Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<53>
 
 レオン
 

 

 

 俺とリクは階段をひた走る。

 フロアを上がるごとに、大切な記憶を失うと言われているこの場所……『忘却の城』だ。だが、クラウドのことはきちんと憶えているし、今しなければならないこともよくわかっている。

 『セフィロス』だ。

 とにかくあの『セフィロス』を救い出さなければならない。

 彼はアンセムの城からさらわれ、そのままこの場所に幽閉されているのだ。しかも、最強のノーバディを作るための実験台と目されているのだ。

 忘却の城の最上階には、特別実験室があるという。

 今は一刻も早くそこへたどり着くことだ。

 厄介な敵二人は、ジェネシスとセフィロスが引き受けてくれているのだ。それだけでも、彼らがホロウバスティオンを訪れてくれた意義は十分すぎるほどにある。

 コスタ・デル・ソルのセフィロスは『あまりにも簡単にさらわれすぎている、わざとじゃねーの』などと、彼の態度を半信半疑で見ているようだが、今となってはどうでもよい。『死の大天使』と呼ばれる彼に、なんらかの意図があるのかもしれないが、実験台なぞにさせるわけにはいかない。そうだ、もし何か考えがあったとしても、この城の中では思うように動けなくなっているのではなかろうか。

 いくら『セフィロス』でも……

 

「リク、大丈夫か……!」

 となりを遅れずについてくるリクに声を掛ける。

「もちろん。だが、このままたどりつけるとは……」

「どんなヤツが出てこようと、何が何でも最上階まで行くんだ!セフィロスとジェネシスもすぐに追いついてくる!」

「わかってる……!」

 リクは俺よりもこの城にくわしい。もっというのなら、13機関という組織について。

 さっきも、まだ、出て来ていない機関員のことを口にしていた。よくわからないが、主に忘却の城を守っている機関員がいるのかもしれない。

 こうなってくると、俺自身がほとんど連中について、情報をもっていないのだと思い知らされる。ジェネシスやセフィロスが相手をしている輩も、くわしくは見知っていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 いやいや、今となってはそんなことを考えても仕方がない。

 ノーデータであろうが、なんであろうが、目的を果たさなければならない。

 『セフィロス』の救出と、兵器の破壊だ。

 

 『セフィロス』は大丈夫だろうか。

 彼は最上階の研究室に連れて行かれている可能性が高い。

 

 ……そう『最上階』なのだ。

 ……彼の記憶は?

 まさか、俺のことを……いや、俺たちのことを忘れてしまっているなどということはないだろうな?

 そんなことは……あるはずがない。

 こうして階を駆け上がっている俺の記憶は鮮明なのだ。大切なことは忘れていない……はず。

 

 ならば、『セフィロス』だって、憶えているはずだ。

 闇の淵で初めて出逢ったときのこと、アンセムの城で彼の傷の手当てをしてやったときのこと……そしてコスタ・デル・ソルの『クラウド』がやってきたとき、どういうわけが我が家に訪ねてきたことさえあるのだ。

 『セフィロス』はどう考えているのかわからないが、俺たちふたりは、ある程度深い関係にあると思うのは俺のうぬぼれではないはずだ。いつかはエスタのラグナのところに、彼を迎えに行ったことさえあるのだ。

 ……彼に携帯電話をプレゼントしたのは、ラグナのクソ親父であったが、コールした回数は俺の方が多いはずだ!

 

「レオン、何か言った?」

 リクに問い返されて、慌ててごまかした。つい考えていたことが口をついてしまったらしい。

「ああ、すまん。俺の記憶は大丈夫そうだが、『死の大天使』のほうはどうだろうかと心配になってな」

 敢えて、『セフィロス』を『死の大天使』と言い直す。リクはほとんど彼と接触がないのだ。あまり親密そうな態度をとるのは、はばかられると感じたからだ。

「ああ、なるほど。せっかく助けに来たのに、抵抗されたりなどしてはやっかいだな」

「それはないと思うが……リクは、あまり面識がないんだったな」

 確認するように俺は訊いた。

「ああ、そうなんだ。話をしたことすらない。だが、存在については、大分早い内に知っていたよ。……その、13機関と関わっていたときにも、話に出てきたくらいだから」

 言いにくそうにリクが答えた。