Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<54>
 
 レオン
 

 

「今から思い直せば、最初から13機関はあの人に関心があったんだな。……もっと注意をすべきだった」

 ため息混じりにリクがつぶやいた。

「……それは、今言っても始まらん」

 苦情をいうつもりはなかったが、歯噛みしたくなる気持ちをなんとか抑え込む。

「いや、ホロウバスティオンのデータベースにも、彼のことは登録してあるくらいなんだからな。もっとも本当はどこに住んでいるのかさえもわからない人だけど……俺も一度くらいきちんと話しをしてみたいんだ」

「そうだな」

 物静かなリクならば、『セフィロス』も不快に感じることはないだろう。

 いや、それもこれも、すべては彼を無事救い出してからの話なのだ。

「……よし、急ぐぞ、リク」

 そう言ってさらに足を速めたときであった。

 駆け上がったフロアが、桜色に霞んだ。何やら甘い香りがする。

 

「マールーシャ……!」

 鋭くそう言うと、リクが即座に迎撃の態勢をとった。

「……敵か」

 背からガンブレードを引き抜く。

 この淡い霞と、香りがどうやら目印になるらしい。さきほどの敵……アクセルが言っていた、さらなる強敵のご登場というわけか。

「さっさと姿を現わせ! 俺には時間がないんだ!」

 そう怒鳴りつけた瞬間、目の前を銀の奇跡が横切った。ほとんど身体の感覚だけをたよりに、身を反らせて避ける。

 すると……

 すると、目の前に長身の男……?が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 一瞬、性別を迷ったのは、その男が長身であるにもかかわらず、ひどく整った顔立ちをしているからであった。

 女性的……というと語弊があるが、色白の肌に、すっきりと通った鼻筋、切れ長の双眸が印象的だ。また、うるさいほどの睫毛と紅を引いているわけでもないのに、つややかな口唇が、あでやかな印象であった。髪の色合いも変わっていて、淡いピンク色をしている。

 美しいといえばそのとおりだろう。

 ここ最近の話だが、俺は『美しい』にもさまざまな種類があることを知っていた。

 『セフィロス』のもつ、空恐ろしささえ感じさせる高潔な美しさ。

 ヴィンセントさんのような、どこか不思議なアンティークドールのような蠱惑的な美しさ。

 ヤズーのもつ、パッと人目を引く徒めいた華やかな美貌。

 ……どれもこれも、『美しい』かと問われれば、そのとおりと答えざるをえない人たちだ。

 この、『マールーシャ』という男は、どちらかといえば、ヤズーのもつ美貌に近い。どこか艶めいていて、華やかで人目を引く。

 だが、その双眸の放つ光は妖しく、ひどく冷たい物を感じさせるのであった。

 

「やぁ、リク。久しぶり」

 その声も澄んではいるが、冷ややかで平坦だ。

「マールーシャ!」

 リクが目の前の男をにらみつける。どうやらリクもこの男を好いてはいないらしい。同じ13機関なのに、アクセルと出逢ったときとは、まるで態度が異なる。

「……来るのがちょっと早すぎるんだよね。なんで今なのかなぁ」

「アンタたちが人間の心を集めているからだ……! これ以上犠牲者を増やさないために」

「やれやれ、まだ俺の準備は整っていないというのにね」

「アンタの都合など知ったことか。そこを退けッ!退かないなら……」

「ねぇ、そっちの人」

 リクの言葉を無視して、マールーシャと呼ばれる男は、俺に声を掛けてきた。