Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<25>
 
 セフィロス
 

 

 

 

……あえて、心を捨て、ノーバディとなる……か。

 挙げ句の果てには、捨てたはずの心を取り戻そうとしている。

 

 そいつらの有り様は、あまりに滑稽だ。

 滑稽で……哀れだ。

 

 オレはいつの間にか、おのれの生き様を振り返っていた。

 少なくとも、オレは永遠の命が欲しいなどと思ったことはない。神羅に居て英雄と呼ばれていた頃であっても、年を経れば自然に体力が落ち、いずれはファーストの座を若い連中に譲るものだろうと思っていた。

 実際、意識はしていなかったが、『人』ならば、老いとは無縁でいられない。そんなことはガキでも知っている自然の摂理だ。

 

 だが、この身体は……

 この肉体は『人』ではなかった。

 

「おい、セフィロス。そっち、行ったぞ!」

 ジェネシスの声に、無意識に腕を振る。

 忍び寄る黒い影が霧散し、飛び散ってゆく。

 ……こいつらは負の思念に負けた存在。心を失った生物だ。

 あのときのオレと、どこが違うというのだろう。

 

「セフィロス。何を考えている?」

 ジェネシスが声を掛けてきた。

「……くだらない感傷に浸るのはよせよ」

「うるせーな。なんでもねーよ。……しかし、手応えのない連中だな」

 ジェネシスは油断ならない。いつでも人の気持ちを容易に見透かしてしまう。ウチのイロケムシと同じタイプの男なのだ。

 つまらない物思いを振り切って、オレは足を進めた。

 

 

 

 

 

 

「街に出没するのは、まだこのレベルだからマシなんだ。……水晶の谷に着いたら覚悟してくれ」

 レオンが言った。

「ハン、大げさな」

 鼻で笑ってやると、四角四面な真面目男はさらに言葉を重ねる。

「大型のノーバディや13機関の機関員はあなどれない。万一、アンタたちがひどい怪我を負うようなことがあれば、ヴィンセントさんに申し訳が立たない。くれぐれも用心してくれ」

「『ヴィンセントさん』ね。……ねぇ、レオン。昨夜は聞き損なったけど、君はどれくらい、ヴィンセントと親しいの?」

 表面上はあくまでも紳士的にジェネシスが問うた。

「……? 質問の意味がよくわからないが」

「いや……だから、君がコスタ・デル・ソルに居る間に親しくなったわけだろう? 特別な感情を抱いているのなら……」

「ああ、確かに、彼のことをとても尊敬している。元は軍人で銃の腕は神技のレベルだとヤズーから聞いた。だが、それにもかかわらず、心根は誰よりも清らかで美しい。あんな人はなかなかいないと思われる」

 確認するように頷きつつ、レオンは長々と講釈を垂れた。

「へぇ、レオンがそんなに人を誉めるなんて……できるなら、俺も逢ってみたいな、そのヴィンセントさんって人」

 物珍しそうに瞳を輝かせてリクが言った。そんな表情はやはり幼い。

「もし、出逢うことがあれば、必ずおまえも同じように感じるはずだ、リク。それに、ヴィンセントさんはきっとおまえのことを気に入るだろう」

 レオンの物言いに、

「もう、ちょっと勘弁して欲しいなぁ。これ以上ライバルを増やしたくないんだけどね、俺としては」

 と、ジェネシスが苦笑した。

 

 やれやれアホくさい。

 ……だが、バカバカしいやりとりのおかげで気が紛れた。ホロウバスティオンに行ってみたいと望んだのは、このオレ自身だが、嫌なモノが相手になってしまった。

 もちろん、レオンらの手助けをすることに問題はない。

 だが……心を失った生物……ノーバディやハートレスとやらの存在は、哀れでもの悲しく……そして、かつてのオレと同じように、どこまでも滑稽であった。