Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<17>
 
 ジェネシス
 

 

「失敬、ジェネシス。食事中のセフィロスは役に立たなそうだ。リクからは客を連れて行くとしか聞いていないんだ。すまないが、委細を教えて欲しい」

「ああ、もちろんだとも。ホロウバスティオン自衛軍の指揮官殿。……この程度のことは、リクから聞いたよ」

「……指揮官などと、そんなたいそうなことはない。ただ、ここの人たちは戦闘慣れしていないんだ。だから、なるべく被害が及ばぬよう自衛団を組織したんだ。国の正式な軍隊とはいえない」

 食欲がないわけではなかろうに、スープとラザニアをひととおり口にすると、軽いため息をつきながら、そう応える。なにやら思うところがありそうだ。

「……ところでアンタたちは、どうしてここへ? 『時空のゆがみ』にでも取り込まれたのか?」

「まぁ……そうともいえるし、厳密にはちょっと違うかな」

「どういうことだ?」

 すかさずシンプルに問い返してくる。

「うん、リクには例の『ゆがみ』に飲み込まれたって話してあるんだけどね。実はセフィロスのヤツが、ホロウバスティオンに行ってみたいって駄々を捏ねてね」

「…………」

「こちらの世界からは君を含めて数人がやってきたらしいけど、こっちからはチョコボっ子だけだろう? ずいぶんと未知の世界に興味があったらしい」

「……まったく」

 いかにもやれやれといった風に頭を振る。

「あの人は……いったい何を考えているんだ……」

「いや、後のことなんて、なにも考えていないと思うよ。興味があったから無理やり来たんだろ」

「『よじれ』なんて、ひどく不確かなもので、いつどこと繋がるかなど、はっきりとはわからないのに…… 無茶なことを」

「まったくだねェ。あいつの向こう見ずには、昔からずいぶん心配させられてきたよ」

「ヴィンセントさんにちゃんと言い置いてきたのだろうか? そうでなければ……あの線の細い、繊細な人がどれほど心配していることか……」

 眉間に指を当て、深いため息を吐く。

 そうか……レオンはコスタ・デル・ソルにやってきたとき、あの家に滞在していたはずだ。それがどれほど短い時間であったとしても、世話をしてくれた相手といったら……ヴィンセント以外にはあるまい。

 きっと、女神は、このやや朴訥で真面目な男を、親身になって面倒をみたのだろう。

 口数が少なく、軍人のような彼の有り様を、きっとヴィンセントは気に入ったに違いない。レオンがこんなふうに彼を心配するくらいなのだから。

 

 

 

 

 

 

「安心したまえ、レオン。きちんとヴィンセントには話をしてある。幸い俺には『空間のよじれ』とやらを感知する能力が備わっているようでね。セフィロスに無理やり同行させられたんだ」

 少し驚いたように……それでも表情はほとんど変化せず、彼が俺を見つめた。奇妙な生き物でもみるような眼差しだ。

「あなたには……見えるのか?」

「いや、あれは『見える』とかそういった代物ではなくてね。『感じ取れる』というのが、一番近い感覚かな。磁場の強いものは、わりとよくわかるよ」

「すごいな、ジェネシス」

 ストレートな言葉に、俺は軽く手を上げた。

「別に特別なことでもないだろう。こちらの世界の『セフィロス』だって、わかるようだし。相性の問題なんじゃないのかな」

「だが、その『感覚』で、的確にホロウバスティオンに来れたわけだろう。……考えても見なかった、アンタたちの世界とこっちを自由に行き来する方法など……」

「それがあたりまえだろう? 普通じゃないのはあっちの男さ。いくら『空間のよじれ』がわかるとはいっても、帰るときのことなど何も考えていない。そうそう都合良く『よじれ』が見つかるとは思えないけど…… ここは……ちょっと不思議な場所らしいから」

 そう言った後で、すぐに言葉を訂正する。

「いや、失礼な言い方かな。大勢の人々が暮らしているのに、不思議な場所だなんて。……ただ、どうも、ホロウバスティオンの磁場はめずらしい様子だね」

「……わざわざ訂正する必要はない。本当のことだ。もともとこの世界はひどく不安定な要素が多いらしいが、これまでは何とか保ってきた。だが、ここ最近はかなりひどい」

「……それは、セフィロスがついさっき戦った輩と関係あるのかな」

 率直に訊ねてみる。

「ああ、そう!その話をまだ直接聞いていない。リクからは、アンタたちが、水晶の谷近くで13機関戦闘したと……」

「戦闘したのはセフィロスひとりだよ。俺は側で見ていただけ」

「敵はどんなやつだった? 怪我などは……」

 レオンがそこまで言いかけたときに、不作法な物言いが彼の言葉を遮った。