Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<33>
 
 セフィロス
 

 

 

「騒々しいな……」

 白い手がヴェールを持ち上げ、自分とそっくりな顔をもつ男が出てきた。

 どこぞの聖職者が身につけそうな、丈の長いぞろりとした装束を身につけ、背には黒い片翼が現われている。 

 どうやら不機嫌らしい。

 ここまでくれば、相手が誰だか言わなくてもわかるだろう。

 この世界でのオレ……

 そう、「死の大天使」と、記されていたあの男だ。

 

「誰かと思ったら、貴様か…… もうひとりの私は相変わらずの男と見える」

 口唇をゆがめて皮肉な笑みを含んだ。

「テメー……ここで何してる」

「おまえのほうこそ……と訊ねれば、きっとまた怒鳴りつけるのであろうな。もうひとりの『セフィロス』は」

 と、ヤツは低くささやいた。そのまま言葉を続ける。

「ここは私の棲む世界だ。ときおりこうして城の様子や、街を眺めている。……ただの暇つぶしだ」

「いかにもテメーらしい、どうでもよさそうな言い方だな。今、この街がどんな状態にあるのか知らないわけじゃねーだろ」

「……私の与り知らぬことだ」

「それより、おまえ、レオン相手に……」

 と、そこまで言ったときだった。

 もうひとりのオレ……KHの世界のセフィロスが、連れの男に目線を移した。少しばかり驚いた表情を見せる。

 

「……ジェネシス……?」

 と、なぜかヤツはその名を口にした。

「ああ、そうだよ。久しぶりだね。……元気そうで安心した」

「おまえまで何故、ここに……」

「あ、まぁ、今回はセフィロスのわがままに付き合ったっていうか……あ、こっちのセフィロスのね」

「……おおかた、ヴィンセント・ヴァレンタインにでも頼まれたのだろう。苦労の多いことだな、ジェネシス」

 などと言いやがる。

 

 なぜ、このふたりが見知り合っているのだ。それにこの気安さ。

 確かに、この世界の『セフィロス』がコスタ・デル・ソルにやってきたことは、ジェネシスに話したことがある。というか、オレ自身がというよりも、家の連中がおもしろそうに説明している様を眺めていたので知っているのだ。

 だからといって、初見の人間同士が、こんなふうに会話できるものではない。

 

 

 

 

 

 

「……おまえら、ずいぶんと親しげだな」

「ああ、うん。実は以前ね、彼がコスタ・デル・ソルに来たことがあって、うちに泊まってもらったんだよ」

 わずかに躊躇するような風情で、ジェネシスが言った。

「いや、おまえや女神たちに知らせようと思ったんだけど、彼が迷惑をかけたくないというからね、あえて黙っていたんだ」

「……あのときは世話になったな」

 と、もうひとりのオレがつぶやいた。

 

「いや、君を無理に招き入れたのはこっちのほうだからね。俺のほうこそたった数日だったけど楽しかったよ」

 と、ジェネシス。

 ……なんだ、この妙な感じは。

 表現に困るが、このどこか浮ついたような雰囲気は……

 

「ジェネシス、テメー、今、自分で招いたって言ったよな」

「ああ、ノースエリアの繁華街でひとりで突っ立っているのを見つけてね。あまりにも気になったものだから……」

「……おまえたちの時間軸へ行くつもりはなかったのだ。目的地は別にあったのだが……」

「いや、それはどうでもいい」

 と、オレはボケ老人を制した。

 

「ジェ、ジェネシス…… おまえ……まさかと思うが……」

 胸ぐらを掴み上げるのを、ぐっとこらえ、低く訊ねる。

「なんだい、セフィロス?」

「部屋に泊めたって…… まさか、まさかおまえ、こいつに……」

「何を怒っているのだ、貴様は」

 さもくだらないというように、止めに入ったのは当の『セフィロス』であった。