Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<23>
 
 レオン
 

 

 

 

「……ま、それでだ。おい、レオン。貴様も自警団の団長じゃなくて、軍人の頭に切り替えろ」

「え……あ、ああ」

「さっきまでの話だと、ハートレスだのノーバディだのを、この世界に送り込んでいるのは、13機関とやらだったな」

「そうだ。ああ、いや、もともと、こちらの世界には古くからハートレスという存在はあったらしい。だが、その数は人目に付かぬほどに少数で、少なくとも街の人間を襲うような生命体ではなかったようだ」

 なるべく正確な情報を伝えるべく、文献に書かれたままを伝える。

「フ……ン、それじゃあ、そいつらが騒がしくなったのは……」

「ここ数年だ。特に13機関があらわれてから、猛烈にひどくなった」

 すかさず俺はそう答えた。

「でもさ……考えてみれば悲しい存在だよね。そのハートレスとかノーバディとか。君はさきほど、『自らの心の闇に敗れた、心のみの存在』と言っていたよね、レオン」

 ジェネシスの問いかけに

「ああ」

 と頷く。

「でもね……だれでも心に闇はもっているものだよ。人は時に闇に屈することがあってもおかしくないと思う。……その際に、心のみが肉体から離れて別に存在してしまうなんて……」

 思いも掛けないジェネシスの真剣な物言いに、俺もリクも息を飲んだ。

「その『心』は行き場をなくしてしまったのだろう? だって、肉体はもうないのだから。なんとも悲しい存在だね……」

「そうだね、あなたのいうとおりだと思う、ジェネシス」

 聡明な瞳で、リクがそう言った。

「だれでも『闇』を持っているよ。でも、それでもやはり、闇に屈してはいけない。人の心には闇ばかりじゃなく、光もあるんだ」

「フフ、君はいい子だね。『痛み』を知っていてあえてそう言う」

「……俺のことはわからないけど……でも、ハートレスやノーバディは早く眠らせてあげたい。そしてもとの肉体へと還るべき存在だ」

「そうだね。君のいうことはもっともだよ。だが、13機関とやらは、そうではない。……違うかい?」

 ジェネシスが、リクの顔を静かに見つめ、そう訊ねた。リクはあまり表情が変わる方ではないが、その面持ちは怒気をはらんでいた。

 

 

 

 

 

 

「そうだ。彼らは違う……! 自らの意志で、ノーバディとしての身体を手に入れた。人の肉体では成せないことをおこなうために。「感情」に支配されるのを拒み、ノーバディになったんだ……!」

「へェ、だが、そのノーバディとやらは、心を持たないんだろう?どれだけ悠久の時を得ようと、根本的な部分で意味がねーだろーが」

 セフィロスがそう言った。黙っていてもきちんと話は聞いていてくれたらしい。

「そうだ……そのとおりだ、セフィロス。彼らは不死の肉体を得たまではいいだろう。だが「感情」がない……心がないというのが、いかに無為なものかに気付いたんだ」

 リクが取り憑かれたようにそう言った。

 セフィロスやジェネシスには、リクがもともと13機関寄りの立ち位置に居たという話はしていない。する必要がないと思っていたからだ。

「だから、人の心を奪おうとする。それを多く溜めて、際限なく多く…… そして、人工的なキングダムハーツを作ろうとしているんだ。キングダムハーツが完成すれば、『心』を取り戻せる。彼らはそう考えている」

「……なんかの宗教みてーだな」

 ぼそりとセフィロスがつぶやいた。

「同意だな。だが、おかしな宗教よりも始末が悪い。実際に彼らはそのための準備をしているわけだろう? ハートレスやノーバディを煽動して、この世界を浸蝕している」

 ジェネシスが言った。そう……まさに浸蝕だ。

 それらの存在すら知らなかった街の人々が、異形に襲われてパニックに陥っている。当然外出も控えるようになるし、ようやく元の姿を取り戻しつつあったホロウバスティオン自体が、この闇に浸蝕されつつある。産業も流通も……政治と経済機構そのものが、機能しなくなっているのだ。

 まだ、なんとかやっていけてるのは、協力国エスタの力が大きい。必要な物資や、軍備などは、ほとんどエスタからの供給品に頼っているのが現状だ。

「これ以上、被害が広まれば、もはやこの国……レディアントガーデンは国家として機能しなくなる。だれも住めない場所になってしまう。それだけはなんとしても避けたいんだ」

 俺がそういうと、さっそくジェネシスが怪訝な面持ちで訊ね返してきた。

「レディアントガーデンとは? ここはホロウバスティオンだろう?」

「本当の名はレディアントガーデンというんだ。俺がこの土地に来たばかりの頃はそう呼ばれていた。……いろいろなことがありすぎたんだ」

「そう……」

 それ以上は何も言わず、ジェネシスは口を噤んだ。