Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<65>
 
 セフィロス
 

 

「ハァッ!」

 剣がオレの髪を一房切り落とし、背後まで伸びて行く。頬のあたりにピリリと冷たい痛みを感じたのは、今の瞬間、そこを掠められたのかも知れない。

 あの剣の攻撃パターンを読まなければ、懐に飛び込んでいけない。

 オレの武器も間合いが必要だが、奴の操る空を跳ぶ剣は、すでに間合いがどうという話ではないのだ。

 ガラスケースの方は、とりあえずジェネシスが居ればなんとかするだろう。

「オオォォォォ!」

 ふたたびサイクスが咆哮した。

 両手の爪が、狼のそれのように鉤のように伸び、顔に文様のよううなものが浮かび上がっている。これが奴の、戦闘態勢ということなのだろう。

 巨大な剣先が、ドドドとオレめがけて飛んでくる。

 それを引き付けつつ躱し、マサムネを下段にかまえた。

「ハッ!」

 低い位置から足元を狙って、刀を操るが奴は軽く飛翔し、それを避けた。

「……なるほどな。トランス状態のテメェ相手に、オレだけノーマルのままじゃ分が悪いってか」

 フンと鼻で笑う。

「オォォォォ!」

 サイクスは、まさしく狂った狼のごとく、次から次へと激しい攻撃を繰り出してきた。どうやら同じ13機関でも、アクセルや他の連中とはわけが違うらしい。

 サイクスは、どうあってもオレを屠りたいのだ。

 この生身の肉体から噴き出す血をすすり、臓物を喰らいたいのだ。そう感じさせる戦いへの執着であった。

 オレは飛ぶ剣の攻撃を避け、高く跳躍した。

「行くぞッ!」

 強く叫び、精神力を集中させる。

 心臓がドクドクと強く鼓動を繰り返し、背に熱が集まる。指先まで力が漲って行く。

 

「アァァァァーッ!」

 それを解放させるために、声が上がる。

 喉の奥から、熱いものが噴き出すようだ。

 次の瞬間、オレの背には巨大な黒翼が羽ばたいた。双眸の視界が広まり、身体能力を極限まで引き出す。マサムネが変生したオレに呼応するように妖気をまとって、冷たく輝いた。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス!」

 オレの名を呼んだのは誰だったのだろうか。おそらくジェネシスだろう。

 この姿を人目にさらすのは久々だ。

 いや……例のDG事件のときに、ヴィンセントには見せたか。

 サイクスという機関員は確かに強いが、こいつ相手に手間取っている時間はない。まだ頭領のゼムナスが残っているし、もっとも重要な目的が残っている。

 キングダムハーツとやらを作り出すために集めた『心』を解放すること……その機器を破壊するのだ。

 上空からサイクスめがけて、刃を突き立てる。

 通常の状態の倍以上のスピードだ。身体が軽い。やはり力を解放する前とは、雲泥の差だ。

 サイクスの攻撃に隙が見て取れる。

 巨大な剣をあやつる攻撃は、破壊力はずば抜けているが、ニュートラルの状態に戻してから再度攻撃に転じるまではわずかな間隙があるのだ。

 さらにあの剣は、防御と攻撃の両方の役割を果たす。つまり防御しているときは攻撃できず、攻撃している間は、防御に回ることができない。

 気がついてはいたが、生身の身体では反応についていくのが精一杯で、斬り込んでいく余裕がなかった。

 だが、今は背に翼がある。上空からも下段からも狙っていける。

 

 一撃目を剣をクロスさせることで防御したサイクスに隙が生まれる。ここから攻撃に転じるためには必ず体勢を立て直す。

 今のオレにはそれが、二撃目を打ち込むのための十分すぎる『間』に感じられる。

 

「じゃあな、サイクス!」

 壁を足場に反転して、背後から斬り込んで行く。

 巨大な剣が、一度もとに戻り、オレの目の前でふたたび重ね合わされる前に……マサムネが奴の身体を深々と刺し貫いた。