね。四季がほとんどないんだ。一年中泳いでいる人がいるくらいだから」

「へぇ……」

 そう言って大きく目を見開いた顔は、また少し幼く見えた。青みがかった少し長目の銀の髪と、同じ色合いの瞳は、ひどく神秘的でまさしく『美少年』というのはこういう子のことを言うのだと感心する。

 セフィロスが興味を示すかと思ったが、どうやら守備範囲外であるらしい。意外な気もしたが、リクを見ていればなるほどとも思う。

 リクはいわゆる『可愛い子』とは趣が異なるのだ。おそらく年の頃は、16、17かと思うが、チョコボっ子のその頃とは大分雰囲気が違う。

 何より物静かで、怜悧なタイプである。美しい細工の鞘に収まった、研ぎ澄まされたナイフのようというか…… 少年でありながら、否応なしに大人にならざるを得なかった経験があるのかもしれない。

 もっとも、彼の過去を訊ねるには、まだまだ浅い付合いだ。いきなりそんなことを聞くわけにはいかない。

 

「俺の生まれた場所も島なんだ。本当に小さな島で……子どもの頃は毎日退屈で、一日も早く外の世界へ出たいと……そればかり考えていた」

「ああ、男の子はそうだよね。そこがどれほど素敵な場所でも、外に行きたいと思うものさ」

「ああ。でも、今は……ひどく懐かしく感じる。故郷を捨てたことに後悔はないが、あそこは温かい場所だった」

 低くつぶやくと、彼の形の良い手が、そっと胸元に触れた。意識してのことではないのだろう。彼の胸の中に、『故郷』と呼ばう島の思い出が仕舞ってあるのだ。そこには大切な人の姿もあるのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

「おい、まだ着かねーのかよ。腹減った」

 セフィロスが不平そうに文句を言った。

 俺と彼の、こんな会話の最中でだ!……少しは空気を読めないのか。いや、読むつもりもないのだろうか……

「おい、おまえなぁ。もう少し何かあるだろ? ったく、雰囲気がぶちこわしだ」

「雰囲気もクソもただの世間話だろ」

 どうでもよさそうに吐き捨ててから、リクに向かって言葉を続ける。

「ったく、おまえもおまえだ、クソガキ。いいとこ十代後半ってとこだろ。いいか?昔を懐かしむよりも、目の前を見ろ。男は常に先のことだけ考えておけ」

「あ……ああ」

 面食らった様子で、リクがたどたどしく頷く。

「昔のことなんざ、歯抜けのジジィになってから思い出しゃいーんだよ。妙に悟りきったツラしやがって」

「おい、セフィロス!」

 叱りつけた俺を、リクが止めた。

 まったく……俺としては、セフィロスにこそ、過去を振り返ってもらって、いろいろと反省してもらいたいのだがね。

 

「ごめんよ、リク。こいつは本当に言葉が悪くて」

「いや、いいんだ、ジェネシス。彼の言うとおりだ…… 今……やらなきゃならないことをやるよ。そうしなきゃいけないってわかっていたはずなのに…… その……ありがとう、セフィロス」

 ぶしつけなセリフに、彼はなぜか礼を言った。

 抱え込んでいる『何か』に触れたのだろうか。セフィロスの言葉は含みがないせいか、ストレートに心に響くことがあるのだ。

 

「変なガキだな。それよりメシ! 朝、食ってから何も口にしてねぇんだぞ!」

 朝食の後で、空間移動したのだから、まだ真っ昼間なのだ。そこまで騒ぎ立てるほど空腹だとも思えないのだが。

「ああ、わかってるよ。ほらもうすぐだ。さっき客を連れていくと連絡を入れておいたから」

「君の家かい?」

 気になっていたことを訊ねる。

「いや、ここは知人の家だ。レオンという、この国の自衛軍のようなものを指揮している人物だ」

 リクは、少しだけ誇らしげにそう言った。