Snow White
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<3>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

「うるせぇっつってんだろ!つぶすぞ、チビ共!」

 大人げなく怒鳴りつける、セフィロスの前を慎重に迂回し、ちびっこ七人衆は、俺の傍らに立っていた人物に飛びついてきた。

「白雪〜〜〜っ!」

「白雪、ぶじだったの?」

「白雪〜! リンゴは? ちゃんと吐き出したの!?」

「え……? あ……あの……」

 人形のようなこびとどもを引っ付かせ、困惑した面持ちで棒立ちしているのは、俺の一番大切な人……ヴィンセントだった。

「オルァァァァ! このクソガキども! ヴィンセントから離れろッ! ひっつくなーッ!」

 間髪いれずに俺はキレだ。セフィの数百倍の早さで。

「……兄さん、大人げない」

「うっさい! こらっ! 離れろ! ヴィンセントは俺の……」

「クラウド、よしなさい。そんな力任せに……乱暴な……」

 襟元をつまみ上げたチビを、やさしく取り返し、抱きしめる。

 ……ああ、そういや、ヴィンセントはちびっこに弱かった……

「こんなに小さいのに…… 暴力を振るうのは感心できない」

「だ、だって、そいつら、図々しいだろ! アンタに遠慮無くくっついて……」

「待ちなさい。事情があるのだろう…… 君たち、落ち着いてくれたまえ」

 ヴィンセントは、まだ身体にくっついている小さな豆粒たちをやさしく抱き上げると、静かに声を掛けた。どんな凶悪犯でも、膝を折ってしまう聖母の微笑みだ。

 ちびっこどもは、グズグズと鼻をすすり上げ、ヴィンセントが丁寧にハンカチで顔をぬぐってやる。

 ……『七匹』もいやがるから、その作業だけでも大変だ。

 セフィロスは勝手におんぼろソファに座り込んで、いらいらと待っているし…… 俺もだんだん苛立ってくる。

 どうして、ヴィンセントはこうもちっこいものに弱いのだろう。例の赤ん坊のときもそうだ。あんな厄介ものを、すごく大切そうに保護していた。

 

「……ねぇ、兄さん。これって流れ的に『白雪姫』だよね?」

 こそっとヤズーが耳打ちしてきた。

「うん。さすがに七人のこびとの時点で気がつくわな。……ただ、俺、ちゃんとストーリー覚えてないし。毒リンゴっつーキーワードは記憶にあるけど」

「うん、こびとさんたちがああして泣き喚いているところを見ると、ちょうどその場面みたいだね」

「あれってラストはどうなるんだっけ?」

 俺は訊ねた。肝心のエンディングを覚えていないのだ。

「ああ、最後はもちろん、ハッピーエンドだよ。毒リンゴで眠ってしまった白雪姫をね……」

 ヤズーがそこまで言いかけたところだった。

 悲痛なチビ共の叫び声で、俺たちは話を中断させられた。

 

 

 

 

 

 

「白雪! 白雪じゃないの?」

「白雪……俺たちがわかんないの?」

「ねぇ、リンゴは? 悪いお妃さまは?」

「あ……あの……」

「うわぁぁん!」

「びえぇぇぇ!」

「あ、な、泣かないでくれたまえ…… どうか、落ち着いて……」

 ヴィンセントが必死になだめようとするが、今度はなかなか上手くいかないようだった。

「白雪姫が帰ってきたと思ったのに〜ッ!」

「毒のリンゴを吐き出せたと思ったのに〜ッ!」

 ……何いってんの、こいつら…… 

「あ、あの……君たち……」

「あのさァ、おチビちゃんたち。白雪って……この人を、白雪姫と間違えたの?」

 ヤズーが宥めつつ、質問する。ヴィンセントはその後ろでオロオロだ。

「だって、そっくりなんだもん!」

「髪の色も同じだもん!」

「瞳の色も一緒だもん!」

「肌の色も、真っ白だもん!」

「びぃぇぇぇ!」

「うわぁぁぁん!」

「おいおい、テメェら。いい加減ウゼーんだよ。よく見ろ、コイツは男だろ? どう逆立ちしたって、姫とやらにはなれねーぞ」

 やさぐれた物言いで、悪態をつくセフィロス。彼のさもくだらなさげな物言いに、七人のちびちゃんたちは、ふたたび、びぇぇと声を上げて泣き出した。