Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<35>
 
 セフィロス
 

 

 

「セフィロス、どうかしたのか? そっち、騒がしいようだったけど」

 リクが軽く膝を払いながらそう訊ねてきた。絨毯にかがんでなにやら作業をしていたのかもしれない。

「え、あ、ああ、いや……いいんだ、なんでもない!」

「そうか……? ジェネシスはまだ中?」

「へ……?」

 あの野郎、一緒に出てこいと行ったのに!なにをぐずぐずしていやがる!

 ああ、澄んだリクのまなざしが痛く感じる。あんなとんでもない出来事を聞く前までは、そんなふうに感じなかったのに。

 

「セフィロス……?」

「あ、ああ、すぐ来る!すぐ来るから!それよりおまえの作業は済んだのか?」

「ああ、持って帰る紙資料はこの程度でいいと思う。ほとんどものはディスクに落としてあるんだ」

「そ、そうか。じゃあ、行くか! レオンの電話もそろそろ終わるだろ!」

 そう言って、リクの肩を抱えるようにして引っぱる。

「あ、あの……セフィロス? ジェネシスがまだ寝室の中なんだろう? 俺、呼んで……」

「いいっ! いいんだ! あいつのことは放っておけ。すぐ後から来るだろ!」

 つい早口でまくし立てた。

「そ、そう……? まぁ、このフロアはハートレスやなんかのモンスターはいないみたいだけど……」

「いっそ、モンスターにでもなんにでも喰われてくれ……」

「何か言った、セフィロス?」

 と、リクに聞き返され、オレは頭で考えていたことを口にしていたのだと気付いた。

 

「え、あ、ああ、いや何でもない! じゃ、さっさと次の……」

 そう言って、アンセムの私室の扉に手をかけようとしたところ、反対側から勢いよく開け広げられた。

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ、セフィロスか、どうした?」

 汗を拭いながら、そういったのはレオンだった。

 いや、おまえこそどうしたのだと問い返したい。

 かすかに頬を上気させ、吐息を弾ませている。クラウドと電話中だったはずだが、そんなにもあの子にやりこめられたのだろうか。これではフルマラソンを終えたアスリートではないか。

 ご丁寧にも持参したハンカチでしきりと額を拭っている。

 ……と、レオンには悪いが、オレの精神状態も通常運転ではないのだ。今あの部屋にとって返すのは、あまりにも精神的負担が大きすぎる

「いや、おまえこそ……で、電話、誰からだったんだ?」

 どうでもいいことを敢えて訊ねる。答えはクラウドに違いないとわかっているのに。

「あ、ああ、別に…… その……クラウドからだ。たいした用件ではないが手まどってすまなかった」

 相変わらず手こずらされているらしいが、そんなことはオレの知ったこっちゃない。

 

「よし、じゃあ、次の場所へ移動しよう。武器庫があると言っていたな!」

「え……あ、ああ、そうだが。この最上階から地下への直通エレベーターで移動する。そちらにもモンスターは入れないようになっているから……」

「ならば、話は早い!だいたい一番怪しいのは、その武器庫なんじゃねーのか? 連中にとっても、手っ取り早い手段と言やァそいつだろう」

「だが、私室のほうは……リク、資料はどうだ?」

「ああ、うん。ここに持っている。用事は済んだからかまわないんだけど……ジェネシス、遅いね?」

 リクの涼やかなまなざしがオレを見上げる。あのクソ汚れた性欲魔人どもとは対照的な清々しさだ。

「ジェネシスのことは放っておけ。用事は済んだとリクも言ってるだろ。ほら、さっさと案内しろ、レオン」

 オレはヤツをどつき飛ばす勢いでせっついた。

「いや、まさか、彼一人を置いてなどいけない。部屋にカギもかけなきゃならないし……」

「カギなんざ後で締めにくりゃあいいだろうッ! どうせ、他には誰もいやしねェんだから!」

「……セフィロス……何をいきなりキレているんだ」 

 レオンに言われて、かなり自身のテンションが異常なのだということに気付く。リクも不思議そうオレを見つめていた。

 

 ちょうど、そのときだった。

「やぁ、ごめんよ、手間を取らせてしまって」

 なれなれしくも、ぽんと肩に手が置かれた。

 いわずもがなジェネシスだ。オレはレベル4の病原菌に触れてしまったごとくに飛び上がった。