Snow White
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

「どうする? セフィロス」

 ヤズーが、ごく当然という様子で、セフィロスに最終判断を求めた。どうして、俺じゃないんだよ!!

「……めんどくせーな」

 と、不遜な英雄。

「仕方ないでしょ。どうして、こんな不可思議なことが起こるのか、誰にもわからないし。それでもなんとか元の世界に戻らなきゃならないんだしね」

「…………」

「足、まだ痛いの?」

「アホか。もうとっくに完治している」

「そのわりにはテンション低いよねェ」

 とヤズーが突っ込んだ。

 三兄弟の中で、一番キレイなくせに、平気でセフィロスにからむヤズー。

 俺なんて、根本の部分に『英雄コワイ』というのがすり込まれているから、なかなかそこまで突っ込めない。

「あぁ? そりゃテンションも下がるだろ。こんなワケのわからない世界に放り込まれてよ」

「愚痴ってても始まらないんだし、早く元の世界に戻るためにも、今、動かなくちゃね」

「……はぁ、やれやれ。どうしようもないな。あー……その王子とやらが、この森にやってくるのが今日の午後って言ったか……」

 ようやくセフィロスも、重い腰を上げるつもりになったらしい。

「うん。もうガラスの棺はここにあるし、白雪姫が毒リンゴを口にしたのは、昨日だっていうから」

「そうか…… その王子とやらと、娘が出会える場面は? 他に接点はないのか?」

「残念ながら。さっきも言ったけど、原作では、白雪の亡骸を居城に持ち帰るんだから」

 両手を開いて、ヤズーが首を左右に振ってみせた。なんかこういう気障なしぐさも似合ってしまうのがムカツク。

「……それじゃどうしようもねーな。おい、クソチビども」

 後半の部分は、七人のこびとに向かって掛けられた言葉だ。ヴィンセントを指さしてさらに話を続ける。

「おまえら、この男と白雪とかいう娘を見間違えたな。そんなに似ているのか?」

「うん、似てる」

「白雪の瞳は綺麗なルビー色」

「白雪の髪は、カラスの濡れ羽色」

「白雪の肌は、雪のように真っ白」

「白雪はとっても、優しいの」

「いやー、どうもそっくりなようですな!」

 思わず俺は勢いよく頷きまくっていた。

 

 

 

 

 

 

「……ヴィンセント、とりあえず、おまえ、王子と出逢いのフラグだけでも作ってやれ。正体を明かすか否かは、おまえ自身が判断しろ」

「え……あ、あの…… そ、それは…… 私の判断というのは……?」

 困惑した様子でおろおろと問い返すヴィンセント。

「現時点では王子のひととなりはハッキリとわからんだろ。事情を話して理解してくれそうな野郎なら、おまえの口からきちんと説明してやればいいし、そうでなさそうなら、なんとかバレないように、オレたちがその小娘を救い出すまで時間を稼げ」

「…………」

「でも、実際バレないようにって難しいでしょ、セフィロス。この前のシンデレラちゃんのケースとは、まるっきり共有する時間が違うわけだから」

 ヤズーが口を挟む。

「そう思うのなら、死にものぐるいで、さっさと白雪って女を救い出すんだな」

「……まぁ……そうなんだけど……」

「ちょっと待ってよ! なんかアンタら、ヴィンセントの身代わりって前提で話してくれてるけどさ! 実際、王子の城に連れてかれたら、何されるかわかんないんだよ!? 俺たちがくっついていって見張っていられるわけじゃないんだし! その辺どうなんだよ!」

 俺はバン!とテーブルを叩いて抗議した。

「ク、クラウド……そ、そんなに怒鳴らなくても……」

「ヴィンセントは黙ってて! 大事なことなんだから!」

 俺は袖をひっぱるヴィンセントの手を押さえて、そう主張した。

「まぁ、その辺は自己判断で切り抜けるしかねーだろ。コイツだって、くさっても元タークスだ。優男の王子なんぞに負けることはなかろうさ」

「あ……それは……たぶん……」

「ちょっとヴィンセント! アンタも何その気になってんの? どんだけ危険なことかわかってるのかよ!?」

「兄さん、怒鳴らないでよ。ヴィンセントが悪いワケじゃないでしょ」

「そ、それはそうだけど……」

 ヴィンセントはもともとスローペースな人だけど、自分自身の魅力についてあまりにも理解していない。

 予想通り王子という人物がレオンばりによい人であったとしても、何が起こるかはわからない。

「だが、クラウド…… もう時間もないし……白雪姫と王子が出逢うシーンは非常に重要なのだ。他に巡り会える機会がなければなおのこと……」

「う〜……」

 俺は犬のように唸った。

「しかたねーだろ。オレたちがすべきことは、コイツが時間を稼いでいる間に、少しでも早く目当ての女を救い出すことだ。そう考えろ、クラウド」

「セフィ〜……」

「というわけで、さっさと準備をしろ。王子がやってくるのに間に合わなかったら、身代わりもクソもねーんだぞ」

 そういってセフィロスはさっさと立ち上がった。

「おい、チビクラども」

 そういって、七人のこびとたちに声を掛ける。

 チビクラって……シツレーだぞ、俺に対して!

「その女が連れ去られた城の兵力は? 城内の見取り図はあるか?」

 長身のセフィロスが身を乗り出すと、こびとたちはビクビクと固まって震えてしまう。

「……ちょっとセフィロス。神羅のミッションじゃないんだよ。こびとさんたちがそんなこと知っているはずないでしょ」

「チッ……敵の戦力把握は基本だぞ」

「そりゃ、事前に調べられれば一番いいけど。森の中の一軒家に住んでいるこびとさんたちに訊ねることじゃないよね。だいたい城の兵力だの何だのって、そんな情報持ってるのはこの国の貴族とか、それこそ隣国の王子さまなんじゃない? フツーの庶民に訊いてもわかりゃしないよ」

 ヤズーがごく常識的な発言をした。たまにセフィって、ものすごくズレた思考をするんだ。

「王子ねぇ…… ヴィンセントがさらわれついでにその辺にも、探り入れてもらえると助かるんだがな」

「無茶言うなよ、セフィってば。ただでさえ、大変な役目なのに、これ以上無理な頼み事をするな」

 俺は口を尖らせてそう言った。

 だいたい城の兵力だの図面だのって、そんなこと調べたりしたら、怪しまれるに決まっている。

「まぁ、いいか。いずれにせよ、残された時間は少ない。さっさとヴィンセントの準備をしてやれ」

 セフィロスはそう言った。