〜 Amusement park recreation 〜
〜神羅カンパニー・シリーズ〜
<9>
 
 セフィロス
 

 

 

 

18:30

 

 昼から始まった、初日の会議は滞り無く終了した。

 今日は部門会議だったので、オレが出席したのは、当然人事統括部とソルジャーのディスカッションだ。

 デスクに張り付いての打ち合わせになるので、苦手と言えば苦手なのだが、こちらの会議は非常に重要なのである。

 人員枠の拡大や補充の予定、そして、現在候補に上がっている者たちの試験資格付与など、さまざまな内容が盛り込まれている。

 当然、前線に出る、オレたちソルジャーにとっては、同輩の命にも関わることなのだから、必要な議論はとことんまで行われるのだ。

 

 ……そして……えー、あー、誤解されては困るのだが、ソルジャーの人員枠の拡張と、資格試験については、クラウドにとって、とても大切なことになるかもしれないのだから……

 いや、オレとしては、危険な任務の多い、ソルジャーなんぞにならなくていいと考えるのだが、あの子がそれを目標に努力しているのなら、何とかかなえてやりたいと思っている。それに、なるべくオレが同行する任務に就かせれば、目の届く範囲にいるわけだから、むしろ安心……できるのかもしれない。

 

 あの子は、甘えたがりの末っ子気質の少年だが、芯は真っ直ぐでとても男らしい資質を持っている。それゆえ、ソルジャーになることに、オレが手を貸すのを「よし」とはしないだろう。

 だが、採用人員枠を広げたり、教育システムを充実させることなら、あの子を傷つけずチャンスを増やしてやることが出来る。

 そう考えると、初日の部門会議には、必然的に力が入るのだ。

 

 となりの席で、ほとんど発言せず、へにゃへにゃ座っているだけのジェネシスとは違うのだ!

 ったく、殴ってやろうか、この役立たずめが!

 

 

 

19:00

 

「ウッス、セフィロス」

 書類を片づけ、席を立つ。

 少し肌寒いほど空調の利いている廊下に出ると、軽々しく声が背後から飛んできた。それはザックスの野郎だった。

 ケッ、今のうちにイキがってろ。どうせ、明日になれば、貴様は待ちぼうけの置いてけぼりだ。

「……なに笑ってんだよ、気色悪ィ」

 ついつい思考が顔に出てしまった。どーでもいいコイツ相手に気が緩んだらしい。

 ザックスの野郎に、オレの計画がバレたら厄介なことになる。

 ……まぁ、ミッションの協力者はレノひとりだから、あの野郎がしゃべらなければ大丈夫のはずだが。

「……別に。何だ貴様。何か用か?」

「いーや、ただ後ろ姿が見えたから声掛けただけ。さーてと、俺は今日で終わりだ。社員食堂でクラウドが待ってるから先、行くな!」

 清々しく悪気も皆無に言ってのけるザックス。このクソ天然野郎が!!

「おい、ちょっと待て」

「なんだよ、悪いけど、腹減ってるから」

「オレの目の前で、クラウドが待っているなどと言うな。……食堂にはオレが行く」

「いや、のんびりメシ食いながら、明日のテーマパーク行きの打ち合わせするからさ。ぶっちゃけ、アンタはいないほうがいいんじゃねーの?」

 この野郎ーーッ!!

 オレは飛び出しそうになった右腕をとっさに引き留めた。こんなところで騒ぎを起こして謹慎処分などになってはたまらん。

 

 それに……信じがたいコトだが、ザックスは本当に悪気なくしゃべっているのだ。

 クラウドと待ち合わせをしているのも、明日の予定を立てるということを話すのも、別に嫌みであったり当てつけであるわけではない。

 ザックスにとっては『ただそれだけのこと』で、何の脚色もないのだ。

 ヤツが、クラウドのことを大事にしているのは間違いないが、オレの抱くような、いわゆる恋愛感情からでないというのは、見てりゃわかるのだが……

 

 

 

19:30

 

「ザックス、おっそーい!」

 食堂のテーブルで、クラウドが手をふっていた。

「悪ィ悪ィ。セフィロスが引き留めるから、遅れちまって……」

 なんだと!? この野郎、オレ様のせいだというのか?

 確かに話はしたが、先に声を掛けてきたのは黒ハリネズミのほうだ!!

「クラウド」

「あ、セフィ!」

 嬉しそうに立ち上がる様が可愛らしいが、ハッと周囲の社員の目を憚って、すぐに座ってしまった。

 堂々としていればよいのに……今まで付き合ったヤツは男も女も両の手に余るほどだが、むしろ連中はオレの特別な人間であることを、他人に誇示したがった。

 そいつらに比べると、クラウドはまるで正反対だ。とにかく人目を気にし、自分がオレと釣り合いがとれていないと考え、恥じ入って小さくなってしまう。

 バカな……オレほどクラウドの側に居るのに似つかわしい人間はいないのに。つまりそれは、オレの側に居るのに、この子は十分釣り合いが取れているということなのだ。

 

「セフィもザックスもお疲れさま。お茶、取ってくるね」

 席に着くと同時に、クラウドはタッと小走りにカウンターに行ってしまった。

 オレと待ち合わせをしていたと思われるのが嫌なのだろうか……?

 ついつい、そんなことを勘ぐってしまう。

「はい、どうぞ」

 飲み物をトレイに乗せた、クラウドが戻ってきた。オレを見て微笑み掛けてくれる。

 この子が隣の席で、にこにこと笑っていてくれるだけで、味気ない社員食堂での食事が充分満足のいく味わいになるのだ。

 当然、ルーファウスのところでのフルコースなんざ目じゃない。

「セフィ、それだけ? 具合でも……」

 クラウドが、トレイに載ったやや少な目の晩飯を見て、心配そうに眉を顰めた。

「ああ……まぁな。せっかく同じ本社ビルに居たのに、数時間もおまえに会えなかったからな……腹も減らん……」

「セ、セフィってば……もう……」

 クラウドがちらりと周囲の反応を伺う。他の連中に話を聞かれていないかと、無用な気を回しているのだ。

「本当のことだ。まぁ、今日の会議はそれなりに収穫があったからな」

「そうなんだ。でも、やっぱりセフィロスは忙しいよね。セフィが強いのはよくわかってるけど、おやすみもちゃんと取らなきゃね」

「ああ、そうだな……おまえの側でな」

 きゅっと握りしめた可愛らしい手を、上から愛撫するように触れるが、クラウドは困惑した面もちで、「メッ」とばかりにオレをにらみつけ、すぐに手を引っ込めてしまった。

 ……ちぇっ。