〜 Amusement park recreation 〜
〜神羅カンパニー・シリーズ〜
<5>
 
 セフィロス
 

 

 

 

17:00

 

「ウース、クラウド、迎えに来たぜェ!」

 無遠慮で無骨な声が、クラウドとの至福の時間を遮った。

「あ、ザックス!」 

 するりと私の腕をすり抜け、ゴンガガ原人に駆け寄るクラウド。

 なぜだ!? 何故このタイミングで……!!

 ああ、そういや、昼飯の時、夜は一緒に外に出ようとかなんとか……

 ……なぜだか、私のクラウドは、この無神経な黒ハリネズミと仲がよいのだ。

「ザックス、もう仕事、終わったの?」

「おう。だから迎えに来たんだけど……」

 そこまでいうと、いかにも「呆れました」と言わんばかりの眼差しで、ちらりと私を見た。

「セフィロス…… アンタなぁ。もうちょっと自制心っていうか……あのさァ〜……」

「おのれ……ことごとくこの私の邪魔をしくさりおって……!」

「いやいやいや、そうじゃねーだろ。俺はただクラウドを迎えに来ただけだぜ」

「なんだと、この……ッ」

「もう、ふたりともやめてってば。せっかくなんだから、三人で一緒に……」

 

 

 

17:30

  

 ピンポンパンポーン 業務連絡、業務連絡

『ソルジャー1st、セフィロス、およびジェネシス、副社長室においでください。繰り返します、ソルジャー1st、セフィロス、およびジェネシス。ただちに副社長室まで……』

 

 ブツン!

 怒りにまかせ、私は書庫内のマイクをぶっちりと切ってやった。

 だが、呼び出しがかかったのは、クラウドにも聴かれてしまったわけで……

「あ、そっか……セフィは今日、副社長さんたちと会食なんだよね。じゃあ、一緒には行けないよね……」

「いや、いいんだ、つまらん会合はジェネシスあたりが上手くさばくだろ」

「……アンタ、またアンジールたちに迷惑掛ける気かよ?」

 よけいな口出しをするザックス。

 言っておくがオレは意図的にアンジールを困らせようとしているわけではない。他意なく心のままに行動すると、なぜかヤツが困惑する結果になるだけだ。

 

『繰り返します、ソルジャー1st、セフィロス、およびジェネシス、副社長室においでください』

 

 くそーッ! 隣室の壁にもマイクがついているのか!!

 うるせェ!!と怒鳴りつけてやりたいところだが、今はクラウドが一緒だ。そんな下品な口を聞くわけにはいかない。

 

「じゃ、じゃあ、またね、セフィ。お酒飲み過ぎないでね」

「あ、クラウド、まだ時間は……」

「よし、んじゃ、俺ら出掛けて来るわ。セフィロス、アンジールに迷惑掛けんなよ。頼むぜ」

 そう言い残すと、クラウドはザックスと連れだって出ていってしまった……

 

 思わず芸者座りで脱力するオレ様……

 館内放送は、相変わらずけたたましく、オレの名を繰り返していた……

 

 

 

19:00

 

「セフィロス、こちらはブルゴーニュの29年物の赤だが……」

「……欲しくない」

「疲れているようだな。ならば甘口がいいだろうか。31年物のボルドーを……」

「いらん」

 左隣に座った、アンジールが、そわそわと貧乏ゆすりをしている。ルーファウス相手に、素っ気ない私の態度が気になって仕方がないのだろう。

 

 この程度の当てつけで消沈するような、かわいげのある男ではないのに、アホらしい。

 態度の悪いオレに、「やれやれ」というように、キザったらしく肩をすくめるルーファウスである。

 神経質なアンジールとは対照的に、右隣のジェネシスは、会話に混ざることもなく、ただひたすら食っている。しかもガキじゃあるまいし、並べられた料理から、苦手らしいニンジンだのピーマンだのをフォークではじいてだ。

 クラウドが上目がちに頬を膨らませて、「グリーンピース、いや」などと言いながら、一生懸命よけているのは、ひどく可愛らしく感じるのに、スカした伊達男がやっているのを見ると、なぜかムカツクのだ。

「おい、ジェネシス。ガキじゃあるまいし、好き嫌いすんな!」

 クラウドたちと出掛けられなかった腹立ちまぎれに、ヤツの皿をフォークでひっかきまわしてやった。

 客も同席の会食だとさすがにこんなマナー違反はできないが、今日の呼ばれは、ソルジャーのオレたち三人と、タークス、それにルーファウスだけなのだから、別にどう思われてもかまわない。

 

「ひどいな、セフィロス」

 なぜかこいつは曖昧な微笑を浮かべたままで、へらへら苦笑しつつ、形ばかりの文句を言っているだけなのだ。

「てめーもてめーだ、アンジール。大の男が酒のひとつも飲まんでどうする!」

「い、いや、今は禁酒中だ」

「ああん?なんだ、肝臓か?腎臓か? それとも胃でも痛いのか?」

「……からむな、セフィロス。胃潰瘍が再発しそうなんだ」

 あながち冗談でもなさそうに、アンジールは腹に手を当てつぶやいた。

「胃潰瘍? また繊細なこったな。ツラはゴーカイのくせに神経細いヤツだ」

「ほっとけ……」

 オレたち三人の中で、誰が見ても一番無骨そうなこの男が、最も神経質なのである。

 人は見かけによらないとは、こういうときに使う格言なのであろう。