Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<19>
 
 レオン
 

 

 

 俺はクラウドの声を聞きつけて、軽く頭を押さえつつも、足早に玄関に出た。

「ただいま!」

 と、くっついてくる彼に、めずらしい客の話をしなければならない。大分人慣れしたとはいえ、まだまだ知らぬ人間に対しては警戒心が強い。

 

「レオン、おかえりのチューは!?」

「しっ、クラウド。今はダメだ。その……客が来ている」

「お客さん? 誰だよ、それ。だったら、早くチュウしてよ」

「こ、声が大きい! リクもいるんだ。未成年の前で……まずいだろう」

 なんとか怒らせないよう、必死になだめるが、どんどんクラウドの頬が不満で上気してゆく。こいつもいい大人なのだから、もう少しわきまえてくれるとありがたいのだが……これでは、リクとクラウド、どちらが年下なのかわからない。

 

「おーおー、それなりに仲良くやってるようだな」

 冷やかすような声が飛んできて、慌てて居間への扉に目を移す。案の定、セフィロスがその大きな身体を壁によりかからせていた。

「おい、アンタ! いや、クラウド、大丈夫だ。この人は『セフィロス』じゃなくて……」

 拒絶反応の発作が出ないよう、クラウドの身体をかばうように抱きしめた。だが、クラウドはそんな俺を押しのけて、タッと不躾な男の方へ走り出し、なんと抱きついたのであった。

「セフィロスだ……! コスタ・デル・ソルのセフィロスだよね! なつかしい、俺、もう二度と会えないと思ってたッ!」

「まぁな。ちょっとした旅の途中……みたいなモンだ」

「ク、クラウド、そんなにすぐに見分けが付くのか?」

 驚いた俺に向かってクラウドが微笑む。

「だって空気が全然違うもん。それにしゃべり方や服装も!」

 至極当然というようにクラウドが言った。

「おい、クラウド。ほら、顔をよく見せてみろ。フフフ、おまえは相変わらず可愛いな。それにいい子だ。向こうのクラウドとはエライ違いだな」

「またセフィロスってば、そんなこと言って!」

 キャッキャッとじゃれつくクラウドを横目に、俺はなんともいえない敗北感を感じるのであった……

 

 

 

 

 

 

「……で、こいつがジェネシスな。まぁ、向こうの世界での顔見知りだ」

「おまえは本当に失敬なヤツだね。初めまして『クラウド』くん。セフィロスの友人のジェネシスだ。どうぞよろしく」

 ジェネシスは俺にあいさつしたときと同じように、如才なくクラウドの手を握った。

 クラウドは軽く頬を染め、『よろしく』と返している。

 ……しかし、このジェネシスという人物。

 セフィロスと同様、元軍人ということだったが、俺の想像する『軍人』というものからは大分イメージが異なる。

 上品で洗練された振る舞い……話術も巧みで、相手の気持ちを反らさない。容姿もすこぶる付きの美男子だ。まるでどこかの国の青年貴族のようだ。

「どうかしたのかい? レオン」

 ついつい彼をじっと眺めてしまっていたのだろう。ジェネシスはやわらかく問い返してきた。

「あ……ああ、いや失敬。アンタも元軍人だという話だったから」

「そうだよ。神羅カンパニーというところで、セフィロスと一緒にソルジャークラス1stを努めていたんだ」

「じゃ、じゃあ、ジェネシスもとっても強いんだね。だってセフィロスと同じ階級だったんでしょう?」

 ウチの子……もとい、クラウドがあらためて、ジェネシスを見つめた。

「まぁね。弱くはないと思うよ」

 ポンポンとクラウドの頭に手を置くと、俺に目線を寄越した。

「いや……その、アンタはあまり軍人という感じがしないな。品が良くて……華やかだ。ああ、一応付け加えておくが誉め言葉だ」

 ジェネシスはプッと吹き出すと言葉を続けた。

「え…… あ、あっはは。まさか、君にそんなふうに言ってもらえるとはねぇ」

 独特の口調で、語尾を優雅に伸ばす。微笑を浮かべると、艶やかさがさらに増すような感じだ。ああ、そういえば、この人の雰囲気はどことなく、コスタ・デル・ソルのあの家の人物……そうだ、ヤズーにかぶるところがあるのだ。もっともジェネシスは、ヤズーのように中性的というわけではないが。

「さて、そろそろ話の続きをしたいのだが。かまわないだろうか」

「あ、ごめん、レオン。俺は今日はもうマーリンの家に戻らないと。何も言わずに飛び出してきちゃったから」

 リクが少し慌てたようにそう言った。

「……もうそんな時間か」

 窓の外を眺めると、すでにうっすらと夜のとばりが落ちている。クラウドが帰ってきてからの無駄話が長すぎたのだ。

「おい、レオン。晩飯」

 と、セフィロスに言われるに至って俺はあきらめた。

 もっとも、彼らは今日早くにこの土地へやってきて、一戦交えた上で、家にやってきたのだ。なにもかも一日で済ませる必要はない。

「ああ、わかった。準備をしよう。セフィロスとジェネシスは今夜ここに泊まってくれ」

 ため息が混じらぬよう注意しつつ、俺はふたりにそう告げた。