Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<15>
 
 ジェネシス
 

 

到着したのは、繁華街を抜けたところにある、こじんまりとした家であった。

 実際には、それほどでもないのだろうが、家の大きさに反して敷地が広いらしい。簡単な木の柵で囲われたそこは、森の入り口の一軒家といった風情だ。

 入り口付近には、この時期の花なのか、シロツメクサが群生しており、なんともかわいらしい雰囲気だ。

 

「着いた。ここだ」

 リクはそう言うと、勝手知ったるといった調子で、玄関のドアノッカーを軽く叩いた。

「待っていた。入ってくれ」

 中から出て来たのは、精悍な顔立ちの……それでも十分美しいといえる青年だった。上背は、俺とセフィロスには敵わないものの、ヴィンセントと同じくらいはありそうだ。

 黙って立っていれば、年頃の女性が放っておかなそうだが、額のキズがすべてを裏切っていた。一見、強面に見えるのもそのせいだろう。

「よぉ、久しぶりだな、カタブツ。腹が減った」

 もはや誰のセリフか言わずともわかるだろう。

「アンタは……相変わらずだな、セフィロス。それにそちらは……ジェネシスだな。リクから話は聞いた。入ってくれ」

 先導するつもりなのだろう。さっさと前を歩く。足の運びがまるきり軍人だ。言葉の少なさも、いっそうそう感じさせる。

 

「昼はまだだと言っていたな。そのまま席に着いてくれ。リク、おまえも食っていけ」

 おそらく連絡を受けてすぐに支度したのだろう。木造の丸テーブルには、スープ皿やサラダボウルが乗っており、焼きたてのパンにはナプキンが掛けられていた。

 あいさつをしようと口を開き掛けたが、彼は疾風のごとき勢いで、奥の調理場とおぼしき場所へ引っ込んでしまった。

 すぐさまワゴンを引っ張って、ダイニングに戻ってくる。二段ワゴンには、人数分のラザニアと白身魚のカルパッチョなどが乗っている。大きな鍋はスープだろうか。

 セフィロスはごく当然のように席に着くが、いささかとまどいを覚える展開だ。

 そんな俺に気付いたのだろう。リクがすかさず青年からワゴンを奪う。

「レオン、後は俺がやる。」

 セフィロスはともかく、あいさつをするタイミングが計れずに困惑していた俺の気持ちを察知したのだろう。まったく明敏な少年だと思う。

「俺は道すがら、話を聞かせてもらったけど、レオンはまともに挨拶すらしていないだろう」

 リクの言葉に、初めてレオンは、ああ、という感じで気がついたようだ。

 

 

 

 

 

 

「やぁ、失敬。居間にまで入り込んだというのに、まともに挨拶さえできなくて」

 軽い嫌みを含んだつもりであったが、レオンという青年はまるで意に介していないようだった。

「いや、問題ない。……ただ、リクからの連絡がついさっきだったので、あまり準備が出来ていなかっただけだ」

 理屈をただしてそう応える。

 こちらに対して敵意がないのはわかるのだが、そう四角四面に構えられてはとりつく島もないということだ。

「ふふ、じゃあ、あらためまして。俺はジェネシス。セフィロスとは親友でね。もうずいぶんと長い付合いになる。君も行ったことがあるコスタ・デル・ソルに住んでいるんだ」

「あ? おまえ、何てきとーなコトを言ってやがる

「なんだよ、そのとおりだろう?」

「こいつとはただの同僚だっただけだ。別に何の関係もない」

 遠慮無く前菜だのにかぶりつきながらセフィロスが言った。

 幸いにも、レオンという人物は、彼の身も蓋もない物言いは気にせず、差し出した俺の手を握り返した。

「……レオンだ。アンタもなかなか苦労しているようだな、ジェネシス」

 剣を握る部分がタコのようになっている。セフィロスから聞いたように、彼もいっぱしの剣士というわけか。

「よろしくね、レオン。君に逢えて嬉しいよ」

 ごく自然に微笑んだつもりであったが、彼はやや珍妙な面持ちで、

「こちらこそ」

 と、言葉少なに返しただけであった。