うらしま外伝
 
〜招かれざる珍客〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<3>
 
 セフィロス
 

 

 

  

 

「ええ〜、あのレオンの? 信じらんないッ!?」

「うっそーッ!? 全然似てないじゃん! フツーにおしゃべりじゃん!?」

「……ふたりとも、目上の方に向かって失礼だぞ。ラグナ殿、まずは一服なさってください」

 上から順に、イロケムシ、クラウド、ヴィンセントの順番だ。注釈つけなくてもそろそろわかると思うが。

 ヴィンセントは丁寧に入れた紅茶を、ラグナの前に置き、気遣うようにヤツの顔を覗き込んだ。それに『ニカッ!』と笑いかける気色の悪いクソ親父。

 ……見ろ、ヴィンセントがどん引きじゃねーか。いい年扱いてクソ馴れ馴れしいオッサンが!

「あ、そ、その……まだきちんとご挨拶も……」

 おどおどと口を開いたヴィンセントに、待ったとばかりに手で押さえるラグナ。

「あ、待って待って! みんなの名前、当ててみせるからッ! ええとね、金髪のチョコボヘアはクラウドくんでしょ。それから女の人みたいに綺麗な君はヤズーくん。そして黒髪の美人さんはヴィンセント・ヴァレンタインさんだ! 確か、あとふたり弟くんたちが居るんだよね。もう遅い時間だから、オヤスミかな?」

「やーん、正解〜ッ! すごいじゃない! レオンから聞いたの?」

 と、ヤズー。パチパチと拍手なんざしている。

「違う違う。あいつは親不孝息子だからよ、俺とあんまし口聞いてくれないの」

「あー、そりゃそうだろうなァ。こんなクソ迷惑親父……」

「セ、セフィロス! そ、それで、ラグナ殿?」

「そう、君たちの話はほとんどセフィに聞いたんだよ」

 悪びれもせず、迷惑親父はそう言った。ヴィンセントが切れ長の双眸を丸く見張る。

「ああ、あの『セフィロス』……! ラ、ラグナ殿、『セフィロス』は……『セフィロス』は息災だろうか? この場所で大けがをして……手当はしたものの、ずっと心配で……」

 しがみつかんばかりに問いかけるヴィンセント。こいつはあの男のこととなると眼の色が変わる。別世界に住んでいる人間だというのに、相変わらずのお人好しっぷりだ。

「ラグナでいいよ。俺もヴィンセントって呼ぶから。堅苦しいの苦手〜」

 と、ラグナはヘラヘラ笑いながら言った。そのまま言葉を続ける。

「うん。エスタに来たばかりのときは、具合が悪かったんだけどね。傷口が熱持っちゃってさ」

「ああ、やはり……」

「あ、でも、疲労のせいで一時的なものだったから。傷口はちゃんと塞がっていたよ。二、三日ですっかりよくなったし」

「そ、そうか……よ、よかった……」

 人の良いヴィンセントの野郎は、ツラだけオレに似た、情けないのろまの心配をしている。犬猫でも側に置いておきゃ情は移るというのに、ずっと側について面倒見ていたせいか、ヤツが居なくなって数日は腑抜けのような有様だったのだ。

「あ、そうだ。これ、ヴィンセントに会ったら言わなきゃと思ってたんだ!」

「え……?」

「あのね、『セフィロス』ね、ミネストローネが好きなんだって。シェフがいろいろ料理を作ってくれるんだけどさ、ミネストローネがいいって子供みたいに言うんだよ」

 レオンの親父……ラグナ・レウァールはそういって微笑んだ。案の定ヴィンセントのヤツはもう涙ぐんでいる。

「ヴィンセントのミネストローネが美味しかったんだって。あんまり表情の変わらない人だけど、そう言って少しだけ笑ったときは何だかすごく可愛く見えたなァ」

「『セフィロス』が……そんなことを……ああ……」

「よかったね、ヴィンセント。やっぱり、あなたの思いはちゃんと彼に通じていたんだよ。生きているのは別の世界かもしれないけど、彼にとって、あなたは大切な友人なんじゃないかな」

「ヤ、ヤズー……ああ、よかった…… なんだか、ひどく嬉しくて…… あ、ありがとう、ラグナ……さん。す、すまない……泣いたりして……つい……」

「あ、ホントに涙もろい! 『セフィ』の言ってたこと、ずいぶん当たってるなァ〜」

 脳天気に笑うオヤジだった。こいつ本当にあの堅苦しい真面目野郎の親父なのか!?

 

 

 

 

 

 

「おい、てめェら、何を和んでいやがる」

 オレはつけつけと会話に割り込んだ。だいたいこのクソ騒々しい男を連れ帰ってきたのは、別に面倒見てやろうなどという仏心ではない。ただのきまぐれと落とし前をつけるためにだ。

「何、ふてくされてんだよ、セフィ」

 チョコボ頭のクラウドが口を尖らして不平そうに言う。きっとヴィンセントが嬉しそうに会話しているのを邪魔したせいだろう。

「ふてくされてるだと!? オレ様に向かってエラソーな口を聞くな!」

「痛って〜ッ!」

 こめかみをぐりぐりしてやると、クラウドはオレの腕に噛みついてきた。

「このクソガキ! 歯形がついたじゃねーか!」

「セフィが乱暴なんだろッ!」

「おまえが生意気だからだッ!」

「ふ、ふたりとも、やめたまえ。あ、ああ、失敬……セフィロス。君がラグナさんを連れて来てくれたのに、勝手に話をしてしまって申し訳なかった」

 明後日のことを謝罪するヴィンセント。こいつは天然でこういう男なのだ。

「誰がそんなことを言った! お人好しもたいがいにしねぇか!」

 ビシッと叱りつけると、ヴィンセントは胸に手を宛てて言い淀む。

「え……あ、あの……でも……」

「いいか、この野郎はな! クラブで無銭飲食するような見下げ果てた男なんだぞ! いきなり初対面のオレになつきやがって…… そっちの世界の『セフィロス』と懇意かどうかは知らんがなッ、オレにとっちゃいい迷惑だ!」

「ごめんなさい〜」

 としょげるラグナ。このあたりの率直さがまた腹立たしいのだ。

「ちょっとォ、セフィロス。そんな言い方ないでしょ?」

 とイロケムシ。

「そうだよ。レオンの親父なら、俺らにとっても知り合いみたいなもんじゃん。困ったときはお互い様だろ。なぁっ、ヴィンセント!」

 恋人の手前、物わかりのいい懐の大きな男という『演技』をかますクラウド。なんつー、姑息なガキに成長したのだろうか。背丈は変わってないくせに。